にせんねんもんだい N

あらゆる装飾をそぎ落としたという印象。にせんねんもんだいの新作EP『N』は、“A“、“B-1“、“B-2”の三曲で構成され、無機質な音の連なりが約40分間続く。どの曲も淡々としたドラムから始まり、そこに不気味な廃墟や何かの警告を思わせるようなギター、ベース音が加わっていく。一曲を通してもそうなのだが、EPを通して、次第に緊張感や焦りが増しているように思える。聞いていると、姿の見えないものに追いかけられているような、逃げ切れないことがわかりながらも必死で逃げているような、そんな恐怖と焦燥感の深みに入り込んでいく感覚を覚える。

極限までそぎ落として残ったアルファベト“N”は“noun”や“name”、“natural”の“N”なのかもしれない。時代や社会の風潮によって、過去の歴史やものの正しさが歪められて説明されること、自分自身の価値を後付けで加えることは仕方がなく起ってしまう。真実とされているこ
とが真実ではない。覆うものが多すぎて、自分の核となるものがわからない。本当の正しさや真実を探ることはもは
や不可能に近く、その旅路は『N』で表現される恐怖と焦燥感そのものだ。削りに削られた『N』という表現は、彼女たちが示す一つの真実なのである。

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