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彼はきっと、詐欺師に騙されることはない

不登校の父をやっている「こうだ」が、不登校の親・子の話をじっくり聞いていく連載の第7回です。
今回は、当会のスマキャンや子ども会に参加してくれているY君に話を聞きました。
気づけば3時間半も話をして、楽しい時間でした。
本記事はそのあとがきです。

■ 今回話を聞いた方
Yさん(小6男子)
・小学3年生ごろから不登校
・当会のスマキャンや子ども会によく参加してくれています。最初は緊張しながら様子見していましたが、気を許せる環境と人だと判断してくれたのか、今では最高の笑顔で過ごしてくれています。
・無邪気で話好きの子ですが、時折、妙に達観した発言をするのが面白い子です。

炭鉱のカナリア

本連載のvol.5~6では、Yくんに、今まで学校で「嫌だったこと」を大いに語ってもらいました。
私が彼に「嫌だったこと」を聞いたのは、彼から身の回りの問題を敏感に感じ取る力を感じていたためです。

不登校の子は、「炭鉱のカナリア」の例えて語られるのを時折聞きます。
私はこれを重要な視点だと思っています。
カナリアは、有毒ガスが発生するといち早く鳴き声がやむ習性を生かし、炭鉱労働者が坑道に持込み、危険察知に使われていたそうです。
そのカナリアのように、周囲の環境を敏感に察知し、危険を知らせてくれる存在が、不登校の子に多いと私は思います。
私はYくんにも、そんなイメージを持っていました。

今回Yくんが話してくれた、学校に対して感じた違和感は、正しいと私は思います。
「他の子と同じように」、多少の理不尽に耐えられるように、もしかしたらなろうと思えばなれるかもしれないけど、それじゃあつまらないなぁと、勝手なことを私は思っています。

人を見極める感性に優れている


彼の良いところは、人を見極める感性に優れているところだと、私は感じています。

彼は人の善くない面を敏感に感じ取ります。
学校の先生に対する鋭い指摘は、きっと的を射ているのだろうと思います。
特に「勉強をしに行っているのに、勉強をしたくないと思われているから、十分に教えてくれない」
というのは、私にとっても少し耳が痛いです。
私も仕事や家庭などで、相手のニーズに気づかずに、思い込みで筋違いな振る舞いをしていることも多いのだろうと思います。
敏感に感じ取る人の要望を聞きながら考えていくことで、他の子にとっても、もっと過ごしやすい環境を作れる可能性があると思います。

また、私が彼の話を聞いていてびっくりしたことは、彼が幼稚園の年中のころにあった出来事を、まるで昨日のことのように怒りながら話していたことです
私の場合、人に話すことですっきりして、もうそのことは忘れてしまいますが、彼はずっと覚えています。
その痛みをずっと覚えていることで、彼は他人に同じことをすることは無いと思います。
思えば、彼が人の嫌がることをしたり、嫌がることを言ったりするところを見たことがありません。

彼は私と一緒にいる時、ずっと私のことをイジってきます。(すごくうれしそうに)
私がボケると必ずツッコんでくれますが、本当に嫌なことは言ってきません
今、彼と私はいい関係ですが、はじめのうちは、彼は遠くで様子を見るような感じで、何度か同じ時間をすごすなかで少しずつ今の関係が築かれました。
その間彼は、私や、私が作った環境を観察し、じっくりと見極めていたように思います。
そんな彼が今は心を開いて、自然体で過ごしてくれていることを、私はとても嬉しく思っています。

彼はきっと、詐欺師に騙されることはない


彼は人の善い面も敏感に感じ取っています。
彼がインタビューの中で言ってくれた、
「おとかわ会で出来た友達は、ありのままでいるのがいい。それを個性とも思っていない。ありのままでいるだけ。そこが好き。」
という言葉が、私はとても嬉しいし、深く人を見ているなと感じます。
たぶん彼は、ただ自分と趣味が合うとか、遊んでいて楽しい、ということ以上に、一人一人の深い感情の部分までを、その人の一挙手一投足、一つ一つの言葉や態度から、感じ取っているのだろうと思います。
それだけに、彼はとても疲れやすいようですが、この能力は生きていくうえで必ず生かされると思います。

きわめて具体的に言えば、彼が将来、詐欺師に騙されることが、私にはまったく想像できません。笑
また、詐欺師に騙されそうな友人の目を覚まさせることもできそうです。
常に冷静に人を見る能力があることは、彼自身や彼の周りの人の人生を助けることにもなると思います。

家族以外にも話せる人が居ることの大切さ


ちなみに、私の息子も人一倍敏感なタイプで、それでYくんとウマが合うのか、彼らは無茶苦茶仲が良いです。

私の妻は、息子が考えていることをじっくり聴くことができますが、私はとても苦手です。
一方、私は一緒に楽しく遊ぶことは得意なので、息子とは仲が良いものの、彼から悩みや愚痴を聞いたことは殆どありません。
「父さんに言ってもどうせわかんないもん」という感じです。

一方で、他の家庭の子ども(特に思春期の子ども。男女問わず。)の話は、割とじっくり聴くことが出来ているという自負があります。
敏感か鈍感か、という単純な話ではなくて、ある側面では鈍感で、別の面では敏感であったりします。
自分の苦い経験があるからこその聞ける話があり、私の場合は思春期の悩みが割と深かったから、聴ける部分があるのかなと思います。
自分の話を分かってくれる人が見つかるには、その人が持つ生まれ持った人格と、これまでの経験から構成される、複雑な条件があるのだと思います。

そう思うと、親は二人(場合によっては一人)しかいない中で、子どもの悩みをじっくり聞くなんていうのは非常に難しいと思います。
家族以外に信頼できる大人を見つけられる、また、時に引き合わせてくれる場を、おとかわ会でこれからも作っていければと思っています。

私は彼の成長が楽しみです。
かれは小6でまだまだ急成長中で、これからどんな人になっていくのか分からないけど、これからも仲良くしてもらって、必ずまた話を聞いてみたいと思っています。

(終)

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千葉県我孫子市を中心に活動をしています。

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