見出し画像

暮らしのリズム。

 手回しのコーヒーミルを買ったら、電気で豆を挽いて淹れるコーヒーマシーン愛用時代よりもコーヒーを飲む機会が増えた。
 天塩は情だ。情があふれると、目が向く。手をかける。飲む機会が輪をかけて増えていった道程。
 幼少期、手のかからない子だったら、大人になっても簡単便利な珈琲道を選んでいただろうか。しょうもない思い出と思いをかき消すように、手回しのミルをまわす。ガリガリ騒いでいた豆が静かになったら、フィルターに移し湯を注ぐ。湯は、沸騰したてはカップ温め用、コーヒー用は2割ほど熱が飛んだ頃合いを目分量で見計らって注ぐ。
 コーヒーが入る。淹れたばかりのコーヒーに口をつける。かき混ぜることはしない。ブラック。
 
 そういえばうちには不便なものが多い。インク注入式の万年筆に、米を炊く土鍋、手回しの蓄音機。ただ蓄音機は観賞用で、音楽はもっぱらサブスクで聴く。
 
 ん? うちでは簡単便利のほうが暮らしのスパイスになっている。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?