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第36話『みんなで登ろう風吹山!ハイキングだぜオセロッチ!』

      ☆白黒★オセロッチ!


【前回までのお話】
シシ丸、ミジンコ、キウイちゃん、ナルキ、ユメちゃんというクラスの友達メンバーと、風吹山の頂上を目指すオセロッチ!
さあ、ついにハイキングがはじまるぞー!


前回

第36話『みんなで登ろう風吹山!ハイキングだぜオセロッチ!』



「疲れたでやんすー!!もう一歩も歩けないでやんす!!」
風吹山登山道5合目までたどり着き、ミジンコが音を上げた。


「僕ももうダメだ・・・」
元々体力に自信がなかったオセロッチもこのへんがやっとという感じ。

「あたしも・・・」
ユメちゃんもだ。



「ったく!コレだからチビはダメなんだよ!」
シシ丸が吐き捨てるように言った。
さすがはガキ大将。これくらいではなんともなさそうだ。


「そんな言い方ないでしょ!」
少年少女バレーボールクラブのレギュラーでもあるキウイちゃんはまだまだ余裕そうだ。

「そろそろ休憩にしませんか?もう5合目まで来たし」
ナルキも涼しい顔で汗一つかいていない。



「そうだね!ここでお昼ごはんにしようか。」

誰よりも大きなザックを背負っていたサカツカさんがそのザックをドスンとおろした。

「やったー!!オイラお腹ペコペコでやんすー!!」

途端に元気になって駆けてくるミジンコ。

「てめぇ!元気あんじゃねえかよ!!」

シシ丸がゲンコツを振り上げる。


どはははは。とみんなにウケた。



5合目には休憩するためのテーブルと椅子があるスペースがある。そこでみんなでお昼ごはんだ。

今日のお昼はみんなが家から持ってきたお弁当だ。

「すごーい!キウイちゃんのお弁当、キャラ弁だー!!」

「ほんとでやんす!!すっげー!」

キウイちゃんのお弁当は、薄焼き卵や海苔、ハム、肉そぼろなどを上手く使い、アニメのキャラクターが描かれていた。


「ガハハ(笑)キウイのかーちゃん料理うめえんだな。」
水筒のお茶を飲みながら、シシ丸は感心している。

「えへへ。コレ実は作ったのお父さんなんだ!」

「「「ええ〜〜〜っ!!!」」」

みんなが驚嘆するなか、シシ丸だけ表情が曇った。

「いやぁ‥…驚いたなぁ。キウイくんのお父さんは器用なんだな。」

さすがのナルキも驚いている。

「うちの父ちゃんには絶対に無理でやんす!!」

「お父さんの趣味が料理なんだよ!なんでも作れちゃうんだー!!」

「いいなあー!料理できるお父さんってカッコいいね!」

ユメちゃんのお父さんが台所に立つことはない。

「そうかなー!?作り過ぎて大変な時もあるけどね(笑)」
キウイちゃんは照れくさくなって後頭部をポリンと掻いた。

「あははっ!」
オセロッチは屈託なく笑っている。



が、そこへ



「もういいか?お前の自慢話はよ。」

シシ丸がブスッとした表情で言った。


「まーたはじまったでやんす…。アニキぃ、いいかげんにしてくれでやんすよ…」

ミジンコは呆れた顔でシシ丸の方を見る。


シシ丸がペッと地面に唾を吐き捨てた。

「いいよな、父ちゃんがいる奴は。」

シシ丸の声は震えて、目には涙を浮かべている。


キウイちゃんは戸惑っている。

「ご、ごめん!あたし、そんなつもりは…」

「そうだよ!キウイちゃんは別に悪気があったわけじゃないじゃん!」
ユメちゃんは立ち上がってキウイちゃんを守ろうとする。


「なんでい!なんでい!お前らよってたかって俺を悪者扱いしやがって!!父ちゃんがいる奴同士で、父ちゃんの話ずっとしてればいいだろうがっ!!!」

シシ丸は水筒を地面に叩きつけた。
しかしTHERMOS製の水筒なので傷一つつかない。


シシ丸の目からは涙が止めどなく流れている。

「やってらんねえよッ!!やめだ!こんなキャンプなんか!!!」

シシ丸は登山道とは違う方向に走り出した。

「あ、シシ丸!」

サカツカさんがあわてて追いかけようとした。

「待ってくださいサカツカさん、僕がいきます。」

言うよりも早く、オセロッチがシシ丸の後を追った。

走り去るオセロッチの背中を、サカツカさんをはじめみんなが心細げに見送っていた。




残されたみんなの間に、なんとも気まずい空気が流れる。


「ったく。せっかくの飯がアニキせいで不味くなったでやんすよ!」
ふてくされて弁当を掻き込むミジンコ。

「そっか、シシ丸のお父さんて・・・。あたし、無神経だったかも・・・」

「いや、キウイくんは悪くないよ。」

「アニキの奴、父ちゃんガラミの話になるといつもコレだからなぁ〜。正直めんどくさい奴でやんす〜。」

「そんなこと言わないほうがいいよ。シシ丸はつらいんだから。」
そうは言いながらも、困ったことになったなぁとユメちゃんは思っていた。

オセロッチの奴、だいじょうぶかな?







オセロッチは疲れた体で追いかけた。

シシ丸は低い木の根っこに三角座りをして顔を膝小僧にこすりつけて泣いていた。



「なんだよ、オセロッチかよ。」
オセロッチの存在に気づき、身構えるシシ丸。


「シシ丸・・・、クールになれよ。キウイちゃんは別に君へのあてつけでお父さんの話をしたわけじゃないだろ?」

シシ丸の隣にオセロッチは腰をおろした。


「わかってるよ、わかってっけどよぉ…、なんか自慢みたいに聞こえてよぉ…くやしくなってくんだよ…なんでみんなには父ちゃんがいて、俺にはいねえんだよって……、」

シシ丸の鼻から鼻水がズビズビと出てきた。

「なんで死んじまったんだよおおおおっ・・・(泣)うおおおおおおい(泣)うおおおおおおい(泣)」

獣の咆哮のような泣き声。

オセロッチの小さな肩に抱きついて泣くシシ丸
オセロッチは優しくシシ丸の背中をポンポンしてあげた。

「うおおおおおおい(泣)、うおおおおおおい(泣)」

シシ丸は嗚咽しながら、大声で泣いた。



10分ぐらい、シシ丸はそのままオイオイと泣いていたが、
次第に涙が枯れてきた。



「ぐすんっ、すまねえオセロッチ・・・ダセェとこ見せちまって・・・。」


思いっ切り泣いて、いくぶんかスッキリしたシシ丸。


「いいさ。それより、今日はみんなでキャンプしに来たんだろ?楽しい思い出を作りに来たんだよな。」

「ああ。けど、台無しにしちまったよ…」

シシ丸は情けなくて後頭部をポリーっと掻いた。

「そんなことないさ、今からなら間に合うよ。きっとこれもいい思い出になるさ。」

オセロッチはニカッと笑ってみせた。







「あ、戻ってきた。」

みんなはこのまま下山しようかという話をしていたところだった。

シシ丸が戻ってくるのを見つけたキウイちゃんはすっくと立ち上がってシシ丸に駆け寄った。

「あ、あの、シシ丸…あたしったら無神経で…」

シシ丸が手でキウイちゃんの言葉を制した。

「いいんだ、キウイ。俺が悪かったぜ。みんなも空気悪くしちまってごめんな!」

シシ丸はみんなに向かってイガグリ頭を下げた。

「いつものことでやんすー(笑)」

ミジンコが手を後頭部で組んで茶化してくれた。

「なんだとー(笑)」

シシ丸はいつもの要領で怒ったフリをした。


どははは。

みんなの間に、ようやく安堵の空気が流れた。


「なあ、キウイ。お前の父ちゃんが作った弁当、ちょっと食べさせてくれよ!代わりに俺の母ちゃんが作った弁当食っていいからさ!」

「いいよ!おかず交換しよ!」

「いいなー!僕のも交換してくれよ!」

ナルキが手に持っている弁当箱にはキャビアやフォアグラが詰まっている。

「うわー!オイラもナルキの高級弁当食べてみたいでやんす!」

さっきよりも、もっと楽しい空気が流れはじめた。

ユメちゃんはオセロッチに目配せして、

「(やるじゃん!オセロッチ!)」

と、目で言った。

「(ヘヘッ!まあね!!)」

さあ、まだ登山は序の口だ!ここからがもっとキツいぞー!


(つづく)








☆白黒★オセロッチ! 次回 第37話『禁断の男子トークだオセロッチ!!サマーキャンプの夜は更けて・・・』


☆白黒★オセロッチ! 第1話はコチラから




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