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いまさら『DIY』の素晴らしさを語らせてください!!-キュビズム的作画の嘘と説得力-【アニメ感想文】


「ほしいものは作ればいいんだよ」(引用元)


おにまい旋風巻き起こった2023年冬アニメが終わり、今期アニメも軒並み1話が放映され盛り上がっていますね。

にも関わらず2022年秋秋アニメの話をしようかと思います。
タイトルにある通り、『Do It Yourself!!-どぅー・いっと・ゆあせるふ-』のお話です。

実は2022秋アニメを見終えた際に前後編に分けてそのクールのアニメを表彰形式で紹介する…という企画をやっていたのですが、前編が終わってのんびりしていたら後編を書くタイミングを完全に失ってしまい…。
いっそのこと単独記事にしようと思い立ち執筆に望んでいます。

タイトルの「語らせてください!!」の部分は三井の「バスケがしたいです」と同じ贖罪のニュアンスです。
まあでも!『DIY』は実写化が発表されましたから!タイムリーな話題!ですよね!

勿論DIYの様な傑作アニメに旬という概念はなく年中語ってて良いと思っていますし、これからも過去の名作を語ることはありますが自分への戒めとして…贖罪の意図を込め、今回は敬語調でお送りします。

前置きはそんなところにして、ここからは私が『DIY』というアニメを観て感じた良いところ、特にアートワーク面に感しての話をしていきます。

例の如く多少のネタバレがありますので未視聴の方はお気をつけ下さい。

①日常+αアニメとしての『DIY』


アートワークの面を掘り下げたいとは言いましたが、まず前提としてDIYは日常もののアニメです。それも特別魅力的な!
それは重要な要素の一つですので、念頭に置いて文章を書く必要があります。

可愛らしい中高生が少し特殊な(女子学生基準で)趣味をやるというのはもうアニメ・漫画の新定番という感じですが、このアニメは説得力がすごい!

この類のアニメはリアリティラインをどこまで引くかが一つのポイントですが、キャラクター設定のトンチキさに対してDIY(行為)に対する描写はかなりリアルです。

トンチキ設定の例としては
「主人公がペットにマイクロブタを飼っている」
「ヒロインの家にあるアレクサ的家電がクラゲ型でどう見てもほぼ人間並の知能」
「外国人キャラクターが話す英語が令和ではありえないほどコテコテのアニメ弁な上に来日して気に入った食べ物が酢昆布」
「野生児的キャラクターの登場シーンが3,4階くらいある場所から部室の荒屋屋根に飛び降りての忍者走り」
などなど…。無数です。

つまり、キャラクターに関してはゆるい日常アニメという感じでリアリティラインはかなりファンタジーよりです。
動作もいちいち大袈裟でそれがこのアニメの可愛らしさにも繋がっています。

対して、このアニメのDIY(動作)は「ビスの正しい打ち方、角度」から始まります。
その後も私のような初心者にもわかりやすい説明を部長が新しい用語が出てくる度入れてくれて、そこに主人公・せるふの実践パートが入るのでかなりガチなリアリティラインでもって描写されています。

この日常ものらしいトンチキさがKAWAIIを、DIY(動作)に対する深い掘り下げがドラマとしての説得力を上げており、素晴らしい相乗効果が生まれているのです。

他にも日常アニメのご多分に漏れず海・水着回があったり、ここ最近珍しい(『ぼざろ』とかの音楽連動形式ともまた違う、アニソン然とした)「作中登場キャラが歌うOPテーマ」が存在する作品でもあり、かなり良質な日常アニメでした。


やっぱりアニメキャラの歌うアニソンって良いよね!

②DIYのアートワーク


ただ、このアニメ、そこでは終わりません。日常ものとしての良さ、DIY(動作)を「Cute Things」にしてしまうCute Girls Doing Cute Things的な良さ。
それに加えてこのアニメにはとっておき、ものすごいアートワークがあるのです。

まず、主人公・せるふのキャラクターデザイン案を見てください。

(引用元)

この時点で袖部分以外にわかりやすい陰影の概念が存在せず、本来茶髪であれば影になってさらに深い茶色になるはずの後ろ髪が青色になっていることがわかります。

何を隠そう、このアニメは陰影で嘘をつくアニメなのです。

この陰影の嘘さ加減と立体感・奥行きを廃したアートワークはキュビズムの精神とよく似ています。
パブロ・ピカソ『トランプのカード、煙草、瓶、グラスのある静物』を見ていただければなんとなく言わんとすることことがわかっていただけるのではないでしょうか。

国立西洋美術館「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」にて撮影(現在は終了)

わかりやすい偽物は右の方にあるタワーのようなものからはみ出している紙(?)の影ですね。
これは本来の立体的陰影であればこんな風にペタッとはならず、タワーに沿う形で下の方へ薄く伸びるはずです。

DIYも同じで、こういった立体感を完全無視したものではないにしろちょくちょく偽の影と平たい作画を使ってきます。

正直言って、このキャラクターデザインを(それも気持ち良いと感じられるような絶妙さで)動かしていた製作陣に対する感嘆は隠しきれません。

③DIYのアニメーション


もう一つの特徴として、このアニメの動作はすごく説得力があるのです。

例えば主人公・せるふが序盤、ビス打ちに失敗してしまうシーンがあります。
その際のネジが斜めにずれていくシーンとせるふ自身の手がおぼつかなくなるシーンがあまりにも重心に即していて、「実際にこうなるんだろうな」という確かな説得力を生み出しています。

これはかなり凄いことで、少なくとも他のアニメではあまり経験したことがありません。
近いのはリコリコOP最後の千束が蹴られて少しバランスを崩すシーンでしょうか。

あんな感じの重心移動の緻密さと動作の機微を追求したアニメーションが展開されるアニメ、それがDIYです。

DIYのOPにもかなりヤバいシーンがありまして、実際に見ていただけるとその作画の特異性・凄まじさをよく理解していただけるかと思います。


後半、せるふとぷりん(黒髪の子)が切り絵のような絵でダンスを踊るところですね。何度見ても素晴らしいです。

こういった細部にこだわった作画によってもたらされるリアリティを「芝居」と呼んだりしますね。
その言葉を使うのであれば、DIYはDIY(動作)の時に現実に基づいた説得力を持つ素晴らしい芝居を、日常パートで微笑ましいコミカルでデフォルメがかった芝居を使い分けているアニメということになるでしよう。

単なる日常ものではなく、かといって、お仕事系の専門分野に特化したアニメではない。どちらの要素も取り込み、そこでアニメらしいメリハリをつけているのがこの作品最大の魅力ではないかと思います。

あとがき


今回はずっと書きたいと思いつつ3ヶ月以上書けずじまいでいた『Do It Yourself!!-どぅー・いっと・ゆあせるふ-』についての記事でした。

そもそも諸事情で長いことnoteを書いていなかったので、こうしたあとがきの執筆もなんだか懐かしい感覚に思えます。
アニメの記事ももっと書きたいのですがなにせあまりアニメを見れていないので…見なきゃいけませんね、ほんとに。見たい気持ちはあるのです。皆そういうでしょうが…。

本文中でチラリと触れた表彰形式の今期アニメ紹介企画ですが、予定では『DIY』のことを「最優秀アートワーク」として紹介する予定でした。


ただ、今こうして単独記事を執筆した後考えると魅力がアートワークの素晴らしさだけとはとても思えないので独立させたのは正解だったかもしれません。

そんな感じの適当な予定でやっているnoteですが、良ければ今後も読んでください。
そろそろ更新速度も上がると思いますので。多分!


お読みいただきありがとうございました!


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