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Mさん

今日はバイトをしているお蕎麦屋さんで、一緒にパートをしてるMさんが、私が入れた天つゆを見て「ちょっと量が少ないよ」と言って天つゆを足したので、私が「それは昔から決まってる量だから少なくないよ」と言ったのだけど、お互い譲らなくて、お店が忙しかったのでうやむやなまま業務をこなしていた。

みんなやかんから適当に注ぐ天つゆの量は、実はちゃんと「器のくぼみの5mm下」と決まっているのだが、みんな人に教える時に「だいたいこんくらいね」と伝えるので、こういう事がよく起こる。

私が100%合ってるのに頭ごなしに指摘されたのもムカついたから言い返したい気持ちがあるし、ちゃんと教えないとまたグーグルのレビューに「毎回量が変わる」とか書かれるし、でもMさんは面白いし好きだから仲良くしたいからあんまりきつく言いたくないしなぁ、と、ぐるぐる考えてると、ぜんぜん仕事に集中できなくなってきた。

そこへ、Mさんが客席の奥から「ナナナナ〜!ナナナナ〜!ナナナナ〜!ナナナナ〜!」と小走りしてきた。私は、「ジョイマンおるw」とつい突っ込んでしまった。「7番卓に追加頼まれたからさ〜、忘れちゃわないようにね!」とMさんは照れ笑いして、厨房のみんなも笑った。

私は、その笑顔を見てとても安心して、ああ、自分はやっぱりMさんと仲良くしたいな、と思った。迷った私がアホだった。たかが天つゆのためにMさんとの関係を壊すなんてアホらしい。

Mさんと仕事をしていると、Mさんがちょっと邪魔なときが結構ある。私が作業する台の前に用もないのに立ってたり、やらなくていいことをやって場を混乱させたり、後ろを通ってから「後ろ通ります」と言うのでよくぶつかったりする。

仕事の相性がすこぶる悪いので、疲れてる時はイライラを我慢できなくて今日みたく強く当たってしまう事がよくある。でも、毎度仕事終わりには何事もなかったかのように、笑顔で別れる。Mさんはなんで私を許して仲良くし続けてくれるのだろうか。

昼の営業が終わりお客さんが全て帰って店長が休憩をしに外出すると、片付けながらみんなでガヤガヤ雑談が始まる。今日はメンヘラごっこで盛り上がって楽しかった。

退勤時間になり、私はMさんより少し遅れて店を出た。駐車場でMさんと別のパートさんが立ち話をしているのが見えた。店長は本当に気が利かない、体力がありすぎて人の気持が分からない、などと愚痴っていたので、少しばかりその愚痴を聞いてからそれぞれ帰路についた。

優しくあるには体力がいるな、と改めて感じた。最近は働き詰めで私は疲れている。そろそろちゃんと休まなくては。Mさんに優しくあれる体力がほしい。


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