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陰キャが感じる福岡という街の魅力

このブログは一応セミリタイアがテーマなのですが、最近それらしいことをまったく書いていなかったので、たまには少しテーマに寄せて何か書いてみたいと思います。

リタイアを考えている人にとって、リタイア後にどこに住むかは最大の問題の一つです。

住む場所が日々の満足度を決めると言っても過言ではなく、移住先を検討するにあたっては入念なリサーチが必要です。

ご多分にもれず、私も以前からどこか良いところはないものかと思案していたのですが、少し前から福岡に注目するようになりました。

福岡は全国的にも住みやすい地方都市として知られていますが、移住先としても非常に人気があり、地方移住を考えたことのある人なら誰しも一度は候補として挙げるぐらい鉄板の街と言えるかもしれません。

ネット上にも福岡への移住体験記や街の魅力を伝えるブログ記事、Youtube動画などが数多くあります。

福岡はお祭りや屋台の文化など明るいイメージがあり、これまで正真正銘の陰キャである私にはあまり縁のない場所と思っていたのですが、少し調べてみたところ、陰キャにとっても非常に魅力あふれる街ではないかということを思うようになりました。

そこで今回は陰キャ目線で感じる福岡の魅力について書いてみたいと思います。

都会と自然が調和したコンパクトシティ

東京で暮らしていてよく思うのは、どこに行っても人が多く、あまりぼけーっとしていられるような場所がないということです。

陰キャはたまに自然豊かで静かな落ち着いた場所で空想にふけりたいと思ったりするわけですが、なかなかそういう場所が見つからないのです(場所を間違えるとおまわりさんに職務質問されてしまいます)。

その点福岡は街にいながらにして、豊かな自然に触れることができます。

中心部は人も多いですが、それでも東京都市圏ほどではありません。

(10月に一度現地調査に行ったのですが、よどんだ陰キャの心も洗われるようでした…)

そんなに自然が好きなら誰もいない山奥にでもこもっていればいいじゃないかと言われそうですが、陰キャも時には刺激を必要とします。

精神科医のウォルディンガー先生は、ローカルでリアルな人間関係を大事にしなさいと言っていますが、陰キャはたいていの場合マイノリティなので、ある程度の規模の都市でないと志を同じくする陰キャが見つからないということもあります。

また以前から個人的にBOBOSと呼ばれる人々のライフスタイルや、彼らが住むラテ・タウン(※1)と言われる街に興味を持っていたのですが、都市機能が集約され、市街地から海にも山にも行こうと思えばすぐに行けるコンパクトな福岡にはラテタウンに近いものを感じます。

 ラテ・タウンの特徴は、ボボたちが勤めるニュー・エコノミー系の企業が集中しているだけでなく、彼らが仕事を離れてくつろげる設備や自然も集中している点にある。理想のラテ・タウンは、先端企業が集中し、ちょっと行けばロッキー(大自然)とマンハッタン(不夜城)が同時に存在するような場所である。すべてが手近に揃っているから、一日潰してスキーに出掛ける必要がなく、貴重な時間を節約できる。
 つまり、ボボたちは高度管理社会で出現した「オーガニゼーション・マン」のように勤務先の企業にだけ意識を集中して生きることを拒否し、その企業が存在するコミュニティのほうを重視するのである。コミュニティの基本は、都心部から車を締め出し、歩行者や自転車優先に切り替え、くつろいで楽しめる店舗街を創出することにある。

『アメリカ新上流階級 ボボズ―ニューリッチたちの優雅な生き方』 / デイビット・ブルックス 著

移住者が多く開放的な街の雰囲気

福岡市は転入率が高く、人の入れ替わりの多い街です。

にわかには信じがたいが福岡市民約160万人のうち、80万人近くが「福岡市に住んで10年未満」である。つまり、福岡市外から引っ越してきて10年未満の人が半分近く住んでいるのがこの街である。

https://fukuoka-leapup.jp/city/202004.36

住民の気質も開放的で、よそ者にやさしい街としても知られていますが、福岡は全国で最も起業率の高いスタートアップ都市としても有名です。

http://facts.city.fukuoka.lg.jp/data/business-opening/

そのような気風はビッグファイブの地域特性にも表れているようです。

https://t.co/nXaOXYPQ0I

こういった開放的な地域性は、古くからの港町という歴史的背景とも関係していると言われているようですが、移住者の多い街の特徴でもある気がします。

自殺率が極めて低い地域として調査が行われた徳島県旧海部町には、個性や多様性を尊重するリベラルな気風があることが知られていますが、海部町もまた江戸時代に入植がすすんだ移住者の街です。

 海部町の人々はまず、コミュニティ内の多様性を好む。他人の自由も積極的に支持するかわりに、自分の判断にも他人と足並みを揃えることをしない。日本社会によくある同調圧力がきわめて低いのだ。人間を信頼するスタンスがあり、ローカルな土地にもかかわらず余所者に対する排他性も低い。

 岡さんは、徳島県南端の小さな町がこのような非常にリベラルで近代的な気風を保ってきた背景に、その歴史を挙げている。江戸時代初期、材木の集積地として隆盛した同地には、一攫千金を夢見て各所から裸一貫の移住者が集まってきたのだという。
 その結果、海部町では出自や家柄にこだわることもなく、フラットな関係性のなかで互いが異質な他者を尊重しながら支え合う、きわめて特殊なコミュニティが形成されてきた。

https://www.d3b.jp/npcolumn/5103

トロント大学の社会学者リチャード・フロリダは、自分と似た性格の地域に住むことを勧めています。

 ここで重要なのは、地域にも人間のような性格がはっきりと存在することである。自分と反対のものが魅力的に見えたり、意外な組み合わせが成功に結びついたりすることも多々あるが、多くの人がより幸福感と満足感を得られるのは、やはり各自の性格に合った地域で暮らすことだ。

はたして自分と同じ性格の人が高度に集中する場所のほうが、より幸せを感じるものだろうか。答えは間違いなく「イエス」である。

『クリエイティブ都市論』 / リチャード・フロリダ 著

華やかで活気のある福岡は陰キャには合わないんじゃないの?と思われるかもしれませんが、苦手意識があるのはどちらかと言うと閉鎖的、排他的なムラ社会的空気感です。

もともと陰キャが上京したのも、なんというか精神的に洗練されたスマートさみたいなものを求めてのことだった気がしますが、たまに東京も結局無数のムラ社会の集合体でしかないのではと感じたりすることがあります。

みんな違ってみんないい、開放的でリベラルな空気に陰キャは自分もここに居ていいんだ🥺という安心感を感じます。

先のビッグファイブはあくまで質問紙法(自己評価)なので主観的な要素が大きいですが、相性や適性を考えるうえでの参考の一つにはなるのではないかと思います。

ちなみにアメリカの地域性はこんな感じみたいです(福岡市はアメリカ西海岸のシアトルやポートランド(※2)を参考に街づくりをしているようです)。

優秀なリーダー(を選出できる市民)

人口増加率や地価上昇率などで全国トップを走る福岡市は、今日本で一番ホットな都市と言えるかもしれませんが、躍進を続けるその最大の要因は、やはり優秀なリーダー、市長の存在ではないかと思います。

現職の高島市長は2010年に市長として史上最年少で当選し、その後2014年の市長選挙では史上最多得票で再選、現在は3期目の任期を務めています。

その圧倒的な支持の背景にあるのはおそらく、市長の優れた都市戦略とリーダーシップ、政策実行力です。

日本の市長として初めてスイスの世界経済フォーラム、ダボス会議に招待されるなど、一市町村の首長としては例外的に国際意識が高く、グローバルな視点で自身の立ち位置を俯瞰することで都市として進むべき道が見えてくると言います。

「世界の中の日本」や「世界の中の福岡市」という位置づけを俯瞰して捉え直すことで、自分の物事の捉え方の座標軸を補正することができるのです。

 先をみることができるようになると、地方の限られたリソースや自分のポリティカルキャピタルをどこに傾斜配分すべきかが見えてきます。足りないものだらけの地方にとって、あれもこれも全部ではなく、選択と集中により限られた資源を最大限にとがらせることはとても大切なことなのです。

『福岡市を経営する』/ 高島宗一郎 著

また就任直後から限られた予算や制約の中で公共Wi-Fiの整備や国際会議の誘致、公共施設のリニューアルなどをすすめ、グローバル創業特区への指定、災害時のシームレスな支援、博多駅前陥没事故での最速の復旧、全国に先駆けたハンコレス・DX(デジタル)化など、着実に実績を積み上げてきています。

真のリーダーがおさまるべきところにおさまると、社会は大きく変わるという数少ない実例を見せつけられているような気もしてきます。

一方で市長も指摘する通り、保守層が圧倒的に多い日本において若くイノベーティブな新人候補が選ばれたのは、それだけ市民からの高い支持があったからです。

 私自身、他都市の方からイノベーティブな市長だから街もイノベーティブですね」と言われることがあります。しかし正確に言えば、それは「真逆」です。
 私ではなく、36歳のキャスターだった私を市長に選んだ福岡市民のほうが相当イノベーティブなのです。
 当時の選択肢としては、現職の市長も、元教育長の女性も、他都市の市長経験者もいました。その中でわざわざ若くて行政経験もない私を市民が選んだということは、福岡市民はこれまでの連続性より、飛躍した「変化」を求めていたのだと思います。
 いちばんのイノベーターは福岡市民なのです。

快適なまちづくりを積極的に進めるリーダーシップと、市民リテラシーの高い地域性には陰キャも好感を覚えます。




以上はあくまで外から見た時の印象なので、実際に住んでみるとまた違った景色が見えてくるようになるのかもしれません。

ただ現時点ではいろんな観点からみて、陰キャにとっても非常に住みやすい地域ではないかと感じています。

早ければ来年の春頃にでも一度お試しで移住してみたいと思っていますが、今後も引き続き調査を続けていきたいと思います。


※1:街中にバーよりもコーヒーハウスが多いことに由来し、アメリカのボールダー(コロラド)、オースティン(テキサス)、サンフランシスコのベイエリア、ボストンなどがその典型とされているようです。

※2:


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