亡き君は消えない。
士官学校じゃないはずなのに、そんな制服で決めた君。
大人になれなかったのに、大人になっていた。
ぼくはそんな君の卒業式に迎えにきたんだよ。
どこ?
いた!
見つけて、手を引く。
骨格のいい成人を、まるで園児の手を引く3つ違いの兄貴みたいに。
そんなぼくらを、受付嬢が箸を転がしながら笑ってた。
何がそんなに可笑しいの?
振り向けば、弟は骸になっている。
最後の最後で、君はぼくじゃない誰かに連れ去られてしまう。君をお迎えに来たのは、ぼくじゃなかった。
じゃあいったい、ぼくは誰を迎えに来たというんだ?
もう一度振り返ると、残っているのは冷たい手のぬくもりだった。
振り向けば、あのころの君はいない。
あのころに、漂っているだけだ。
思い出って、そういうものだったんだね。
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