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2024年正月のPNKT日誌 8

倉庫の件は中途半端だが一応解決したことにし、
次はいよいよ今回の(も)ミッションのメインとなる枝切りにとりかかる。

当初の思惑では、マキタのレシプロソーという強い味方を得てサクサクと枝切り作業が進んでいくはずだった。

アマゾンのブラックフライデーだかで電ノコが安くなるから機種を検討してくれ、と姉より再三催促されて、全くわからないままあれこれ比較しようとしていたが、値引き対象になっている機種は全てがマキタの充電池と互換性を持つ海外のメーカーの製品であった。

国産クオリティであるマキタ純正の製品は値引き対象から外れており、かくなる上は推して知るべしであって、姉とそのようなやり取りをしながら、結局姉が購入したのはマキタ製品であった。

ところが開封の儀の後、充電池と充電器は別売りということが発覚したのだった。

鋸刃はきちんと別売りのものを買っていたのに、バッテリーを忘れてしまうとは。

確かに、充電池や充電器は付属しているだろうと考えるのも無理はない。
一般の家電製品なら箱を開けてすぐにでも使い始められるようになっている。

そりゃあ、できれば事前に予行演習くらいしておいて欲しかったとも思ったが、今ここで姉を責めたところで事態は変わらない。

マキタ用の充電池にはいろいろなサイズがあるらしく、その中のおそらく標準的なものが一種類だけホームセンターで売られていた。
ほぼ16,000円という値段を見てきょうだいで絶句した。

更に充電器のためにほぼ同額を投資しなければならないようだし、そもそも充電器はその店には置いていないようだった。

プロ向けの機材はなにかと素人には敷居の高いものらしい、ということをきょうだいで学ぶこととなった。

結局間に合わないので、電ノコはお預けになった。来年には間に合うだろう。

楽しみにしていた横綱が取り組み当日に体調不良で欠場と知らされるようなものか。

我が家の枝切り作業は、庭というにはあまりにも狭すぎる敷地に生えている、どんぐりと槇(だったと思う)の二本が対象である。

特に槇の枝はあまりにも伸び放題にさせておくと、電柱から隣家に引っ張ってある電線に接触し、台風などの強風が吹いたときには枝が激しく揺れて電線を揺らしたり、最悪の場合切ってしまうことも考えられる。

そのため定期的に伸びすぎた枝を切らなければならないことになっている。

姉の考えでは、木の勢いを失わせたくないためになるべく冬のうちににやっておきたいという心づもりがある。

姉の手の届かないところは必然的に自分が正月の帰省時にやることになる。

やはり姉にばかりこういったことを押し付けていては申し訳ないなという気持ちが年々強まる。自分に残された時間が確実に減ってきているのを感じるようになったからか。姉と一緒に墓参することもあと何回あるか、などと考えてしまう。

電ノコが使えないと文句を言っても始まらないので、覚悟を決めて高枝切鋏と手動ののこぎりで気になる枝を断っていく。

脚立を使い、ある時は塀の上に座ってぎこちない手付きで高枝切鋏を使っていく。

枝の太さを見誤ると相当の握力を強いられることとなる。

のこぎりは何せ手がだるくなる。ピアノ弾きに何をさせんねん、と思わないでもない。

姉が枝を見ながら気になるところを指示するのに従って少しずつやっていくうちに、少しずつ勝手がわかってきた。そうしているうちに、関節の動きにくさがいつの間にか気にならなくなり、待ちくたびれた姉がもうそろそろいいだろう、と声をかけるのも気にならないくらい集中していた。

一旦集中すると限度がわからなくなるもので、終わる頃には腰に大分と負担かかっていたが、その一方で帰省前に痛んでいた左の外反母趾のところは全くといっていいほど気にならなくなっていた。その代わり調子が良くなりかけていた左の膝がまた痛み出した。

かように痛む箇所がリアルタイムであちこちに変わっていくということは、おそらく痛風とは関係ない。痛風はド派手に腫れ上がると、数日間同じ場所が腫れ続けて次第に治っていくものだ。

外反母趾の部分は痛風で腫れ上がる場所として最も多く、自分もそうなる度に痛風だと思ってきた節があるが、どうやら今まであったことの全てが必ずしも痛風に起因していたとは限らなさそうだ。実にややこしい。

いわゆる「ゾーン」に入っていたのかどうかはわからないが、思いの外作業が捗った結果、気がつくと思ったよりも大量の枝を切り落としており、槇の木も心なしかすっきりとして見える。姉がなんだか明るくなったし向こう一年は大丈夫だろうと満足そうに言った。

こうして、帰省中のミッションは全行程終了となった。

(つづく)

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