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ものまね上手

一人で訪問するのが基本の訪問看護、利用する方のお宅に滞在する時間は30~90分です。
訪問先で自分がしてきたケアは事務所に戻ると他の看護師に伝えます。
この報告があることで、各々の看護師は、自分が担当した日に目にしたことに、上書きや肉付けができて、今日の状態を把握できます。

看護師Aさんは、報告上手。
声色や口癖、しぐさをすぐにキャッチして再現できてしまう。
そこには決して悪意はなく、間違っても笑いを取るためではありません。
Aさんのリアルな再現に話がのみこみやすくなります。

訪問先の一人一人が、目の前で話しているかのよう。
つまり、ものまね上手なんです。
ものまねは、鋭い観察眼がなせる業。
よく見ていなければ完成度は低いはずだと思います。

私たち看護師の日常は、深刻な重い話しが多いし、その深刻さを伝えることも重要です。そんな内容の時は、辛さに寄り添うあまり涙ぐんでAさんの話を聞いている看護師もいます。

明るい報告なら、聞いている皆が、訪問先で一緒に喜んでいるような笑顔になります。

Aさんは医師の様子もよく見ています。
往診に立ち会う、あるいは電話で指示を受けた内容は、その医師が話しているよう。聞いている看護師は「今日は先生、機嫌がいいね」と感じ取ることもあります(機嫌まで勘ぐってごめんなさい)。
口調を上手に真似して話すから、「わかる。わかる」ってなります。

伝えるために習得したAさんのものまね。知ろうとするからできること。
一人でしかできない経験を、共有できて、その場にいるような感情を起こすって貴重なこと。
共有できれば、一人一人の情報量は増えて、経験値は上がる

一人で関わることができる時間は短くても相手との距離は縮まる。

ものまねは役に立つ。


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