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"君が1人を感じたらこの声を頼って良いから"


秋の冷たい雨が降る夜だった。
弟と車用品店に行った夜だった。


わたしは車を持っていないので
特に欲しいものもなく
ただ店内をウロウロするだけの
怪しい客だった。
そもそも運転免許証すら持っていない。


芳香剤や様々な機材が並ぶ中
わたしが興味を示したのはスピーカーだ。
音楽が大好きなわたしにとって
スピーカーやイヤホンの音質はかなり重要である、
興味津々。

視聴用であちらこちらから
音楽やラジオが流れてくる。
そこでわたしは衝撃の出逢いをした。


♪〜君が1人を感じたらこの声を頼っていいから


直様スマホを手に取り
SoundHound(音楽検索アプリ)を起動する。

Tonight / SHE'S


情報入手完了。
スピーカーから流れるその優しい歌声に
聴き入った。

鑑賞終了後、
すぐに車に戻りさっそくフルで聴いてみる。
冒頭からドストライクだ。
完全に彼らの音楽に囚われた。



その頃のわたしは病みやすく
いつも何かに不安で
眠れない夜が何度もあった。
そんな夜はものすごく長くて辛かった。
イヤホンで音楽を聴きながら
朝日が昇るのをいつも待っていた。



あの日からSHE'Sをよく聴くようになった。
深夜に聴くTonightはまた一段と良く聴こえる。



初めは " SHE'S " というバンド名に
ピンときていなかったが、
他の曲を聴くと知っている曲がいくつかあった。

その後もSHE'Sの音楽に囚われ続け、
いつしか彼らの存在は
わたしにとって光になっていた。


Tonightを聴くとあの日のことを鮮明に思い出す。
秋の冷たい風、雨の匂い。

7年前の10月の出来事。

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