『仮面ライダー剣』ってオンドゥル語とか言われるけど、演技はかなり良いんだぞ。

『仮面ライダー』にハマったのは小学6年生の秋か冬だったと思う。これまで見てこなかった世界にすっかりはまった僕は、何作品も『仮面ライダー』を視聴した。
 一話から最終回まですべて見たことがあるのは『BLACK』『BLACK RX』(『ZO』、『J』)『クウガ』、『剣』、『響鬼』、『カブト』、『電王』、『キバ』、『ディケイド』、『W』、『オーズ』、『ウィザード』、『鎧武』、『ジオウ』だ。ケーブルテレビなどの再放送や公式配信、たまたまやっているのを見た、一時期見ていたなども含めると、『V3』~『新仮面ライダー』(『ZO』『真』、『NEXT』、『セイバー』以外は最低一話以上は見たことがある。
 どこ作品もそれぞれ思春期、少なからず影響を与えられたのだが、特に大きいのは『オーズ』『響鬼』、『ディケイド』、『鎧武』そして『剣』だろう。今回はその中から『剣』について書いていきたい。

『仮面ライダー剣』はセリフが聞き取りにくいことで有名だ。そもそも一話の最初のセリフからして「剣崎くん、目標まで南西に10キロ」というセリフなのだが、これも聞き取りにくい。「目標まで~」、「南西に10キロ」なのか「南西20キロ」なのかわからない。人によっては「男性20キロ」と聞こえたという人もいれば「7020キロ」と聞こえた人もいるようだ。多少話を面白おかしくするために誇張している可能性はあるが、聞き取りにくいことは事実だ。
他にも喧嘩のシーンで上司が「クサー!」と叫ぶ。このシーンは「橘(人名)!」と叫んでいる説、「貴様!」と言っている説などがある。おそらく「決着」と言っているはずのシーンでエコーがかかっているせいか何度聞きなおしても「ケッチャコ」と言っているように聞こえる。有名な聞き取りにくいセリフが山のようにある。活舌以外にも気になる点が多い。

・主人公の掛け声がなぜか「ウェイ」(始役や天音役の役者にも驚かれていた)。
・キャラクターソングであり、頻繁に流れる挿入歌のサビが「辛味噌」と言っているように聞こえる。
・数カ月時間がたち変更された次の挿入歌のサビも「敵裸体」と聞こえる。
・主人公のキャラソンのボイスが妙に加工されている。さらに歌いだしが「わらび草」と聞こえる。
・「ぶっ殺す」というセリフを子ども向け番組ということから「ぶっ殺す」と聞こえないように言った結果「ムッコロス」と聞こえる。なぜかこのシーンで「ムッコロス」と言っている人物が変顔をしているように見える。
・主人公の上司が敵に捕まって寝ている時になぜか急に物理的に炎上しそのまま消える。死を偽装したらしい(?)。
・意味深な「ダブルジョーカー」というセリフを残すも、その意味は最後まで不明。
・前期OP曲の人物のイメージ映像中なぜか主人公はスーツ姿でリンゴ(?)の皮を向き、皮を向いたリンゴを素手でもってキメ顔で誰かに渡すようなポーズをとる。仲間たちもスーツ姿でサッカーボールをリフティングしたりティッシュ(?)に連続パンチしたり、妙にキメた格好で牛乳を飲んだりする。
・雪山でショックを受ける場面で、絶叫しながら雪に頭を突っ込んでいるシーンが土下座しているよう見える。
・ここで上げた要素以外にも膨大なツッコミ要素があり、有名なネタにされているシーンがかなりある。
・しかし有名なネタにされているシーン以外にも、見逃されているだけでツッコミどころがあるシーン。普通の作品ならネタになっているはずなのに、他のネタが濃すぎて見逃されているシーンがかなりある。
 などツッコミ切れないシュールな内容が考えられないほど多い。
これらは主人公が第一話で叫んだ「本当に裏切ったんですか」というセリフが「オンドゥルルラギッタンディスカー」と言っているように聞こえることからオンドゥル語と呼ばれるようになった。

そして『仮面ライダー剣』を見たことがない人でもオンドゥル語は知っているといことも珍しくはなくなった。
演技が悪いとも言われるが実際は違う。演技は良い、各キャラクターの感情が直接伝わってくる名演技だ。ただセリフが聞きたり難い。ベテラン俳優のセリフも聞こえ難いことから何か別の問題があったのではないかとも推測できるのだが、一視聴者からすれば想像の域を超えない。
 小夜子役の役者がインタビューでライダーが殴られるシーンのアフレコを実際に殴られるような振りをしながらアフレコしていたと言っているが、他にそのような証言はないため詳しくは不明だ。
個人的には役者よりもシナリオの良くわからない感じのほうが印象に残っている。作品の前半、特に第一クールは作品全体的な混乱が伝わっている。
そもそも『剣』という企画自体、本来『仮面ライダー響鬼』の制作が間に合わなかったから急遽放送された作品という面もある。それに前作のスタッフがどれほど上手く引き継いでいるのかも謎だ。そんなこともあって誰か特定の誰かを責めることが正しいとは思わない。
 ただ「南西に10キロ」や「南西20キロ」は間違えられても仕方ないようなセリフだ。「ムッコロス」に至ってははっきり話せないことを書いた側にも問題がある。全体的になんとなくおかしいと思うところが多い。
 その中で特徴的なのは「オホーツクババア」というセリフだ。これは主人公が一話で急に「オホーツクババア」と言ったように聞こえることで有名なセリフだ。この記事を書くために調べたところどうやら「業突く張り《ごうつくばり》ババア」と言っているらしい。これはネットで調べたことであり、情報の真偽は不明だ。
 このシーンは俳優の活舌が悪いと言う風潮から活舌の問題だと思うかもしれない。しかし実際には第一話の前半で主人公が急に「業突く張り《ごうつくばり》」と言い出すと思っう人は少ないなろう。そもそも私は今日まで「業突く張り《ごうつくばり》」という言葉を知らなかった。別に私が知らない言葉を使うなと言ったら日本語は貧しくなってしまうのだろうが、流石に急に業突く張りという言葉が使われるとはまさか思わなかった。そしてそうものも役者の活舌が悪いと言うことにされてしまう原因となっている。実際にはこれは脚本や演出の問題ではないのだろうか。
 『仮面ライダー剣』はこういうたくさんの迷走が重なっているが、なぜかそのすべてが役者の活舌が悪いと言うことにされ、結果的に、それがネタとなっている。


幸い後半はとある脚本家の参加で事実上のシリーズ構成者が交代し、無事立て直し後半になればなるほど面白い作品として知られる。私も『仮面ライダー剣』のことはかなり好きだった。
『仮面ライダー剣』は目立つ役者ばかりがネタにされているが、実際はそれ以外のおかしいところも多い。むしろ役者の演技は聞き取りづらくても感情がはっきり伝わってくる名演技と言える。

 ただ最近再登場する『仮面ライダー剣』の演技は悪い。おそらく作り手側が『剣』をギャグ作品と見ている節があるのか、役者も当時の再現をしようとしてわざと活舌を悪くしているような感じがする。活舌だけでなく、全体的に『剣』登場キャラクターの扱いが悪い、なぜか裏切ったりする。そういうものを見ているとこれの作り手は本編を見たのか疑問を感じたりもする。
活舌が悪いだけのは当時と変わらないではないかと思うかもしれないが、今の再登場した時の『剣』の人物はただ活舌が悪いだけで、当時持っていた気持ちを感じる名演技というわけではない。それが悲しい。
思い出してくれ『仮面ライダー剣』はしっかりした作品なんだ。確かにどう考えてもおかしいシーンも多い、ネタにするなというほうが難しい場面も多い。だからネタにするなとは言わない。ただ作ってる側がネタを狙って、その結果滑っているのは『仮面ライダー剣』ファンとして悲しい。
思い出してくれ『仮面ライダー剣』のキャラクターたちはただ活舌が悪いだけではないのだ、全力で演じた結果、活舌が悪く聞こえるのだ。そしてたとえ聞き取りづらくても妙に心に響く魅力があるのだ。
 ただ正直聞き取れないセリフやツッコどころはあまりにも多いことは事実であり、それをネタにするなと言うのもおかしな話だ。別に見ている側が自分たちのコミュニティでネタにすることは構わない。しかしそれは作り手側がしちゃだめなことなのだ。ネタにする要素が多い作品でもそれは本気で作っていた結果生まれるものだ。
そしてネタ以外のところが好きな人もたくさんいる。そのことを忘れないで欲しい。

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https://otomizusinnzi.hatenablog.com/entry/2020/06/30/110531

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