見出し画像

冬には色彩が落下する。

 冬になると色彩が落ちていく。
 吸い込まれるように、抜けていく。

 木立から紅が抜け、黄が枯れ、空の碧が褪せていく。
 手にしていたパレットが消えていくみたいに。

 冬は、雪に包まれずともモノトーンだ。
 吐く息さめざめしく、かじかんだ手はぎこちない。それでも手にした財布の紐は緩んでいく12月。

 冬は、多崎つくるみたいに色彩を放たない。

 色の多様は、暗雲の淵から地の奥底に、吸い込まれるみたいにして落ちていく。

 地の奥底にあるものは?
 だいじょうぶ。色は失せたわけではない。澱みのように、沈澱して留まっていたんだ。

 そっとのぞいてみるといい。底たるそこには春がある。

 にわかには信じ難いけど、あと10日ちょっとで『迎春』なんだね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?