見出し画像

進む道。

 お馬の稽古に没するのは甚だしい時間の無駄遣い、熊使いになっていたほうがよっぽど儲かるのに、と思っていた。


 進む道が違えば、出来上がる自分も変わってくる。
 これが現実社会の『たられば』話なら、聞くに退屈で、話すに虚しい。でもね、空想社会なら、これほど聞くに可笑しく、描くに楽しいものはない。

 人生物語は、星の数ならぬ人の数だけある。そして個々の人は、それこそ星の数ほどの物語を抱きしめ生きている。物語にはそれぞれ主役がいて、ひとりひとりの主役には、聞くに退屈な話もあれば、感心させられる話もある。山と積もった個々人ごとの森羅万象、そこに有象無象と多士済々、通り過ぎ石と化した過去が命を宿して渦を巻く。
 
 童謡『きんたろう』の2コーラス目は、足柄山の山奥に住む金太郎が「けだもの集めて 相撲の稽古」をすることになっている。だけど彼は相撲取りにもならなかった。物語世界にとどまり、終わらぬ今に語り継がれている。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?