インドア夫婦外に出る

共通の趣味をもとうと思い立ち、どちらも幼い頃に度々家族と行っていたキャンプを趣味にすることに決めた。趣味を決めたというのも可笑しな話だが、思い立って始めるためには道具を買い揃えなければならないのだから決心が必要だ。給付金を注ぎ込んで、アウトドアショップを巡った。一カ月ほどかけて、こつこつど道具を買い揃え、レンタカーを借り、わくわくしながらキャンプ場へと向かった。

前日に、テントの建て方なる動画を見て、ふむふむこうやるのかとわかった気になっていたものの、実際に建ててみると、インナーテントがかからないと慌てふためいたり、自在ロープとは何ぞやと頭を悩ませたりしてしまった。結局、フライシートの逆側に無理やりインナーテントをかけようとしていたと気づいたし、自在ロープは使わなくても快適に過ごすことができた。2人でせっせとテントを建てて、ちょっと奮発したチェアを出して座ると、それだけで贅沢な気持ちになった。

夫は新品ぴかぴかの焚き火台で火をつけ始めた。私はスクリーンをしっかり締めて、テントの中からそれを眺めた。虫に刺されるのも日に焼けるのも嫌だからだ。文明の利器ガスコンロでお湯を沸かし、ドリップしたコーヒを飲んだ。今度はミルやら何やら買い込んで、本格的なコーヒーを野外で飲んでみたいものだ。以前レンタルで借りてやってみたときには砕けた豆がカップに入ってしまって失敗だったから。

火起こしがひと段落してテント内に夫が戻ってきた。お気に入りのチェアに腰掛けスマホを弄り始める。それを横目にいそいそとコットを引っ張り出し、タオルケットと文庫本を両手に寝そべって読書を始める。野外でする読書は格別だ。家のベランダに出てやってみたこともあるが、それよりもっといい。元来インドア派のわたしたちは、外に出ても家と然程変わらない引きこもり生活を各々楽しんだ。勿体ないと思われるかもしれないが、最高に楽しかった。

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