大人の庭園遊び。
ガキの時分は、裏庭にあった大自然だったさ。山あり谷あり河川ありの。
ところが万博がすべてを変えちまった。巨石は磨かれ、森は剪定された。おかげで鬱蒼だったのが、すこんと空が落ちてきた。おまけに入場料が行く手を阻むようになったときやがった。
もとは大名の庭園が時代の流れで払い下げられ、庶民の憩いを担ったわけだが、時間の大河は安泰な流れをいつまでも放っておかないようで。
通行手形は一金大金日本銀行発行の五十円。大人にしてみりゃ缶コーヒー半分に満たない鼻で笑い飛ばせる端金でも、ガキにしてみりゃゼロからむくむく湧いて出た寝耳に水の鉄砲水ほどの仰天価格。たまに清水寺舞台から飛び降りることもあるけれど、いつもというわけにはいかない。よくて月に1回。少年漫画誌の誘惑に絡め取られた月なんぞ、指を咥えて羨望光線が夜空を駆けて、入場料が一回休みの憂き目をみる。
無料開放期の司法大臣遊ばせ尽くしが懐かしくってさ。大人になってから、年間パスポートで毎日きてる。
もう、駆けまわったり枝を折ったりしないべさ。代わりに愛でるようになったでの。落ち着いたものじゃ。
え? 急に話し方が老けたって? そりゃそうじゃ。現実問題、あれは青春という特別停車の駅に停まった際に見た幻想だったのじゃ。
いまかい?
そんなに毎日来るのなら、ボランティアで庭園ガイドなんぞはいかがと誘われておる。
依頼、受けようかな。ほかにすることもないのでの。
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