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大人になっちまった悲しみは。
腹が黒くなる分、心が無垢になる。大人になるって、そういうこと。ボロは着てても心は錦。このことが理解できるようになる頃には、充分腹は黒くなっている。黒さがしっかり板につかないと、白さは際立たないものだからね。
子供の時分は、そんな大人が無性に許せなかった。歯軋りギリギリ、目についた石をぶつけてやるとさえ思っていた、思っただけで、行動に移すとこっぴどい目に遭うことがわかっていたから、実際にはやらなかったけど。
だけど大人になってしまうと、自分を甘やかす許容領域が我が物顔でのしてきて、そんな自分さえをも許してしまうようになる。
大人になるって、都合に左右されることだということを知ってしまった。
知らなきゃよかった。知らないままでいれば、きっと子供のままでいられたろうに。でも、知れてよかった、いつまでも子供のままではいられないものだから。社会にまばゆいばかりの純白を向けられたら最後、それはとびきり純度の高い非難の白い目なんだもの。いい大人だったら知っておかなきゃならない、身だしなみ。
大人はいつだって、大人になってしまったことの後悔を、諦観の蓋で閉じ込めて、知らないふりして偽って生きている。
ーーそれでいいんだよ。大人になるってそういうこと。ーー
知ってしまった大人の、しょうもない言い訳。
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