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カオマンガイ即興曲。

 無性にタイ料理が食べたくなることがある。割と突発的で発作みたいなものだから、下ごしらえも何もできていないことが多い。それでも、食べたい。しかもなるべく簡単に調理したい。
 食したいタイ料理がカオマンガイだった場合、最重要事項が鶏肉を確保できるかどうかだ。鶏肉さえ確保できれば、あとはどうにか誤魔化せる。パクチーがなければセロリの葉を代用するし、ナンプラーがなければスーパーに走り、しょっつるを買ってくる。

 今回は、順当に素材がそろった体で話を進めさせていただこう。
 
 素材はある。だが、仕込みがまったくできていない。お米は刻んだ生姜に鶏肉を添えて炊くのが本場の流儀。ところが炊飯器の蓋を開けば、白米が湯気を立てて食されるのを待っている。このままでもかまわないといえばどうにかなるのだが、素材がそろっているのにここだけ妥協すると、食べ終えた時に後悔しそうでこそばゆい。
 だから、最後に帳尻を合わせる。

 まずは耐熱皿に鶏肉を横たえ塩を振り、サラダオイルをひとふり、細切りにしたショウガをぱらと乗せ、長ネギの青いところがあれば香りづけのために開いて肉の上に乗せる。ラップをふわりとまとわせて、レンチン5分。
 チンをかけたら、カオマンガイのつけだれづくりに着手する。
 シンガポールのチキンライスとは親戚関係にあるカオマンガイなれど、こちらはスパイスを効かせたタイ料理。マーライオンの彼の国ではしょうゆベースの甘だれなんかがつけだれとして供されることもあるけれど、泰国流では邪道、ガツンと鼻腔から抜ける脳天直撃の刺激を演出、硬派の鶏肉料理にふさわしい仕上がりを目指す。
 つけだれの素材は、ニンニク半欠け、ショウガ数ミリ、パクチーの茎2、3束、生の唐辛子(入手できればピッキーヌー)2分の1本、もちろん好みや辛さ対応力に応じてそれらの比率は変えてかまわない。むしろ、自分好みにカスタマイズしてこそ納得のカオマンガイが食せるというものだ。
 で、これらの素材をみじん切りにし、最後に包丁の背で叩いて香りを出す。次にこれらをつけだれ用の器に移し、ナンプラー大2、酢なら小2もしくはレモンなら小1、砂糖小1くらいの比率で投入し、かきまわして味をなじませる。好みの加減で酸味や甘みを調整する。
 またこの時、つけだれの素材をより細かくするためにすり鉢を使ってすり潰してもいいが、素材感が残ったほうが美味しいつけだれに仕上がるような気もするし。このあたりは好みの分かれるところかな? 

 そうこうしているうちに、レンチン5分終了のお知らせ、鳴り響く。

 さあて、いよいよ仕上げの時間。
 レンジから鶏肉を取り出して、まな板上で2センチ幅で鶏肉を切る。耐熱容器に溜まった汁は、白米の味付け用。香り付けの長ネギを捨て食べる分の白米と肉汁の染み出した汁を混ぜ合わせる。これで、鶏肉と一緒に炊いたご飯を演出する。
 次に、平らなプレート皿に鶏肉と一緒に炊いた風のご飯をよそい、2センチ幅に切った鶏肉を隣に並べてその上にパクチーの葉を散らす。タイ料理ではお馴染みの斜め切りにしたキュウリとざく切りのキャベツを横に添えたら出来上がり。
 隣につけだれを用意して、と。

 準備は整った。いざ! いただきます‼︎ 

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