四行詩51〜100

束ねない 干さない
ヘビメタ好む青アザラシ
身から出た錆落として循環
ニッチを探して玄人はだし

肌と肌が触れ合う瞬間
街の灯りが一斉に灯る
髪の短い女を追いかける男
女のボーダーシャツに惚れたらしい

赤紅葉 見れずに終わった晩秋
右上から何かが飛んでくる
黒縁眼鏡 あなたの横顔
レンジでチンして一瞬のこと

エンジンかけて出発進行
目的地なんて決まってないさ
虹色の実を貪り食うボーランド人たちを
横目に見ながら

靴紐が挟まって死にかけた
死に賭けた10ダラー
落とし前は手前味噌
糞壺使うにゃ 100年早い

スージーパンダを若手と称す
己の名は何ぞそう問う仔羊
さまよう駅前 血迷う席替え
緑青なめてあの世行き

悪魔の子粥をすする
足繁く北極旅路は果てない
天体望遠鏡を逆さに見よう
星は自分の内側にあるから

イニシアチブ取り上げて靴箱
殺戮の卵ボーロから何かが
担いで私の生き血/閾値
胃カメラの恐怖で不眠の一夜

忘却の鰐 その他大勢の叫び
土壌のドストエフスキー
舛添が(素手で)鰻をつかむ
オン・オフの切り替えの問題

濃霧/ワイルドアットハート
車輪の下で偶像に触れる
足元には信者が 阿佐ヶ谷
爆雷のごとく 馬体の輪郭

(存在証明) 犬とおさんぽ
(八面六臂) おやつのじかん
形骸化した時間諸人の集い
閃いて私の腹の真ん中を

床に隠れてるジャコ馬疾走
早くて6時 遅くて7時
F.Jの名は体を冷やかす
忍冬の咲く季節に

アグリッパの胸像が
夜中に目を光らせる
抜け猫を裁くために
野良犬を喰らうために

チキンレースやる意味
胸元 見る意味
貝類食べる意味
逆説 人肌の専用POP

カッターナイフが机から垂直に落ちる
水鳥たちが其処にたわむる
凡愚にはその光景さえ見えない
通りすがりの子供のお年玉

空に転がる 数色のビー玉
風塵 (Raison d'être) 横殴り
先走った者どもは消えてゆく
あわよくば忌まわしき球体

死出の旅路と安手の腰帯
三たび微笑む 夏の夜の夢
イマーゴと隠れ処 人非人
腐った左眼 滲み出す鮮血

鈍磨の復讐ついに果たされる
路馬車のパフォーマンス
会場を混乱に仕立てたのはこの私
だが吊るし上げには 目を塞ぐ

誰彼構わず同じ蜜柑を投稿する
ひれ伏す民暴虐な政治家
シベリア抑留 見て見ぬ振りなどできるか
空は一続きにここまで迫っている

華麗だそれは目で安くなる
枯れ枝 それは火で溶かされる
生殺しにしてやっつけ仕事で
渋滞緩和願ったり叶ったり

A君だと思ったらB君だった
暴君だと思ったら一匹の蛹だった
不忍池積もらない雪
可愛げのない犬が遠く吠える

チウイングガムと命の重さ
植え込みに潜むハイエナども
路肩に停めたカウンタック
ふと目を逸らすともうその姿はない

日本中の関口が集まって
攻撃をしかけてくる
僕らはどう防衛すればいいだろう
不毛な午睡の妄想それ自体

小難しいことを弁じたてるのはいつだって男
チョビ髭をつければみんなヒトラー
油そばが最近人気らしい
死に片足突っ込んだ老人がそう言った

微睡みの中で(追憶)故郷が思い出される
だがそこには(不在)誰もいない
誰がいたかも(忘却)憧えていない
ひとつまみの砂のように(泡沫)消えてなくなる

この木枯らしをあと何度数えれば
彼女の病は治るのだろう
見舞いの林檎は錆びれても・・・
チキン南蛮

覗いてごらん臍の孔を
内臓が裏返しの世界煌めく
おかっぱ頭の鼻垂れ小僧も
指を咥えて見るほどの景色

自転車で街を徘徊する 不快な夜
街灯は消え 猫の子一匹いない
頽落した僕たちの日常
鳴呼 メメント・モリ

ラッコ外交世に食え乙女
鈴音ラッパの落ちる音にゃあ
血みどろ連中 いささか冷える
軍師率いる こないだ everyday

喉を鳴らす一人の猫と一匹の人
月夜に足を忍ばす盗人
鴛鴦の喧嘩を見てみたいものだ
独房がそうつぶやく

地面に寝っ転がって
雨を浴びるとき
ぼくは「垂直」という言葉を感じる
「自由」ではなく

惰性で繋がる鎖のような人生観
水面を打ち消す 言葉の無条件
没落貴族の帰りを待つ者はなく
ただ時間だけが過ぎてゆく

不躾な野禽がつばきを垂らし
首を縦に横に降る午後
紅茶に浸したマドレーヌで
彼は物語を開始させた

私はミラーボール
自分が光っているのか
周りの光を反射しているだけなのか
それを知りたい

禁猟地区で餓鬼が遊びまわる
落馬した貴婦人がそれを見つめる
双眼鏡で見える景色は
奥行きを欠いた奇蹟のような

笹飾りが
あった
それで充分だと
ぼくは思った

何も書かない詩人がいた
だけど彼は詩人と呼ばれていた
そんな彼がようやく言葉を紡ぎ出した
彼とは私のことである

対話しようにも
彼は口が聞けなかった
しかし彼の爪の汚れを見たら
そこに言葉はいらなかった

昔日の想いを 炉にくべて
そっと書棚を 振り返る
何気なく手に取った一冊に
燃やしたはずの その言葉が

魯鈍な言葉の戦車が
繊細な言葉のこよりを踏み潰す
心底憤っても / テムズ川
寄る年波には敵わない

真っ白なインクで
宛先のない手紙を書き続けて
投壊することもなく
この世のすべてを悟ることができようか

あらゆる共感を拒む言葉を
屹立させること/ 詩人の使命
修辞や雑念にまみれ
汚辱な生を生きること / 人間の宿命・

ペン先からインクが零れる
その一瞬の間に
何人の人が死んだか想像してみた
手は震えもしなかった

冷え込む明け方の水で
とさかを洗う鶏たち
これから屠殺されることを
知ってか知らずか

本名という仮名素顔という仮面
名にし負うアポリア 解決困難
救済求む TEL番教えて
新手の追い剥ぎ秘密さえ暴露

我が愚妻ルナ具に全容明かす
調印の証 真紅のビロード
知らずに不貞寝大輪咲かす
ミスこそ少ない 僕らの路(ロード)

おのがじし 入滅beaucoup
天災MAX 収めて
黄色いコブラの古墳に立ち入る
漬物帰りのトンデモ物件

変態の坩堝 ゆけゆけカーニヴァル
都内で初雪観測 知らねぇ
感想:フツーにイイ感じ
もっぱらスマホでカーテンコール

欠けた青の器と黄色のバナナ
これはマティスのJAZZだ
踏切待ちのイライラ車
押しかけ問答もうやめてくれ

亀がアキレスに追いつけないように
ぼくは自分に追いつけない
いつも高みから見ている
彼という私

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