空室率・入居率の考え方・試算に使う値

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空室率は何%に設定すればよいのか? この質問は特に多いものです。

書籍やブログやYouTubeなどでは、ざっくりと5%だとか10%だとかという数字でシミュレーションをしてみれば、との意見が多くあります。

結論としては悪くはありません。

しかし、ここでは、もう少し空室率について掘り下げます。なお、空室率の逆の数値を入居率や稼働率と言うことがあります。

まず、空室率は100%-入居率(稼働率)で求めます。

最近は、空室対策の一環として、最初の○ヶ月は家賃が発生しないフリーレント期間を設定することが増えてきています。

フリーレント期間は賃貸借契約期間内のことなので、入居率に含めて公表している管理会社もいます。しかし、家賃は発生しないので、シミュレーション上は除くべきです。

なお、不動産会社の中には、フリーレント期間を6ヶ月と設定して無理やり満室にさせようとする業者もいます。

投資をする側は、フリーレント期間の与える影響に注意しましょう。

次に、空室率を具体的にイメージできるように事例を挙げます。

例えば、10戸あるアパートを想定してください。全部屋が年間で埋まっていれば、120回分の家賃収益が見込まれます(10戸×12ヶ月分)。

このアパートの空室率が5%とするなら、120回×5%=6回(6ヶ月分)の家賃がもらえないことになります。

これに、退去率が関わってきます。大手の不動産会社が情報を持ち寄った結果、入居者が単身者の場合は退去率が年間30%、ファミリーの場合は年間20%との数字が出てきました。この数値で試算します。

今回のアパートが単身者向けなら、10戸×30%=3戸が1年間で退去すると想定できます。

そうしますと、1年間で6ヶ月分の空室があり3戸が退去するなら、1戸あたりの空室期間は2ヶ月となります。

もし、ここで2ヶ月もあれば次の入居者は見つかるかな〜と思うのなら、ちょっと見込みが甘いと思います。

例えば、退去者が出たときには、原状回復工事をして入居募集をします。

ここで、まず注意したいのが2月〜3月の繁忙期と重なってしまうと、リフォーム業者の対応が追いつかず、なかなか原状回復工事に着手すらしてくれないことがあります。

また、管理会社も多忙を極めるので、ポータルサイトに登録するのを失念するようなことも起こりがちです。

では、閑散期(夏期)なら大丈夫かというと、今度は賃貸仲介会社に部屋探しに来るお客様がそもそも来店しません。ですので、少ないお客様を入居させようと複数の大家さんが競い合うことになります。

そんな大家さんの中には「このまま春まで空室になるより値下げして入居してもらうほうがいい」と考える方もいます。特に地主系大家さんは借入金の割合が低かったり完済していたりしますので、家賃を下げやすいことがあります。

この価格競争に参入すると、次の項目で検討すべき家賃の下落に頭を悩ますことになります。

ちなみに、本来は退去の連絡が来たら、管理会社にはすぐポータルサイト等に掲載して入居募集活動をしてほしいものです。しかし、実際には「原状回復工事が終わって内見できないと申し込みなんか入らない」と思われていて、管理会社も仲介会社も動きません。

こうしたこともあり、空室想定期間の2ヶ月はすぐに過ぎてしまいます。つまり、空室率5%は、実は厳しい数値であるのです。

では、何%で試算すればいいのでしょうか?

いくつかの方法を紹介します。

まずは、市区町村ごとの入居率を調べることです。

政府が公開している「住宅・土地統計調査」(第38-3表/第9-4表)を参考にします。木造や非木造などでも入居率は変わってきます。

管理会社にヒアリングするのも1つの方法です。

なお、その管理会社が管理している物件全体の空室率や稼働率を参考にするのには注意してください。

例えば、4月末などの空室率は1年を通して瞬間的に下がることが予想できます。また、フリーレント期間は除外しているのか、リフォーム工事中も除外しているのか、そうした空室率の定義を確認したいものです。

ちなみに、銀行の融資の審査のときは空室率20%程度は想定しているようです。

レントロール(家賃明細書)の注意点

レントロールとは家賃収入の明細書や賃貸借契約の概要をまとめた資料のことです。

実は、このレントロールは偽装されやすいのです。

偽装内容としては、本当は空室なのに入居していることにするとか、身近な人を住まわせて入居している風を装ったりするなどを行う業者が、ごくまれにいます。そして、契約した後に退去したことにするのです。

なぜ、こんなことをするのかというと、空室がたくさんあると売れにくいからです。

次に、見るべきポイントを紹介します。なお、レントロールに統一した書式はないため、必要な項目が確認できないことがあります。その際には、売買仲介会社に問い合わせます。

入居日の確認は必要です。まず、あまりにも最近入居した人が多いというのは少し怪しいかもしれません。かといって、古くからの入居者さんが多いと、退去した後の原状回復費が多額になり、しかも次の募集家賃は下がります。

入居日が短期間にまとまっている場合も偽装の疑いがあります。

契約期間の項目は更新日が近いと退去の確率が他の入居者よりも高い傾向にあります。

その他にも家賃は適切なのか、敷金や駐車場の過不足の確認、契約名義としては個人と法人の属性なども見ておくとよいです。

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