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天井の吸音で駅の音環境はどう変わる?

 昨今、様々な駅で内装のリニューアルが行われているのを目にします。特に多いのが天井です。天井が吸音仕上げか否かで、アナウンス等の聞き取りやすさや空間の喧騒感、快適性が大きく左右されます。
 天井は人がぶつかることもなく強度の心配が少ないため、公共空間において吸音仕上げを設置するのに適した場所なのですが、どのようになっているケースがあるでしょうか?天井が吸音されていないケース、吸音されているケース、されているように見えるが不明なケースなど様々ですが、いくつか事例を紹介したいと思います。
 同じ駅や同じ路線でもエリアによって異なる内装の場合もあり、音環境を比較してみると、面白いことがわかるかも?

改修中の駅舎で見つけた吸音のアリとナシの天井例

 大阪メトロでは主要駅の改修が進められていますが、吸音でない天井が採用された駅舎も見られます。2023年9月現在、以下写真の御堂筋線梅田駅のように、1つの駅で吸音天井の空間とそうでない空間が両方存在する駅もあるようです。訪れて、喧騒感やアナウンスの聞き取りやすさを聞き比べをしてみることもできそうです。

※注 1枚目の天井は有孔金属パネルで、無孔タイプよりは吸音性能が高いと考えられるため、「吸音あり」と分類しています。天井裏にグラスウール等の吸音材が設置されているとさらに吸音性能が高まるのですが、有無について確認できていません。

吸音あり天井 (大阪メトロ御堂筋線の梅田駅、改修前エリア 2023年9月撮影)
吸音なし天井(大阪メトロ御堂筋線の梅田駅、改修後エリア 2023年9月撮影)


新しい駅舎で見つけた吸音天井の例

 反対に、吸音天井が設置された駅舎も見られます。
 新しくなった東京メトロ銀座線渋谷駅の天井には吸音材が採用されています。特徴的な白いM字フレームの背後にある、グレーの板材が「アルミ繊維吸音材」という吸音材です。遠目からはコンクリート打ち放しのようにも見えて、一見、吸音しないように見えますが、しっかり吸音しています。構内は喧騒感も低く、アナウンスも聞き取りやすい印象です。

吸音天井(東京メトロ銀座線の渋谷駅、2023年12月撮影)
アルミ繊維吸音材


アナウンスが聞き取りやすい駅舎へ

 駅等の交通機関では、アナウンス等を正確に聞き取れないと困ります。例えば、列車トラブルの時にどの線に乗り換えたらよいか、馴染みのない駅で目の前の快速電車が目的駅に止まるのか、など、耳からの情報に頼ることが多いです。吸音により音環境を整えることで、空間の響きが短くなってアナウンスが明瞭になったり、列車走行音が少し静かになってアナウンスが聞こえやすくなったり、といった効果が生まれます。
 高齢の方や障害を持つ方を含むすべての方が、”耳を凝らさなくても”正確に情報を得られるには、吸音により音環境を整えることが非常に重要です。また、整えられた音環境の中で適切な拡声設備の整備も望まれます。

 音環境に配慮された空間が増えていくには、利用者である皆さんの声も必要です。まずは普段利用されている駅で、改めて音を感じてみませんか。                   

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