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真実はいつも闇の中。

 毎週土曜日夜6時のあいつなら、たったひとつの真実を30分で暴いてみせるが、創作とは別世界の現実ではそうはいかない。アメリカで撃ち落とされた4つの気球も、外交を控えて『無害』と発表された。ただ、ニュースソースのBBCは『research entities』の可能性を付け加えた。直訳すれば「調査のための物体」といった感じ。無害なのに、何を調査していたかを明らかにしないところがアヤシイ。
 国家機密に関わるいわゆる明晰中の明晰な頭脳の解析力からすれば、探究に手抜かりなく、公表できない部分まで掘り下げていてもおかしくない。知っていても教えない手法も常套手段だ。故意に「見せない」措置を講じたとすれば、一般市民に真実は届かない。
 中枢の優秀頭脳をもってしても、解析のヒントが足りなければ真実に辿りつかないこともあるのだろうが、仮に重大発見があったとしても、何かしらの有効な使い道があると判断すれば、圧力をかけポーカーフェイスで「解明できませんでしたよー」と虚偽の煙幕を張ることも。とくに今はデリケートな時期、これから大事な会合が実現するかどうかのキワに立っているんだもの。隠し事のひとつやふたつで手綱を捌ききれるものならば、それくらいのこと、平気でするに違いない。ここでまたひとつ、なおさら真実は一般市民に届きにくくなるフィルターがかかる。

 国家中枢の明晰頭脳は、不明なものを調査する。その検証力は、きっとものすごい。そのものすごい力をもってしても真実に至らぬことだってあるのだろうけど、未だUFOがこの星に飛来した・していない、宇宙人が地球にいる・いないで揺れ動いているみたいに、のらりくらりとはぐらかすようなこと、たくさんやってきたし、これからもつづいていくんだろうな。あえて答えを出さず▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼に保留状態で真実を覆いつづけてきた真実って、数えきれないほどあるんだろうな。
 発覚した情報が示されなければ、鏡の国のアリスが多層に繰り広げられる鏡の反射世界に惑わされるみたいに、真実は目眩しに惑わされて、さらに一般市民の目から遠ざかる。

 明かされる真実もある。だけど、ここで気がついた。世界には明かされない真実もたしかに存在しているのだ。その真偽入り混じった全体が今『世界の真実』としてひとくくりにされている。各種各様それぞれの一粒ずつの真偽を確認しないまま我々は「(ぜんぶが)真実だよね、そうだよね」と、うかつにも丸ごと信じ、頼りきってしまっている。世の中は、部分部分をとらえると『紛れのない真実』と『そうでない真実』とでできているのに、全体を完全無欠の真実と受け止めてしまっている。本当は不確定なものが混ざったまだら模様でしかないのにね。
 この状態は、足場を失くした吊り橋に立っているのと似ている。虚の上に立っている。ただ川底から吹き上げる喧伝の風に煽られて、底に落ちていかないだけだ。

 でも真相はもしかしたら悪気はなくって「さて、どれが本当でどれが嘘なのか。見破ることができるかね、明智くん」と投げかけているだけかもしれないね。
 ぐだぐだと綴ってきたが、さて、何が真実か。
 追い詰めても捕まえられない怪盗ルパンのように、真実はいつだってすんでのところで身を翻し、闇に消えていく。それが世の常というやつさ。
 
 人間の想像力が創り上げた現代社会は、イメージの連鎖が精神を建造物のように高層化したことで成立している。外壁が積まれていけば、視線を遮る内面も膨らんでいく。真実が身を隠す陰も無数に広がっていくものなんだ。

【真実を語らぬ者は、口に手を入れてはならぬ。はずなのに、来訪者は必ず手を入れる。正直者が多いってことだよね。】

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