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浮かぶ景色。

 目には見えないものを描いている。心に浮かぶ景色を描いている。
 たまに写真や絵画を参考にすることもあるけれど、ほぼ全域に渡って虚の世界を描いている。

 泡のように海の底から湧いてきて、海面でぱこん、泡は割れ、中から景色が現れ出でる。
 虚といえそれは真実で、嘘じゃない。嘘は口で虚を綴りケムに巻くことも厭わないけど、絵は描き上げることで言い逃れできなくなるから、煙は描いてもケムには巻けない。絵は、ある局面に見まごうことのない絶対的真実なのさ。

 しかも絵の線は、本質を抜き出す。現実社会では、目に見えるものでも本質はなかなか見えないし、見抜くことも容易じゃないでしょ。まるで質問の答え開示を焦らすように、霞をまとわせよく見えないように隠してる。真実の所在は不確かで、漠然と在処ありかがわかっても、その姿はぼやけている。だけど絵に写し取ると、霞は消え、掴み所のなかった恣意の隠蔽工作を分別ゴミとして固形化できる。
 するとほら、このとおり。目には見えなかったものが心で見えるようになってくる。そう思わない? 虚飾や雑音や目くらましやご都合主義の悪巧みを取り除いてやることで、見なけりゃならないものが見えてくる。そう思わない?

 浮かぶ景色、描く腕、今はまだ研磨の途中なれど、これからも。

【湯船に浮かべば、浮かぶ景色は湯水のごとく】


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