日本初! 美容で有名なアノ成分を使った乾き目市販薬がついに発売

市販薬で今年いちばんのビッグニュースがやってきた。美容で有名なある成分を使った目薬が、日本初の市販薬として発売。<ヒアレインS>という乾き目改善用の目薬だ。

今まで目の不快感にいろいろな市販の目薬を試してみても、その効き目に満足できなかった人は少なくないだろう。

「今度は別の目薬を試してみよう」。そう思いながら目薬の棚の前で、彩り豊かな目薬を見定めるのは、ドラッグストアでよく見る光景だ。そんな目薬選びに悩む方に新たな選択肢となる目薬ヒアレインSが9月16日に発売した。

ヒアレインSは日本で初めてヒアルロン酸を成分とした市販の目薬。厚労省が発売の可否を審査した際の資料によれば、この成分の市販の目薬が売られているのは世界でも日本だけらしい。まぢすか。そんな市販薬はそうそうない。

ヒアルロン酸といえば、肌の美容分野ではおなじみでの成分で、その成分が目薬として使われることは、ちょっと不思議な話ではあるが、実はヒアルロン酸を使った目薬の歴史は長い。日本では1995年に医療用医薬品として発売され、<ヒアレイン>の名で目の強い乾燥に悩む患者さんたちに処方されてきた。乾き目といえばヒアレインと言っていいほど、眼科では圧倒的知名度を誇る薬だ。

そのヒアレインが、同じ成分のまま市販薬として発売したのがヒアレインSだ。病院用のヒアレインには0.1%と0.3%があり、一般的には0.1%が処方される。そして今回市販薬として発売されたのは0.1%の方なので、成分濃度の点でも問題なく医療用と同じ商品だといえる。

さて、ほかの市販の目薬と比べた場合のヒアレインSの特徴を一言でいえば、目の乾きに特化している点だろう。

目の乾きは「植木の鉢」に似ている。土の水が足りなくなる。木に水分が行かずに花がしおれる。これが乾き目の症状だ。

花を生き返らせる一番簡単な方法は、土に水を与えることだ。一番よく知られた水やり薬は<ソフトサンティア>という目薬だ。大手ドラッグストアであれば必ず置いてあるほど有名なソフトサンティアは<人工涙液>とも呼ばれている薬で、その中身は涙ソックリの成分で作られた人工の涙。この目薬をさせば、目は潤い、不快感は和らぐ。それは、ちょうど鉢植えに水をさすことで植物が生き返るのに似ている。

ところがソフトサンティアには効き目が短いという大きな欠点がある。目にさした直後は効果を実感できても、土があっという間に乾いてしまうように、すぐに目が乾燥状態に戻ってしまうのだ。そのため、乾きが強い人は一日の使用限度を超えて繰り返し使う誘惑にかられるわけだが、実はこれは危険で、人工涙液は頻繁にさしすぎると涙の成分をかき乱して乾燥が悪化しかねないので要注意なのだ

そこで乾き目対策の市販薬には、目の潤い感を持続させるために人工涙液の効果を強化する成分を添加した商品や、乾き目による不快感そのものを抑える成分を使ったりする商品がある。

たとえば2002年から発売している古参の<サンテドライケア>は保水成分としてコンドロイチンを含んでいる。しかしコンドロイチンの保水効果だけでは頼りないのだろう、この目薬には目の細胞の代謝を促すアミノ酸なども一緒に入っている。乾き目の人は目の疲れも抱えていることが多いので、目に栄養を与えることで乾き目からくる不快感も抑えようという狙いだ。

近年は水分をできるだけ目に留まらせる薬が目立つ。2013年に発売した<ロートドライエイドEX>は、目薬の粘度が60倍になる添加物や角膜を守る成分を入れたことで涙の蒸発を抑え、うるおい感を持続させた。2019年に発売した<Vロートドライアイプレミアム>では、涙の成分だけではなく、ごま油などを加えて瞳全体を長く保護する工夫を施した(ビタミンA製剤目薬について触れたいところだが話がややこしくなるのでnoteでは割愛する)。

このように知恵を絞って乾き目対策の薬を開発してきたわけだが、ここにきてキラ星如く登場したのがヒアレインSである。

ヒアレインSには水分を保つ作用や、涙を壊れにくくする作用など、ソフトサンティア以上の効果が備わっていることがわかっている。実際にソフトサンティアのような一時的な”水やり”よりも、乾き目の改善効果は高いというデータがある。

ソフトサンティアとヒアレインSの違いを絵にするとこうだ。

ヒアレインS

なにせ病院で処方されてきた実績のある薬だ。メーカーが販売店に支給する販売用具も、モニター付きであったりと非常に力が入っている。

ただし、ヒアレインSの注意点としては、すでに眼科でドライアイの診断を受けている人は購入できない。その理由は、ドライアイの治療は医師の管理の下で行われるべきだと考えられているからだ。ドライアイという医学的診断にはいくつかの条件がある。ヒアレインSは、<ドライアイかもしれない><ドライアイではなさそうだけど目の不快感がある>という、いわゆる”ドライアイ診断未満の人”のための商品だ。

ヒアレインSは要指導医薬品という特殊な薬でもある。薬剤師による安全確認と説明を経なければ購入はできない。代理購入もできず、ネット購入もできない。一度に購入できる数も1箱までだ。1箱で約2週間分、価格は税抜き1580円なので、かなりの高額品。

乾き目症状の世界は奥が深い。目とは直接関係のない病気が原因で乾き目になることもある。乾き目にはどんな原因が考えられるのか、どんな薬があるのか、生活習慣で気をつけることはなにか、すでに使っている目薬があるならば一緒に使う場合の順番はどうすればいいのか・・・などなど、気になることは薬剤師に質問すればいいし、おそらくヒアレインS購入時には薬剤師からも質問があるだろう。普段から目にトラブルを抱えている人には、薬剤師に相談する良い機会だ。

「ヒアレインSという薬を買おうか迷っているんですけど・・・」

と声をかけてみるといい。ひょっとしたら、

「ソフトサンティアと比べてすごく効果が高いというわけではないと思います。おまけにソフトサンティアよりもずっと値段が高いので、あんまりオススメしませんよ」

なんて、意表をついて返す薬剤師もいるかもしれない。その場合は「どうしてそう思われるんですか?」と聞いてみたら、そこから薬剤師との新しい出会いが始まる・・・かもしれない?


文章の出典や書ききれなかった情報は資格者向けにブログ「ドラッグストアとジャーナリズム」に書きましたので、よろしければそちらもご覧ください。

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