偶然の答えというドラマ

櫻坂46の「偶然の答え」がMVとしても曲としてもすごく素敵な作品だった。



以下個人の勝手な解釈と感想です。



まずMVの感想。



夏鈴ちゃんの「あの頃の私は、自分ではない誰かになりたいと思っていた」という台詞からMVは始まり、学生時代に遡る。


駅のホームでリコちゃんに「好きなの」と告白するカリンちゃん。
リコちゃんは笑顔で「私も好きだよ」と言ってくれるけど、カリンちゃんの好きはリコちゃんの好きとは違う。

カリンちゃんの少し震えたような声で「好きなの」と言う姿に胸が締め付けられた。
想いが溢れて精一杯の勇気を出した告白だった。

「そういうのじゃなくて…」の言葉にその意味の違いに気づいたリコちゃんの表情と、その表情を見て同じ好きじゃなことや相手を困らせてしまったかもしれないことを実感して苦しい。



教室にいるのを見つけて嬉しそうに笑ったり、楽しそうに会話したり、寝顔を愛おしそうに見つめたり、触れられた手にドキドキしてたり、カリンちゃんがリコちゃんのことをすごく好きなのが痛いほど伝わってきて恋をしている楽しい日々が描かれている。


1番では告白する前の楽しかった日々と連動するように、晴れた屋上で踊るメンバーも穏やかな優しい表情をしているし夏鈴ちゃんも嬉しそうな笑顔を見せている。可愛い。


2番は告白した後の2人を描いている。

好きと伝えたが、いつも通り振る舞おうと話しかけたカリンちゃんに対して「ごめん」のひと言で遮るリコちゃん。

ひとり取り残されたホームの反対側で踊るメンバーは屋上の時とは違ってカリンちゃんの頑張った姿を見守るような支えるような真剣な表情だ。


こんなことになるなら、言わなければ良かった。
相手に拒絶されたと感じたこと、今までのような関係には戻れないこと、好きな人を困らせたこと、後悔や不安やどうすれば良いのか分からない色んな感情が溢れれて鞄を投げつけ叫ぶシーンは胸が痛い。


一方のリコちゃんも、カリンちゃんの好意が嫌だった訳ではないはずだ。
きっと、想像していなかったことが起きて動揺しているのと、大好きな友人に突き放すようなことを言ってしまった後悔もあると思う。
リコちゃんもリコちゃんで悩み苦しんでいる。

ここのシーンはどっちの目線で見ても苦しい。
誰も悪くない、好きの意味が少し違っただけでこんなにすれ違ってしまうのが苦しい。


その後カリンちゃんは役者の養成所を探し役者を目指す。
役者を目指すきっかけは冒頭の台詞「自分ではない誰かになりたい」からだと思う。


「自分ではない誰か」というのが、リコちゃんに好きと言って付き合える人なのか、リコちゃんのことを好きではない人なのか、恋愛に左右されることのない何も知らない人なのか、分からないけど、今までの自分とは全く関係のない違う人になりたかったんだと思う。
カリンちゃんなりの前の向き方とリコちゃんへの想いの断ち切り方なのかもしれない。


たったひと言「好き」と伝えただけで、自分の気持ちを素直に言っただけで、ふたりは同じ景色を見ることが出来なくなった。

学校ですれ違ってもお互い声をかけることも出来なくなってしまう。

すれ違った後振り返るカリンちゃんのまだリコちゃんのことを想って見つめる表情が切ない。

その少し後リコちゃんも振り返る。
リコちゃんも声をかけたかったけど、どんな言葉をかけてもこの関係が元に戻ることはないのを知っていて声がかけられないのかもしれない。
喧嘩したわけでも嫌いになったわけでもないのに大好きな友達を失ってしまった悲しみは大きい。

もし、このときお互い同じタイミングで振り返っていたら何かが変わっていたのかなって考えると運命は残酷だ。


最後のサビでは陽が沈みかけた校庭でのダンス。
これまでとは違ってメンバーの表情は切なさで溢れ大切なものを触れるかのような繊細さもある。
すれ違ってしまったふたりの切なさや悲しみを表すようなダンス。

最後の夏鈴ちゃんの胸を押さえながら俯いて泣いてる表情がこの恋の結末を表してる。

ただ好きになっただけなのに、たまたま好きになった人が同性だった、それだけなのに。


その後、たまたま見かけた上京前のカリンちゃんに声をかけるリコちゃん。
役者を目指すために東京へ行くと伝えるが、どうして?の問いかけには答えず「元気でね」とだけ言いその場を離れる。
カリンちゃんなりのけじめなのかな。
ここの元気でねの言い方が良い、切ない。

最後には現在のシーンになり、東京の街を歩くカリンちゃんが振り向く。
もしかしたらそこにはリコちゃんがいて偶然会えたのかもしれないけど、もしそうならそれはきっと必然だと思う。


正解は分からないけど、自分ではない誰かになりたいと思っていたカリンちゃんが今誰として生きていても後悔なく過ごしていたら良いなと願いたい。




もう、すごい。すごいMVを見た。
めちゃくちゃ良い。好き。
好きと切ないと苦しいが一気に押し寄せている状態。
夏鈴ちゃんの持つ雰囲気や表現力がMVのドラマパートという枠を超えた見応えがあるものだった。
こういうMVだとメンバー内で配役決めて演じることが多いけど、相手役がメンバーではなく俳優さんだったのもすごく良かったと思う。
どうしてもメンバー同士だと元々の関係性で見てしまったりどうしてもメンバーというフィルターがかかってしまう。

莉子ちゃんの演技も素敵だったから本当にひとつのドラマを見たような満足感がある。

もうこれは短編ドラマ。お互いの心情が入ったバージョンもその後の続編も観たいくらいストーリーもキャストも良い。
夏鈴ちゃんの演技はあざとくてのドラマで観たことがあったけど、そのときもすごく自然体で可愛くて雰囲気の良い子だなって思った覚えがあったから今回のMV観てもやっぱり演技が映える子だなと思った。
夏鈴ちゃんもきっと憑依型のアイドルなんだろうなと感じさせる表情と雰囲気を持っていて目を惹く存在。

すごく繊細なテーマを扱ったMVだけど、ふたりの丁寧なお芝居によって考えさせられる惹きつけられる作品になった。

もっと色んな好きの形が認められるようになったら良いなと思いました。

それが自然と当たり前のことになると良いな。



ダンスシーンの最後の夏鈴ちゃんは本当にこのまま消えてしまうんじゃないかって心配になるくらい儚くて切なかった。
1番のダンスシーンと比較すると同じ振り付けなのに胸の苦しさが全然違う。
1番、2番、ラスサビの場所と表情の違いが、時間と感情の経過を感じさせるダンスだった。


普段みんなが心のどこかで思っているけど口に出せずに藻掻いている感情や自分は少数派なんじゃないかと不安に感じることを強く訴えるように歌うイメージがあるけど、こういう風に繊細に寄り添って歌うこともあるんだなって新たな一面を感じた。
色々な表現の仕方で色々な人の心を救っていてすごい。
かっこいい櫻坂も素敵だし優しい櫻坂も素敵だ。

すごく好きなMVだった。




次に歌詞の感想。

アイドルのMVのドラマパートは歌詞がリンクしているものもあれば、全く関係ないものもある。
この曲の場合はこの歌詞の関係性を分かりやすくするためのMVなのかな。

あくまで私の解釈というか願望だが、MVのその後がこの歌詞だったら良いなと思っている。
そういう未来であってほしい。

MVのラスト歩いていた街が渋谷なら、あそこで偶然の再会をしてそのときにはお互い笑いあっていてほしいななんて思う。

歌詞単体でみた感想とMVと繋げてみてる感想をごちゃ混ぜに書いている。



偶然は滅多に起きることではないし、引き寄せられるように出会えたのはもう偶然を超えて運命だと思う。
「自分のその秘密」が、MVの中だと「同性への恋心を抱いたこと」なのかと思ったけど、歌詞だけ見るとこの段階では恋愛対象の性別は分からない。
秘密に気づくんじゃなくて気づかされる。
もしふたりのその後だとしたら、例えばここで出会うのが運命であることに偶然出会って気づかされたとか。
秘密は「運命を引き寄せる力があること」だとさすがにメルヘンすぎか…。
今でも好きな気持ちに気づかされるになるのか。
何になるだろう……。




センター街の方へ二人で歩きながら
もし誰かに見られた誤解されちゃうね
唐突に思ったよ 冷やかされたいって

ここの歌詞の意味を理解したとき、この恋の相手が誰なのか分かるのがすごいと思った。
きっと同性の友人とふたりで歩いていても誤解されることも冷やかされることもほとんどないだろう。
そこに恋愛が存在していると誰も疑わないから。
勝手にそう思い込んでしまっていたから。




ここで会ったことにきっと意味があるんだ
偶然はいつでも何かの答え教えてくれる

ここの歌詞がすごく好き。
そう、そうなんだよ、、ってうっすい感想しか出てこなくて悔しい。



このまま付き合っちゃってもいいよね?に頷いてくれるそんな未来があったら良いな。


偶然出会ったふたりは運命だし、こうなるのは必然だったんだと思う。
ここでさっきの歌詞の「ここで会ったことにきっと意味があるんだ 偶然はいつでも何かの答え教えてくれる」に繋がったらアツい。



何回聴いても良い曲だし何回観ても良いMVで最高。

先にMVを見入ってしまったから、この曲がMVのふたりのその後を歌っていたら良いななんて思っちゃった話。



偶然の答え良い曲だな~~~。
このタイミングで偶然この曲を知ったのもきっと何か意味があるのかな、なんて思っちゃうね。

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