おこるお坊さん

ある昼下がり

お坊さんOさんと、トムという外国人修行者がさわいでいた。

参道から大広間に上がる階段に、猫が嘔吐し、それを片付けるために、トムがバケツ一杯の水で流したのだが、そのことにOさんが怒っているようだ。

靴を脱いであがる階段のため、これでは今からお客さんが来るまでに乾かないじゃないか、と言うのだ。

たしかに木の階段に染み込んだ水分は、拭くだけでは渇かなそうだ。

トムはとても温厚な人なので、Oさんに「どーすんだよーもう!これー!」と怒鳴られてもヘラヘラしているが、それがまたOさんのイライラに火をつけている。

「だからさ、今からお客が来んだって!わかる?!お客!」と声は更に大きくなるが、トムに日本語はあまり通じない。

らちのあかないやり取りが続いているので、私はとりあえず雑巾で拭いてみる。

とにかく、出来ることをしてみてはどうでしょうと、動いてみたが、効果はなし。

三人で立ちすくんでいると、方丈さまが出てこられて、どうしましたかと聞いて下さるので、あーでこーで、と説明し、それじゃぁこちらの玄関から入ってもらうようにしましょうと、あっという間に解決した。

お寺はいつもの静けさに戻った。

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