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仕方がないから苺をのせる 〈田園 #9〉
自己完結しながら並走する。言葉の雑踏のなかで無言を交わす。目が合う、息が合う、歩調が合うのはほんの束の間で、往々にして田圃は脇腹の痛みに打ちのめされるのだった。それでも探し続け、とうとう探しあてたときには既に実体が言葉を追い抜いていた。かけがえなさが顕になるばかりだった。変わろうと努めて変わったはずが、なにひとつ変わっていなかった。
幾度も繰り返していると、基線がどこにあるのか、一貫して求めているものが何なのか痛いほど自覚された。たった一言に何層もの時間と躊躇が堆積した。そして一言のほとんどが、思いの土に還って行った。腐敗と言ったほうがいいかもしれない。おそらく器用になったのであろう。田圃は結論した。
「往生際はまだみつからない。方位磁針に干渉したところで指先を傷めるだけ。それと同じことだ。過剰な自己内対話は抑圧に傾きがちで、隠匿された自我ほど強烈に無意識に干渉する」
正しくはないが、ただ間違ってもいなかった。ようやく冬が思い出になったというのに、懲りもせず再び冬が巡ってくる。冬がミルフィユのごとく重なってゆく。仕方がないから苺をのせる。田圃は結論した。
「さてどこから食べよう」
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