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形の良し悪し -2

「形の良し悪し -2」では、内閣府の男女共同参画局から太田がデザイン補正を依頼された男女共同参画シンボルマーク、並びに東京都世田谷区から太田にデザインを依頼された世田谷百景のシンボルマークが、どちらも女性の表情をデザインしているので、ブログを見る人の心象風景が和らぐのではないかと思って取り上げます。説明文は短いので、2つを一緒にご覧いただきます。

「女性に対する暴力根絶」シンボルマーク(デザイン 太田幸夫)

女性に対する暴力根絶のためのシンボルマークでは、夫やパートナーからの暴力、性犯罪、売買春、セクシュアル・ハラスメント、ストーカー行為など、女性に対する暴力根絶のためのシンボルマークです。2010年に一般から応募された多数のアイディアから、愛知県の鶴岡朗氏と東京都の彦根正氏の入選作品を基に、太田幸夫がデザイン補正しました。その契機を与えてくれたのが太田の大学での教え子の鈴木和子様とその後、昭和女子大学理事長・総長になられた坂東眞理子様です。顔の前で両腕を組んで「こうすればいいのだよ」と示されたポーズをそのまま使いました。

仕上げの形に至るまでの下書きのスケッチ2点も、添付しておきます。どちらも坂東アドバイスに適合してはいるけど、髪の毛が役立っていなかったり、顔の輪郭が邪魔して遊んでいる。暴力拒絶の×印を顔の下で組めば、顔のアウトラインが無用となる。髪型自体も怒りを表現した方が良いと考えて、逆立つ髪型を採用し、濃淡のトーン(階調)も腕組みと区別しました。顔と髪の毛は黒70%、腕は黒100%です。女性の表情、握りしめた拳、クロスさせた腕により、女性に対する暴力を断固拒絶する強い意志を表現できたと考えています。

「世田谷百景」シンボルマーク(デザイン 太田幸夫)

世田谷百景では、永年世田谷区にお住まいの方々から、ご覧になった印象など残っていれば、ひとこと書き送っていただければありがたい。デザインは2009年に仕上げたと思います。世田谷区民が心に残る心象風景100箇所を選んで、太田が表示面をデザインした「用賀いらか道の案内サイン」のマップなどにそのマークを表示して、場所が分かるようにしました。

世田谷百景のシンボルマークは、世田谷区民がこころで看取った素敵な景観または心に残った素敵な100の風景を、区民共有の心象風景として掬(すく)い上げ、地元の価値を共に評価できる手がかりとして顕在化させたもの。

世田谷百景は、区民が自分で選定した世田谷区内の景色です。愛着と共感を集めている風景、歴史、風土、文化が感じられる風景、ユニークで個性的な風景など大切にしたい風景の価値を区民が共有し、発信していくまちづくりプロジェクトです。地域に対する愛着と誇りを区民一人ひとり育むことで景観が守られ受け継がれていく。世田谷百景のシンボルマークは、眼差しの「目」と「ハート」のふたつだけを組み合わせたデザインで、心に染み込む風景や地域への愛着のイメージを込めています。目を正面から描かないで、横描きにして、ハートは正面から描く。その2種類の描き方を一つにまとめておかしくないようにするのがハートのラインを瞳に至るまで伸ばした処方です。目を正面から描くと見ている人を見ている目になって、主語が景色や風景など、客体でなくなってしまいます。心と瞳の2つでなく、「こころの瞳」という1つの熟語(じゅくご)に見とれれば、目的を果たしているデザインだと言えるでしょう。

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