金融庁、電子ギフト券に本人確認義務 「実質送金」に網

金融庁は2021年12月28日、高額な送金が可能な電子ギフト券などの発行者に本人確認手続きを義務付ける方針を示した。

マネーロンダリング(資金洗浄)対策の強化が目的で、実質的に送金の機能を持っているギフト券に新たに規制の網をかける。

大枠は次の通り。

1回の送金額が10万円、1カ月の合計が30万円を超える場合に限り、電子ギフト券の発行者に対して運転免許証などを通じたオンラインでの本人確認手続きを求める」

例えば、「Amazonギフト券」の場合、本人確認手続きを踏んでいないアカウントに月30万円より高い金額を送れなくなる。また、VISAのプリペイドカードであれば、カード所持者が本人確認していないと1度に10万円を超えるチャージができなくなる。(VISAプリペイドはチャージ可能なプロダクトの場合、本人確認が必要なので、影響はないものと思われる。)

実質的に送金の機能を持っているギフト券とは、「カードに記載された番号は電子商取引(EC)サイトなどでの買い物に使えるため、メールなどで番号を相手に伝えることは実質的に送金の性質を帯びる」、とのこと。

一方で、「Suica(スイカ)」などの交通系ICカードは資金決済法で電子ギフト券と同じ「前払い式支払い手段」と規定されているが送金機能がないため対象外とする。

新たな規制により、利用者の取引額を把握するためのシステムの改修や継続的なモニタリング体制の整備を迫られる業界の反発は根強く、複数の事業者団体が「キャッシュレス社会の実現に支障をきたす」として規制強化に反対意見を表明している模様。

2019年に金融審で同様の議論があったが、マネロンのリスクは限定的として結論を保留していた。

日経新聞

つまり、事業者には、規制に対応した人員配置やシステム開発のコストが重くのしかかることになる。メガバンクなどはすでにマネロン対策の高度化を求められており、経営戦略にも影響を与えている。同様に、今回の影響は小さくなく、小規模の事業者にとって対応コストは大きな負担で、事業の縮小や撤退につながる可能性もあると指摘される。

背景には、マネロンへの監視水準が高まっていることが挙げられる。

ここ数年で世界のマネロンへの監視の水準は一層高まっている。21年夏には各国のマネロン対策を審査する国際組織「金融活動作業部会(FATF)」が日本に実質不合格の判定を出し、日本政府は穴をふさぐ必要に迫られている。

すでに「LINE Pay(ラインペイ)」などのスマホ決済やクレジットカードについては本人確認が義務付けられている。金融庁幹部は数千万円にのぼる取引が可能なプリペイドカードが出てきていることも踏まえ、「問題が顕在化する前にリスクの芽を摘み取る」と話す。

日経新聞

米国において、ギフトカード(所謂、ハウスカード)をマネロンの文脈で指摘するような事例については知らない。もちろん、VISAのプリペイドカードは対策が講じられている(と思う)。

別途、クレジットカードの不正利用被害の推移などについても調べているので、興味がある方は以下も覗いてみてください。


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