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ギターポップレストランにDJ出演したので選曲の意図を語る(後編)/市村圭

前回の記事はこちら

前編から続きます。アーティスト名は敬称略です。

ELEKTEL~藤野マナミ&Yu_Asahina
1.Landing on the moon / SIMON / CROSS×BEATS
アシッドジャズを得意とするELEKTELの直後ということで、珍しく四つ打ち曲を採用。セガ、コナミと来たからにはカプコンも入れたいということでクロビから。そしてGPRといえばの杉本清隆による提供曲より、ライブのセトリに入ることも少なくないこの曲を。今回出演者リストに名前のなかった杉本清隆成分を会場に供給したい意図も込めており、その後にシークレットゲストで出演されることを知ったものの、あえてセトリを組み替えたりはしなかった。

2. Love Is Beautiful / Electronic Boutique / DJMAX TECHNIKA 2
今や世界に名だたるタイトルとなった「DJMAX」からも選曲したいなと手持ち盤から「DJMAX Portable 3」サントラを流していて、あまりのキャッチーさに驚いて急遽採用したギターポップ。Electronic Boutiqueことシム・ジェヒョンは韓国のコンポーザー。「O2Jam」「DJMAX」シリーズや「BEATCRAFT CYCLON」、韓国Actoz SoftによるMMORPG「LaTale」(日本国内では「トキメキファンタジー ラテール」として展開)等に楽曲提供歴がある他、オルナタティブロックバンドTHORNAPPLEのベーシスト・プログラミング担当としても活動している。


3.biosphere ~天国の花~ / BEMANI Sound Team "猫叉Master" feat. 藤野マナミ / pop'n music peace
藤野マナミさんご出演の嬉しさに浮かれて選曲。実のところ前編で述べた方針の「音楽ゲーム楽曲はシリーズあたり1曲まで」はもう少し厳密で、ポップンからも各形態(本編、portable、GB)あたり1曲ずつに限定する予定だった。しかし水野あつ「知りたい」とこの曲のどちらも外しがたく、やむなく縛りごと緩めてどちらも入れることに。セトリ順的にしばらくポップン成分がなく油断しているところにドロップしたこともあってか、多くの方から反響を頂いた。

4.mint tears / ribbon room / 太鼓の達人13
来場者からの反響という点では最大を記録した一曲。セガ・コナミ・カプコンと来たからにはナムコの代表作である太鼓の達人からも1曲は入れなきゃ!という謎の義務感を覚えた。そこでラウンジポップ+ブレイクビーツという、ニシジマユーキ「Sweet,Sweet,Sweet.」やL.E.D. vs TOMOSUKE fw.crimm「Cookie Bouquets」、CAPSULE「テレポーテーション」などを通して界隈にも馴染みのある音楽趣向、それにウィスパーボイスな女声ボーカルとなればもうこれが最善だと選曲した。


5.mints / Yamajet / Lanota
Yu_Asahinaパートに繋げる曲ということで、Yu_Asahinaと18年来の長く太い付き合いを持ち(このあたり評論誌「ゲーム音楽レヴュウ Vol.4」収録のインタビューで掘り下げています)(宣伝)、またGPR出演歴もあるYamajetによる活動初期の名曲を。会場では音ゲー「Lanota」やFlashゲーム「マテリアルスナイパー」に採用されたclub mixではなく、よりフレンチポップ要素の際立つvocal mix(アルバム「jetset」版)を流した。

藤野マナミ&Yu_Asahina~Ending
1.Sea Side City (GB+AC mashup) / T.H.Wavy Kiss + Kiss Summer Sisters / pop'n music GB + pop'n music 10
pop’n music GB音源を一曲流したく、藤野マナミさんがいらっしゃるので広野智章(劇団レコード)作曲の「Sea Side City」(サーフィー)に決定。あらためてGB音源とACアレンジを聴き比べている最中、ふと思いついてGB音源のBPM(175)をAC基準(160)に調して同時再生してみたところ、2つの音源がほとんどぴったり重なった。というわけでイントロのみGB版単独、Aメロからマッシュアップ、アウトロでまたGB音源という構成が完成した。AC版編曲の池田智宣がかつて「ポップンミュージック2」に作編曲した「ROSE~恋人よ、薔薇色に染まれ」「WHITE BIRDS」に、杉本清隆が歌詞を寄せているという繋がりもある。

2.Nine Point Eight / Mili / DEEMO
あくまで転換DJとしての出演なので、いわゆる音クラのように来場者全員を狙うような選曲は基本的にしないつもりだった(音クラに行ったことがないので適当を言っています)。けど昼の部も終わるからもう好きにしていいよね!ということで、GPRに来るような音楽嗜好のポッパーならほぼ総勢に響くであろうBEMANI外の音ゲーアンセムにしてスマホ音ゲーのオールタイムベストを1曲。どうもありがとうございました。


3.mind / Atsu & 祖師ヶ谷トップブリーダーズ / ee'MALL 2nd avenue
前述の方針に従って多種の音楽ゲームからピックアップするため、「ee’MALL」からも一曲(実質ポップン曲だという見解もある)。となればGPR関係アーティストrisetteの元メンバーAtsuがドラムボーカルを担当するこの曲しかあるまい、とセレクト。ちなみにGPRスタッフのとらすけさんも2017年12月に催されたGPR Vol. 37の2日目(出演陣としてYu_Asahina、mami、m@sumi、NU-KO、kidlitが今回と共通)で同楽曲を流しており、おそらく感性が類似している。

4.EMPTY DIARY / peak divide & Rachel Lake / UNBEATABLE
最新の海外作品からも1曲ということで、リアルサウンドに寄稿した2021年の音楽ゲーム楽曲ベスト記事、IGN Japanの2021年のゲームサントラベスト記事の双方で選出対象とした疾走ギターロックを。来場者には馴染みのないゲームタイトルと思われるものの、音楽としては間違いなく親和するでしょう、とためらいなくセレクト。米国のユニットpeak divideについてはこちらの記事(https://jp.ign.com/game-music/56850/feature/20218)で軽く紹介したのでご興味の向きはどうぞ。


5.How do you feel? / mao / GuitarFreaksV4 & DrumManiaV4
書籍「ゲーム音楽ディスクガイド2」のレビュー対象サントラを選盤したときのこと。全体のバランスを見て、GITADORAシリーズからは3枚を掲載することになった。初代「drummania」サントラを私が、GF10th&dm9thを糸田屯さんが執筆したものの、もう1枚は最後まで悩んだ。最終的にギタドラV4サントラについて書く決め手になったのがこの一曲。元はメダルゲーム「スピンフィーバー」の楽曲で、今回は音楽ゲーム収録曲であるという名目で音楽ゲーム外の音楽をいっぱい流すという裏テーマにも合致したことからピックアップ。作曲のQrispy Joybox(TATSUYA)とボーカルmaoとのコンビは、2010年の初代「REFLEC BEAT」収録曲「カラフルミニッツ」はじめ多くの共作がある。

6.Goodbye / LENA / TAPSONIC TOP
韓国音ゲーより爽やかな現地詞ポップスを。TAPSONIC TOP作中キャラクターLENA名義では2枚のシングルがリリースされており、2nd「To Be With You」のカップリングに当楽曲が収録されている。ところで作詞作曲を担当したLfenderというアーティスト、NEOWIZ系のサウンドブロダクションMUCA (Neowiz Music Cafe)に所属していたこと、同社による小中学生女子をターゲットとした音ゲー「BUBBLE Muse Maker」にオリジナル曲やクラシックアレンジを制作していたこと以外の素性がどうも分からない。ご存知でしたらぜひ情報をお願いします。


7.砂の城 / maimie / 梦想养成计划
「CROSS×BEATS」や「SOUND VOLTEX」等への歌唱参加でも知られるmaimieがM3-2019秋でリリースした6thシングル。作編曲は園田健太郎。「梦想养成计划」(2020)は中国bilibiliのアイドル音ゲー。中国限定リリースで、公式サイト上からapkファイルをDLして野良インストールすることはできたが、会員登録に中国のSNS番号が必要であったため日本からは遊べなかった。残念ながら世界展開に至れないまま2021年11月にサービスを終了しており、オリジナル曲の音源も入手困難となっている。naotyu-、onoken、TaQらがオリジナル楽曲で参加しているほか、GPR関連アーティストYamajetも、Cymbalsオマージュもあらわな疾走ポスト渋谷系「退屈な夜の脱走計画 (feat. 水都みらい)」を書き下ろしている。


8.誰も知らない小さな世界 / kiki* (チャーミーチャプレッツ) / SHOW BY ROCK!!
セトリの締めはメディアミックス系音ゲーから。もともとkiki*は2014年6月、コントラリーパレードと[lifter]を目当てに原宿ストロボカフェまで観に行ったライブの対バンで知って、一発で聴き惚れて物販に駆け込んでアルバムを買った思い出のアーティスト。SHOW BY ROCK!!で架空ユニットの中の人に採用されているのを後で知り驚いた。


おわりに

GPR本編のDJセットリストについて、僭越ながら選曲の意図を述べさせて頂きました。

おわりに、と言いましたが、実はまだGuitar Pop Restaurant Vol.48は終わっていません。9月17日(土)には本イベントの後日オンライン配信が行われます。

ライブはほぼ全編が流されますが、DJパートは会場限定であり配信には乗りません。ただし配信中に何箇所か休憩時間が設けられる予定で、そのBGMの一部について選曲を担当させて頂けることになりました。

基本的には出演者に関係する音源をセレクトしつつ、出演者以外で私に縁のあるアーティストの楽曲を2曲ほど、それぞれ特別に許可を頂いて流します。

いったいどんなアーティストの音源を? については、配信当日のお楽しみということで。そちらのセットリストとその選曲意図は、配信のプレミア公開(リアルタイム)に合わせて、ツイッター上で解説を行う予定です。

配信についてはGuitar Pop Restaurant公式ウェブサイトの告知にて。どうぞよろしくお願いします。



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書いた人:市村圭
音楽ゲームライター、音ゲーマー。興味は音ゲー文化全般、専門はpop’n music。著書(共著)に「ゲーム音楽ディスクガイド2──Diggin' Beyond The Discs」(ele-king books)。

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次回の更新は10月1日(土)「ビーマニポケットのDDRキティさんバージョンで遊ぼうと思ってた人/ぬのじ」の予定です。お楽しみに!