行く道。ーー幸せに生きるーー
自分のため、人のため、会社のため。行く道も多様化し、どれ選んでも、咎めもされなきゃ、後ろめたくもなくなった。
自由になった。
だけどその自由を不便と感じる向きもある。器用、機敏に機知きかせ、世の流れに橋かけ、声かけ、足早に、乗れる才があるならいざ知らず、「不器用なもんで」の台詞が精一杯、口が立たないから身が立たない我が身を憂う愚鈍なオイラみたいなやつにとっちゃ、渡る世間はちと荷が重い。
だって、ぜんぶ自分で決めなきゃならないんだよ。明日のことさえ今日の風に聞いてもわかりゃしないってのに、さらにその先のことなんぞ皆目見当もつきゃしない。
「昔はよかった」のよかった昔には、永久就職じゃあないけれど、入ったら最高、定年退職まで安泰、大船のこんこんちき、浜ちゃんが生息できていたんだもの。あんな幸せな時代、稀有な時間を抜けてきて、今は出涸らしたお茶の時代。
「自由に決めて」の道標、言うは易し、言われるほうは難しで、転ばぬ先を先回りしての覚悟っていうのかさあ、先見の能力っていうのかさあ、そういったものがないものだから、行き当たりばったり、神様の言うとおりで選ぶっきゃないんだよね。
ええい、ままよ! で選んだら、どうなっちゃうんだろう?
わかりません。でも、未来の考え休みに似たりって言うしなあ。先のことなどわかりゃしないんじゃないの?
え、なんだかんだでもう道を選んでいたって言うのかい? おいらが? そのなんだ、生き方って言うやつを?
ほんとう?
へえ、なるほど。ふわり世間を漂う浮雲、つかみどころのない姿、人が羨む訳じゃなく、人を敬い社会と付かず離れずで、仕事の端っこにしがみつかせていただいて、かろうじて流れる川に浮かぶ程度に努力して、贅は望まず、健気で謙虚で足るを知り、丈夫が取り柄の、そんな人に私はなりたい的に日々ささやかな夢を追いかける生き方。こいつが我が道っていうやつだったのかい。
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