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私、秋です。

秋です。


秋になったみたいです。
気がついたらなっていたです。

毎年秋になるタイミングだけは気づくのが遅れてしまう。

夏や冬になるときは環境的に不快な方に進むのに対して春とか秋になるときには心地よい方に進む。
まあ春に関してはポカポカ陽気とともに花粉も運んでくるので不快に感じる人も多いのかもしれないが。


不快なときには「暑いなー」とか「寒いなー」といった「そやなー」が正しい回答になる無駄なセリフを会話中に織り交ぜてしまう。

そのくせ心地よくなってきても「心地よくなってきたなー」とは言わないし、そもそも気がついてすらいない。

この変化に気がつけない自分の鈍感さには悶々としてしまう。

夏とか冬はこっちに向かってくる段階から「きたでー!」って大声で叫ぶのに、秋ときたら気付いたときには集合場所に現れているのだ。


「着いてたなら教えてよー」と言うと

秋が「30分くらい前からいたんですけど…」と恥ずかしそうに答えるのが毎年の恒例となっている。

さて、これで全員揃ったかな?
と思ったときにはもう秋は一足先に歩き出している。

「どこ行くのー?」と聞くと

「寒い方です」

とこちらを振り返ることもなく答える。

「芸術の」「スポーツの」「食欲の」

イカつい二つ名を引っ提げながらもド派手な登場をしないのがオシャレで憎らしい。

もし「食欲の夏」なんて言われたら到着するころには胃もたれしているだろう。

朝晩が冷えるようになったからコートを出したり、落ちたキンモクセイが地面を彩っていたり、読書の秋だし本でも読もうかなと思ったり、鱗雲が空に散りばめられていたり。


僕が感じているのは全部秋の後ろ姿なのだ。


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