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第42回全日本実業団対抗女子駅伝競走大会

明日、令和4年11月27日(日曜日)に、『第42回全日本実業団対抗女子駅伝競走大会』が宮城県で開催されます。

『クイーンズ駅伝』の愛称も定着してきており、『優勝』はもちろんですが、来年のシード権獲得なる『8位以内入賞』の『クイーンズ8(エイト)』の争いが楽しみです。

今日、オーダーが発表された後、有力選手5名が前日記者会見に臨みました。

前回優勝の積水化学から新谷仁美選手、同2位の資生堂から五島莉乃選手、同4位のJP日本郵政グループから廣中璃梨佳選手、同5位のダイハツから松田瑞生選手、同16位の豊田自動織機から田中希実選手の5名での会見でしたが、メンバー移籍等の関係もあるのでしょうが、同3位のデンソーの選手が居ないのは少し残念に思いました。

前日会見は異様な緊張感

オリンピックや世界陸上で活躍している選手5名での記者会見ということもありましたが、登場した際は、高い位置にセッティングされた壇上と背の低い選手には高すぎる椅子のために足のやり場に戸惑う選手もいて、新婚の松田選手を祝う司会者のコメントまでは和やかな感じで前日記者会見は進みました。

それを一変させたのが新谷選手のインタビューに対するコメントでしたね。
あくまでも推測に過ぎないのですが、今大会の予選会となった『プリンセス駅伝』で発生したアクシデントを受けてことだったと思います。
「選手にとって、この大会(駅伝)が全てではない」みたいな感じで、瞳の奥に強い信念の炎が見えた気がします。

それに触発されたのか、廣中選手は自身の不調を支えてくれたチームメートへの感謝の涙を流すと、過去の駅伝ではなかなか良い成績を残せていない不安と緊張感がピークに達したのか田中選手も涙ながらにコメントを続ける異様な緊張感が会場に漂ってしまいました。

インタビュアーの方も、選手に対してやや答えにくい質問をしたのも影響したかもしれませんね。

松田選手と五島選手は大人な受け答えで、取り乱すことはありませんでしたが、こんな緊張感のある前日記者会見を誰が予想できたでしょうか。

新谷選手のプロとしての発言は、時折、強い言葉だけを切り取られることがありますが、あくまでも新谷選手クラスの経験を経ている選手しか分からないゾーンがあると思いますので、若い選手には沢山ある教科書のうちの一つとして、自身に合った身体づくりに取り組んでほしいという思いがあるのでしょうね。

そんな緊張感がある前日記者会見でしたが、提出された最終オーダーを見てみると、どのチームの監督も区間配置に頭を悩ませたのだな、というのがはっきりと分かるオーダーでしたね。
体調次第では当日変更もあるかもしれませんが、補欠に回った選手を見る限り、よほどのことがない限り提出されたオーダーでレースは行われそうです。

優勝候補

優勝候補筆頭は、前回大会『初優勝』を飾り、今大会2連覇に挑む積水化学。
『第1区』から順に、佐藤早也伽選手、卜部蘭選手、新谷仁美選手、弟子丸小春選手、鍋島莉奈選手、佐々木梨七選手が配されました。
優勝メンバー6人のうち5人が出走予定ですが、前回『第1区』で区間9位ながら先頭と17秒差と流れを作った森智香子選手が補欠に回り、JP日本郵政グループ時代は故障が続き、思ったように走れない状態で退社し、ある程度回復したと同時に移籍加入した鍋島選手が後半のエース区間『第5区』を任されています。
フルマラソン後間もない佐藤選手の状態がどこまで仕上がっているのか気になるところですが、『第3区』を任された新谷選手の所で、最低でも先頭に立つことが連覇には必要不可欠なオーダーだと思います。
外国人選手も走ることができる『第4区』を昨年に続き任された弟子丸選手に襷を渡す時点で、できれば『30秒』以上の貯金を作っておきたい前半型の布陣です。

対抗

昨年、2時間13分55秒の好タイムをマークしながら、準優勝に終わった資生堂が対抗の筆頭でしょうか。
木村友香選手、佐藤成葉選手、一山麻緒選手、J・ジェプングティチ選手、五島莉乃選手、高島由香選手の順で出走予定です。
昨年のメンバーが5人入っており、うち4人は同じ区間を任されます。
東京オリンピックマラソン8位の一山選手の加入により、昨年『第2区』区間6位の実績を残している樺沢和佳奈選手を補欠に回せる布陣で、ジェプングティチ選手と五島選手でトップに立てれば、大ベテランの高島選手が昨年のリベンジを果たす御膳立てが整いそうです。
カギを握るのはこちらも『第1区』を任されたベテランの域に突入した木村選手。
前回は区間賞と同タイムで区間2位と悔しいながらも、チームに勢いづける好走を見せています。
今年は、『1500m』で『4分10秒』切りを達成し、先月には『10000m』で『31分51秒05』の自己新記録をマークしていますが、主戦場とする『5000m』で安定した結果を残せていないのが気になるところです。

2強を崩すのは・・・

正直なところ、積水化学と資生堂の『2強対決』との見方が強い大会となりそうです。

昨年3位のデンソーは、マラソンの岩出玲亜が新加入したものの、監督交代の続く影響もあってか、エースの矢田みくに選手がエディオンに、昨年ルーキーながら『第1区』で区間4位と快走した期待若手だった酒井美玖選手が肥後銀行に移籍、『第2区』区間3位の矢野栞理も退部と厳しい状況。
『第1区』を任されるのは、9月にパフォーマンスコーチから現役復帰したばかりの池内彩乃選手。
優勝争いはおろか、シード権獲得なる『クイーンズ8』すら危ういと言わざるを得ません。

こうなってくると、昨年4位のJP日本郵政グループが、『2強対決』に待ったをかける一番手でしょうか。
正直、エースの廣中選手も万全の状態ではないのが、前日記者会見でも伺える状況で、新谷選手と『第3区』のエース区間で直接対決となります。
駅伝では圧倒的なパフォーマンスを続けている廣中選手ですが、かえってそれが重荷にならないか、今大会に限って言えば心配なところです。
名城大を常勝軍団とした立役者のルーキーの和田有菜選手が、『第1区』で流れを作りたいところですが、やはり大学から実業団と異なる環境に飛びこんだばかりで、トラックレースでは『3000m』を2回走っただけ(←私の知る限りですが・・・💦)と、駅伝での実績が豊富とはいえ、レース感が戻っているか不安なところだと思います。
高速なレース展開となると厳しいかもしれません。
絶対的なチームの精神的な柱である鈴木亜由子選手が『第5区』を任されましたが、9月に海外マラソンを走ったばかりで、その疲労の回復具合も気になるところです。

そんな中、躍進を見せそうなのが、前回大会11位のエディオンと同16位の豊田自動織機。

エディオンは先述のとおり、矢田選手が新加入し、今大会は最終『第6区』を任されています。
エース区間の『第3区』と『第5区』は、昨年区間9位、区間4位と好走している西田美咲選手と細田あい選手が引き続き配されており、安定感があります。
同様に昨年に続き『第1区』を任される若きエースの萩谷楓選手が、昨年区間17位のとレーキの名誉挽回するような快走を見せることができれば、チームに勢いがつきそうです。

豊田自動織機も、田中選手と後藤夢選手の加入により、選手層が大きく改善されました。
後藤選手は補欠に回りましたが、駅伝では後半失速するイメージを拭えない田中選手が主導権を握ることができれば、ラストスパートでは他を寄せ付けないスピードがあるだけに注目です。

注目の『第1区』

いろいろと好き勝手書かせていただきましたが、やはりどのチームも『第1区』(7.6km)がカギとなってきそうです。
前回大会で区間賞を獲得したヤマダホールディングスの岡本春美選手と資生堂の木村選手、豊田自動織機の田中選手、エディオンの萩谷選手、ダイハツの松田選手とラストスパートに定評のある選手が揃いました。
積水化学の佐藤選手が早い段階で仕掛けて、揺さぶりをかけるくらいの余裕があるかどうかで、大きく展開が変わってきそうです。
このスピードのある選手を相手にどう対処するかで、『クイーンズ8』争いにも少なからず影響があるといえるでしょう。
後半の粘り強い走りに定評のある上杉真穂選手をこの区間に配してきたスターツは高速レースで集団が崩れることを期待しているかもしれません。
JP日本郵政グループは和田選手で大きく後れをとるようであれば、優勝戦線から遠のいてしまうのは言うまでもないですね。

区間気歴代最高タイムは、距離が変更となった一昨年に廣中選手がマークした『23分21秒』。
前回大会は区間賞の岡本選手で『23分52秒』でしたが、廣中選手の記録に迫るあるいは破る選手が出てくるかにも注目です。

その廣中選手と新谷選手が直接対決する最も長い10.9kmで争われる『第3区』の区間記録は新谷選手が驚異的な走りを見せた一昨年マークした『33分20秒』。
こちらは、単純に『10km』に換算すると『30分34秒』と、トラックレースの『10000m』の記録と比較しても、日本人選手では新谷選手しか体感したことのない異次元の記録。
1月にマラソンを控えている新谷選手がどこまで自分のタイムに近づけるか、廣中選手の駅伝不敗神話が続くのか、こちらも注目ですね。