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流行りの音楽から探る「Z世代とレトロ」の関わり

あなたは Cheugy(チュージー)という言葉を聞いたことがありますか?

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Cheugy(チュージー)とは、古めかしい過去のトレンドを揶揄する、米Z世代発のスラングのことです。

話題に登ってから間もなく TikTokで#cheugyの全動画総再生回数が21万回に達するなど、英語圏で耳目を集めています。(このCheugyを代表するという写真を見ればなんだか共通点が見えてくるような気も...)

米国でいう1990年代後半に生まれたGen Z(Generation Z)がミレニアル世代以降のトレンドを拒否する姿を見て取れます。
こうしたZ世代が過去のトレンドを拒否する動きがあるにも関わらず、なんとSpotifyグローバルバイラルチャートで18日連続1位を獲得したのは1979年にリリースされた松原みきのデビュー曲真夜中のドア〜stay with me」でした。

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ミレニアルという近しい世代のトレンドは拒否しながら、さらに遡った昭和世代のトレンドがZ世代の間で人気を博しているのはなぜでしょうか?
...近年のトレンドをよく見てみれば、アナログカメラやレコード盤、純喫茶、シーシャなど、「昭和を彷彿させるレトロなアイテム」が数多くZ世代の間で賑わっているのに気がつきます。
その時代にも生まれていないのに、トレンドとして”レトロ回帰”が起こっているのです。

今回はそんなZ世代のレトロ回帰の背景を、エンターテイメントの代名詞である”音楽”に見ていきたいと思います。お届けするのは1997年生まれで自身もZ世代の 岸本たくみ。Twitterでは"Z世代実況レポーター"として、Z世代カルチャーやソーシャルメディアにまつわる情報を発信中!

『Z世代のインサイトを探りたい』
『Z世代をターゲットとしたプロダクト制作の参考にしたい』などなど...

本記事の内容があなたにとってエンターテイメントプロデュースの参考情報になれば幸いです。

1. そもそもZ世代はどこで音楽と出会う?

Z総研トレンド通信Vol.2『音楽編』を参考にしてみると、Z世代の約半数がSNSを通じて音楽と出会っていることがわかります。
youtubeやTikTokのみならず、Spotifyなどの音楽ストリーミングサービスの存在も加味すれば、デジタル上での音楽との出会いがほとんどを占めています。

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上述したプラットフォームはどれも強力なレコメンド機能を実装。ジャンルやリリース時代に関わりなく、「ユーザー自身がそれを気に入るか」を優先しコンテンツが露出されています。

Z世代女子が日常的に5ジャンル以上の音楽を聴いていることを考慮すれば、Z世代の音楽との出会い方はジャンル・時代横断的にデジタル上で音楽と出会っているといえます。
またTikTokで総投稿数30万件超にまで登る「グッバイ宣言」を見てみれば、その『引きこもり絶対ジャスティス』という歌詞が自粛で引きこもりがちになったこの時代と重なり共感を呼んでいるようです。音楽が人気を博すには「心を寄せられるかどうか」つまり”共感できるかどうかが重要になっているようです。


2. トレンド化する音楽の条件

SNSとインフルエンサーの普及により、偶発的かつバイラルな情報拡散が起こりやすい土壌が出来上がっています。
その中でも特に拡散されやすいのは、先述した”共感”に加え"わかりやすさ”を備えていること。

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Adoの「うっせぇわ」を例に挙げれば、社会への反発を明白に示す『うっせえ  うっせえ うっせえわ』という直接的でわかりやすい表現が強烈なフットになっています。さらに働き方や暮らし方などコロナ禍中に生じた既存慣習への疑問という"共感"をも導いています。
また、2019年にリリースされTikTokでの投稿件数7.7万件超、”リストカット”を示唆する「手首からマンゴー」はZ世代の危惧すべきメンタルヘルスとの関わりをありありと思わせます。

わかりやすく共感できる楽曲であればあるほど、よりトレンドになりやすいといえるでしょう。


3. レトロがトレンド化する背景とは?

ここまで見てきたことを振り返ると、
Z世代はデジタル上でジャンル・時代横断的に音楽と出会い、そうした音楽がトレンド化するには"共感"と"わかりやすさ"がキーだと分かりました。

このことを考慮し、『なぜレトロ回帰が起こっているのか』その答えの仮説を「レトロ自体が現代でトレンド化する要素を孕んでいたため、レトロ回帰は自然発生的に生じた」と据えてみました。

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これを検証するため今回インタビューしたのは、
"ネオ昭和" で有名な阪田茉鈴さんや昭和テイストなチルソングが大好きだという2002年生まれのFさん。

まずレトロと聞きFさんが思い浮かべたのは、『Youtubeで見た藤井風の歌う「木綿のハンカチ」』だったようです。昭和の文豪 太宰治を思わせる風体で、1975年にリリースされた太田裕美のヒット曲を歌うさまはFさんの脳裏に“昭和の雰囲気”をまざまざと焼き付けたことでしょう。

またレトロに対して考えていることを聞くと、『そもそも昭和を生きていないから、レトロトレンドは懐かしさよりも"オールドニュー・トレンド"』という印象を持っているそうです。便利さで満ちた現代を生きるZ世代はレトロを"新たなトレンド"と捉え、そこに一種の"不便益性(不便であるからこそ価値がある)"を見出しています。

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また、『新しい音楽を発見するのは圧倒的にYoutubeが多い』ようで『視聴中動画のそばにサムネイル画像付きでオススメ動画が表示される』ためSpotifyなど自動的に似た曲が流れる音楽ストリーミングサービスよりもずっと、新しい音楽に出会うことが多いそうです。


そうして知った楽曲にハマるまでには、『アーティストの年齢やSNSでの投稿をチェックする』ことも。『年齢が近いとそのぶん親近感も湧いて、低年齢なら今後の活動期間の長さや新たにリリースされる楽曲に期待できる』という理由からだとか。


普段聴く楽曲を尋ねると、『日常に合うゆったりとしたテンポの音楽が多く、特にレトロ音楽はリズムが優しく落ち着いた曲調、歌詞の内容もわかりやすい』と教えてくれました。


4. まとめ

レトロ回帰を音楽という切り口から考え、この時代にトレンド化する音楽には"共感"と"わかりやすさ"が必要であることを確かめました。
続いてその前提を元に、レトロが初めから"共感"と"わかりやすさ"を備えているとし「レトロ回帰はこの時代になったからこそ自然発生した」と仮定。

しかし、インタビューしたFさんの話に鑑みれば、(レトロを含む)コンテンツ一般に対するZ世代の考えを捉え直す必要があると気がつきます。
まず1つにZ世代はレトロを新しいものと捉えていること。
そして2つ目により高次なわかりやすさと共感を求めていること。

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1997年生まれでZ世代の私ではまだ昭和をイメージすることができますが、2002年生まれのFさんの場合レトロの輪郭がぼやけ"新しいもの"と認識するのは無理もないこと。


さらに産業能率大学の調査によれば、情報過多の中を生きるZ世代は広告表現において抽象的な表現を解釈する負担を避けると言われています。このことからZ世代には直接的でわかりやすいものが受け入れ易いことは間違いないでしょう。しかし、動画像・直接的な表現を用いるなどわかりやすさの精度をいっそう高めなければ共感にさえ至らないことが起き得ます。

Z世代間のレトロのトレンド化を考えることで、これからのエンターテイメントの打ち出し方・表現の仕方が変化を求められているとも考えられます。


5. お問い合わせ

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