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視覚に囁く『小ご絵』

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いつも大きくて立派な扉ばかり見せられてきたように思う。 深く考えることなく、大きくて立派な扉ばかり追いかけてきたように思う。 だけどいつもうまく開けられるわけじゃない。 ある… もっと読む
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2021年4月の記事一覧

消えた都市の音。

 相次ぐ自粛が、音という音を萎縮させてしまっている。  屋根を叩くおおつぶの雨がいつにな…

文字で殻を描く。

卵の殻を思って書く。 描くではなく文字で書く。核心は伏せておく。核心に迫ってもらうための…

しゅるり。

やり終えなければならない課題を終えると、ひとつほどける音がする。 しゅるり。 衣ずれの芳…

呼応。

おっしゃるとおり「頭がいい」の定義は難しい。 何故難しいのでしょう。 少し考えてみました …

ニュアンスを出現させる。

noteに投稿された線画の1枚に見入る。 コメントに「欲望を妊んだ悩ましい眼差しを大切に描い…

コーヒー・ブレイク。

コーヒー色の帯が、サンルームほど明るく取られたガラス壁面の内側で、観葉植物の葉をそろりと…

間。

事実を探るのは的確で迅速だけど、感情を掴むのはうまくないね。 僕はアタマのいいその人に向けて、思った。 思っただけで、口にはしなかった。 口にしてしまうには、知り合ってからの間が少なかった。 親しくなれば言えることってある。今はまだ、距離感がつかめていない。 もしかしたら、彼女に対してタブーな発言であると、のちに発覚するかもしれない。タブーの領域だったなら、僕が口に出そうとしていたことは行き場を失い、封印されることになる。臭いものに鋼鉄の蓋をかぶせるみたいに。代わりに僕は

日課。

読める分量には限りがある。 もちろんその日に許された時間にそって、その限りが決まる。 今…

先に立った後悔を追い越す後悔がある。

その100円、誰の? 出かけた先の仕事場に、100円玉が落ちていた。 仕事は撤収するだけだから、…

のほほん。

ごくたまに、描いたイラストに「ほっとする」というコメントをいただく。 たとえばnote初公開…

涙。

Noteとは別のフィールドで、ある投稿を読んだ。 母と娘のやりとりに、じわっと熱く滲み出た。 …

小宇宙に紛れ込む。

暇さえあれば本を開くバイトで入った女子大生と話をしていて、こんなことを言われた。 「わた…

いのち。

「クモ」  垂直な家壁を重力に逆らって、さも平地を駆けるように涼しい顔でそいつは移動して…

意味のないエールは送らない。

新人くんの中に、ひとりぶきっちょ君がいる。 会話の呼吸が小気味よく、話をよく聞きよく話す可愛がられる子の陰で、ぶきっちょ君は肩身を狭くしている。 ふたりは同じように「これからの人」だからそろって仕事はできないのだけれど、可愛がられる子は気にしちゃいない。これから覚えていけばいいんだから! が顔に出てる。きついことを言われても「はい、頑張ります!」とはね返す。 かたやぶきっちょ君は、叱られると重荷を乗せたみたいにすぐ肩を落とす。あまりの重さに口が閉じ、結ばれた唇から言葉は