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特許査定(取得)をいただいたお話

こんばんは!
otayoriのトウカイリンです。
嬉しい出来事があり記事を書いています。
なんとこの度、特許が取得できました!!というご報告です。

お隣のアトリエのミズナさんがどんなアイテムかわかりやすい動画を撮ってくださいました!ありがとうございます!

こちらのアイテムは昨年12月に行われたジュエリーの展示会、「New Jewelry」にて初めてお披露目させていただきました。
宝石が自由に着脱できる仕組みのリングで、その名も「メデルースリング」
「愛でる」と「ルース(宝石)」をくっつけた造語です。

※ちなみに、ルースとは
「裸石」ともいい、ジュエリーに加工されていないそのままの宝石を指します!

そのメデルースリングを展示会直前に特許出願していたのですが、先日無事に特許査定(特許が取れた)というご連絡をいただきました
ご尽力いただいた弁理士さん、弁護士さんに本当に感謝の気持ちでいっぱいです!
本当にありがとうございます。



・どうして石が外せるリングを作ったのか

そもそも、どうしてルースが外せるリングを作ったのかという背景をお話しさせていただこうと思います。
一言でいうと、「リングに仕立てるのが惜しいくらい大好きなルースがあったから」がきっかけでした。

仕入れの際に出会った、1つのバイカラーサファイア。
紫のようなカラーとベージュのバイカラーで、線状のインクルージョンが入っている子でした。
私はこの子と出会った時に、
「早くリングにして身に付けたい!」という気持ちと
「このままルースにして眺めていたい」という相反する2つの気持ちが自分の中に生まれました。
というのも、ルースはジュエリーに仕立ててしまうと一部隠れてしまう部分がでてくるからです。
360度その石を楽しむためには、ルースのままコレクションしていないといけません。
ルースとして360度眺めたい、
でもリングとして身につけたい。

その想いは相反するものですが、私の中でひとつのアイデアが浮かびました。
「もしいつでもルースを取り外せるリングがあったら、どちらも叶う」
その思いつきが、メデルースリングを作り始めるきっかけでした。


・リングの課題

リングを開発していく中で、同じようなリングは無いかと調べました。
同じような用途のものは見つかったのですが、自分が目指しているものはなさそうだ、ということがわかりました。
目指していたものとは、以下の3つ。

①石が外れるように見えない、シンプルでスタイリッシュなデザイン
②ヒンジ(ロケットペンダントのような構造)や磁石、ネジ式ではない
③指にはめているときは、ルースは絶対に落ちない

これらが達成できれば、安全で、且つ格好いいものができると考えたからです。
例えばヒンジや磁石を使うと、身につけている際に引っ掛けて大切なルースが落ちてしまう可能性があります。
大切なルースを失くしてしまう。そんな悲しい出来事は、起こさないようにしないといけません。
「指にはめている時はルースが固定される、ということはスライド式かな…」
「あとは、縦構造か、横構造か…」
そんな風に考えながら、なんとなく頭の中にある仮説の構造を3Dソフトで作成すると、大まかな構造は問題なさそうでした。
「あれ、なんかできそう」
画面上に映る3Dのデータをくるくると回しながら、ワクワクしたことを覚えています。
私と同じようなもどかしさを感じている人たちに、このリングが役立てばいいなと思いました。

・それ、作ってどうするの?

ルースを取り外せるリングが実現可能そうだと分かってから、友人や家族にそのことを話してみました。
すると、予想外の言葉が返ってきました。
「石が外せるようになったら、何が良いの?」
「宝石は外れないほうがリングとして良いんじゃない?」
話した相手の頭の上には「?」が浮かんでいるようでした。
そんな様子をみて、これは私だけが欲しいリングなのかな、作ったとしても共感してくれる人っているのかな…
そんな風に不安を覚えました。
そうこうしているうちに、折角思いついたメデルースへの熱量が少しずつ落ち、
自分の中で優先度がどんどん下がっていってしまいました。


・「特許とったほうがいいですよ」

メデルースリングのデータを作ってからしばらく経って、ブランドやクライアントワークに追われていた頃。
今まで一人で作っていたブランドの一部商品や、クライアントワークの量産品は外注をお願いするようになっていました。
そこでお世話になっていた職人さんとランチへ行った時、なんとなくメデルースリングのことを思い出し、
「実は今後、こんなリングも作っていきたいと思っているんですよね」とお話しました。
少し説明しにくい構図は、スマホのメモ帳に手書きでふにゃふにゃの線で図面を書きながら説明します。
「それ、特許取った方がいいですよ」
「え、特許ですか」
突然の言葉に驚きながらも、"特許"というなんだか別世界のような言葉に惹かれていました。
そこでメデルースリングの今後の可能性について話し合うことができ、
ここで再び「やっぱりメデルースリングを作りたい!」と熱量が戻ってきました。

・サンプル第一号が完成するまで

その年の12月に、New Jewelryというジュエリーの合同展示会に出展が決まっていました。
メデルースのサンプルを展示会でお披露目すると決め、試作に取り組むことにしました。
メデルースリングは構造上、組み立てや仕上げが難しいアイテムだったため
データは私が作り、組み立てと仕上げはその職人さんにお願いすることにしました。
実際に組んでみると0.1mm単位の微妙な調整や組み方を試す必要があり、
何個も作ってはデータを作り直すというトライアンドエラーでした。
それと並行して特許のために弁理士さんと打ち合わせや資料のやりとりをする日々。
予定通りに試作が進まず「これ間に合うのかな」と思った時が何度もありましたが、
サンプルは上がってくる度どんどん完成度が上がっていきます。
「これでいきましょう!」
ついに最終サンプルが完成し、展示会に挑むこととなりました。


・初めていただくお客様の声

とても良いサンプルが出来上がったという満足感もあったものの、
以前の周りの反応のように誰も興味を示さなかったらどうしよう、という不安を持ちながら展示会当日を迎えました。
そんな不安をよそに、お客様の声はとても嬉しいものばかりでした。
「私ももったいなくて仕立てられない石を持っているんです」
「いつ発売になるんですか?」

やっぱりこのリングを開発してよかったんだ!とこのとき初めて感じることができました。
ルースとして眺めたいけど、リングとしても身につけたい。
この想いは自分だけではなかったんだなと、初めて仲間を見つけられた様な感覚になり、とても嬉しかったことを覚えています。


・やっといただけた特許査定

特許の出願は展示会の直前にしていたのですが、今年の4月に「拒絶理由通知」が特許庁から返ってきてしまいました。
拒絶理由通知とは、出願内容を特許庁が調べて、「ここはどういう意味ですか」「この部分、他の特許と似ていませんか?」
と、特許取得ができない理由が返ってくるものです。
このこと自体は、珍しいことではありません。
実は会社員時代に、他の内容で特許出願をさせてもらっていたことがあったので
拒絶理由通知はほとんどが返ってくることは知っており、想定内でした。
ただここからが勝負で、この通知にきちんと反論できなくてはならないので、
私は展示会でメデルースを気に留めてくださっていた弁護士の新田先生(@JewelryLaw)に、ご相談することにしました。
というのも、特許関連の書類を作成してくださるのは弁護士さんではなく弁理士さんですが、
弁護士さんは法律上弁理士業務もできるようで、且つジュエリーの知識をお持ちの新田先生にご相談できれば心強いと感じたからです。
特許関連の文章は本当に日本語が難しく、構造をほとんど言葉だけで説明している上に特許でしか使わない言葉もあります。
そのため、実は特許出願時は弁理士さんにお任せして、私自身はそこまで内容を理解できないまま提出をしていました。

新田先生にその旨をご相談すると快く引き受けてくださり、書類の通訳をしてくださったり、理解するためのアドバイスをくださいました。
こうして新田先生と弁理士さんと3人でミーティングを重ねながら意見書を作成し、返ってきのは「特許査定(特許取得)」。
本当に嬉しく、長い挑戦の日々が報われたような想いでした。

・価格設定とご提供できる価値

やっと特許査定をいただけた、唯一無二のリング。
私はこれを、石が好きなみなさんを幸せにするために、「みんなが嬉しい仕組み」でお届けしたいと強く思っています。
「みんなが嬉しい仕組み」とは…それをご説明する前に、販売価格のことをお話させていただきます。

よくご質問をいただく、現段階での販売価格を申し上げると、基本料金で8万円〜となります。
(ルースの持ち込み+シルバーのお素材のお作りで8万円〜。
追加料金で、K10、18などの地金や腕にダイヤのメレ留めなど、カスタムができます!)
こちらの価格は決してお安い価格ではないと思います。
では何故この価格にしているかというと、
さっき申し上げた「みんなが嬉しいという仕組み」を作りたい、と思ったためです。
といいますのも、価格を安くするというのは誰かが辛い思いをするような 仕組みになっているからです。
例えば安くする場合、作業工程を減らしたり、制作をお願いする職人さんたちに安い工賃でお願いしないといけません。
ここでまず職人さんたちが嬉しくありませんよね。
そしてその工賃で仕上げなくてはならないので、リングの仕上がりも変わってきます。
これはお客さまも嬉しくないはず。負の連鎖です。

そこで、価格を思い切って上げたら、どうなるかを考えました。
通常より高い工賃をかけられると、腕の良い職人さんにお願いでしますし、職人さんたちもメデルースリングに時間をかけられます。
するとより良い仕上がりでお客様のもとにリングが届きます。
石が好きなみなさんは、ルーペを常備していたりするほど、石とジュエリーに詳しく沢山の美しい石やジュエリーを見てこられていると思っています。
そんな方々にもご満足いただける最高のリングをお届けしたい。
これが一番「みんなが嬉しい仕組み」になるのではないかと、考えています。

・メデルースリングの進捗と、これから

大変ありがたいことに、メデルースの動画を公開してから驚くほどの反響をいただきました。
ここ数日でメデルースを知ってくださった方々にリングを実際にご覧いただきたく、オープンアトリエを9月に予定しております。(日程未定)
メデルースは、石が大好きな皆さまからのお声をいただくことで育っていくリングだと考えています。
「こういうのが欲しい」「こういうのはできる?」など、ご意見大歓迎です!
お手持ちのお気に入りのルースを持って、お越しいただけますと幸いです!

最新情報は公式LINEにて配信させていただいております。
ご登録頂けますと、大変嬉しく存じます。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
otayoriのトウカイリンでした。


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