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ああ、憧れのランチ・マック。
社食は安くなければいけない。なのにあの会社の社食ときたら。メニューは豊富だけど、一部を除き大半が外食と変わらぬ価格。これぞという特筆ものがあればいいのに、なぜかどれも美味くない。利点は移動時間の少なさだけだ。
外食に伴うリスクは、決して小さくはない。食の集う商店街まで片道10分近くかかる。往復20分。おまけに人気店ともなると、行列時間が加味される。
ランチに与えられた1時間で無事に生還できるかおぼつかない。小心者にとっての鬼門の先に、未踏の原野が広がっている。
エレン・イェーガー(『進撃の巨人』)は、越えられない壁のはるか向こうに未知の大海を思い描いた。片道10分弱の食の商店街は、まさに越えられない壁のはるか向こうにある大海だった。
それを、学生アルバイトときたら。
「マックに行ってきます」
ぬぁにぃ〜、ハンバーガーだと!?
その選択、社食にはないゾ。
いいなあ。
届かぬランチ・マック。あれからすでに数日経っているというのに、ランチ・マックが祓えぬ亡霊のように欲望に巣食っている。
今後も、ランチ・マックという夢には届かない。なぜなら1時間を越えちゃいけないという躾けられた社会人性を持ち合わせているし、越えそうだった場合、勇気ある撤退で昼飯抜きを覚悟しなければならず、それができないからだ。
休日マックじゃダメなのだ。平日の、スリルに満ちた脱出劇ランチ・マックじゃなきゃ。
かくして欲望は日々磨かれ、いずれ周囲に呆れられる伝説となる。
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劇中で主人公が食堂を切り盛りする美女に問われる。
「パンダ描ける? パンダ」
紡がれる琴線がシンクロして、意外な結果を産むことがある。
「描けるよ」
人の意欲と意識は、誰かに、または何かに呼応するものなのだ】
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