見出し画像

(第2回)シダレザクラと私と

シダレザクラ(枝垂桜)は子供の頃、自分の身近にはきっとなかったんじゃないかな?
大人になってから地元の宝光寺に古木があるのを知りましたが、ソメイヨシノも枝垂れるので、最初はそんな感じの木なの?と勝手に思ってました。

そういう種類があるんだってちゃんと知ったのは、大学生の頃。
当時アルバイトで続けてた塾講師の仕事終わり、同僚の先生達と連れ立って通った小洒落たカフェバーがあったんですが、たまたま一人で伺った際、そこの店長ママさんから、「京都の春はいいよ、シダレザクラって柳の枝のように花が咲くんだから」って、カウンター越しに何気に聞かされたのが一番初めだったように思います。

その後新卒で就職し、社会人生活にも慣れてきた矢先、異動の事例が下りました。北陸のとある田舎町での工場勤務です。案の定、最初の頃は戸惑うことばかりで、なかなか馴染めませんでした。
都会の喧騒と古都千年の歴史を感じる為、私は週末になるたび足繁く京都に出かけてました。だって特急に乗っちゃえばね、1時間ほどの距離なんだから。

丸山公園や知恩院付近のシダレザクラと初めて対面したのは、やや小雨の混じる春先だったかなぁって記憶してます。
鳳(おおとり)が優雅に羽を広げたようで、ただただ凄いなぁって近づいて雨空の中で見上げると、一つ一つの小さな花びらがやや雫含みでなんとも穏やか。ソメイヨシノと異なる佇まい、そして繊細さに、「京都の春はいいよ」って学生の頃言われたのを、心の中であらためて噛みしめてました。

本当、いいですよね。

今では人気スポットとして有名になった原谷苑も、その当時、実は一度だけ訪問したことあるんです(えっへん)。

元々は京都の山奥にある常照皇寺に九重桜(一重と八重の桜が咲くことから。こちらも観光バスが向かうくらいの名所です)の花見に、同じ社員寮だった友人と出かけたんですが、たまたまお寺に原谷苑の案内チラシも置いてあって、もう一か所回ろうかって二人で足を伸ばしたんです。

金閣寺の近くだったんですが、ヤエベニシダレ(八重紅枝垂)がちょうど盛り。薄紅色に染まる小さな花びらも、なんとも愛しい限り。
そして、そのちょうど真下に置かれた縁台に腰掛けながら頂いた鯖寿司も、とても美味しかった!(笑)。

それからもうかれこれ30年近く経ってしまい、すっかり昔話になってしまいました。今は一体どんなになってるんでしょう? 原谷苑のシダレザクラも、全然会ってない私の友人も。

常照皇寺の門前桜

(つづく)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?