Vtuberになりたいと思っている人へ 元Vtuberの実録記
この記事には、Vtuberのメタ的な話が含まれています。苦手意識のある方はご注意ください。また、全てのVtuber事務所が本記事と同じであるということではないことをご留意ください。
この記事を読んでいるということは、Vtuberを目指しているもしくはVtuberに憧れている人だと思います。
かくいう私もVtuberのオーディションに応募した際は同じ気持ちでしたし、Vtuberを始めた理由として一番憧れが強かったです。
筆者は(これを書いている時点で)Vtuberをやめた直後です。公開している今現在は引退してから少し時間が経っています。
どのように私というVtuberが誕生し、生を終えたのかバーチャルの裏側から記録したいと思います。また、個人勢Vtuber事務所に所属していた側からのこうした方がよいのではないか、といったことも記していきます。
また、記録だけではなく、「その時どう思った」など感情の部分も備忘録として書きますので、ご了承ください。
1.全ての始まり
初めは11月頃でした。私はかねてより応援していた大手事務所のVtuberさんに憧れていました。
「あんな風になりたい」
憧れが最も強かったです。そこからそのVtuber事務所に所属するための情報を集め始めました。大体の大手Vtuber事務所は応募条件に「配信経験のある方」とあります。そのため、私はその事務所に応募する権利を得るために、いわゆる中堅Vtuber企業や個人事務所のオーディションを検索し始めました。
中堅企業事務所は、配信経験が必須なところと何かスキルがあれば配信経験が不問のところがあります。また、個人事務所は基本的には何らかのスキルがあればオーディションに合格することがあります。
一か月ほど情報収集とオーディション用動画の内容について検討しました。
そして1月。有名どころの個人勢Vtuberを運営している方が新規箱を作ると聞いて「これに応募しよう!」と思い立ちました。配信経験不問でやる気のある人を採るとのこと。更に機材援助も受けられるらしいと…………
ここを本命にもう何個かいい感じのところを見繕いました。
それでオーディションって基本的にオーディション動画を送らなければならないんですね。
Youtubeで「Vtuber オーディション」と調べると恐らくこの動画が真っ先にヒットすると思われます。
こちらはもちひよこさんの動画ですが、正直に言ってめちゃくちゃためになります。私自身何かのオーディションに動画を応募したことなんて人生で一度もなかったので、どういった動画を作るのがよいかという指針になりました。
また、面接官目線でお話しされているのでどういったポイントを見られている等意識ができました。
しかし、この動画を真似するだけでは絶対に落ちます。実際、運営さんには「オーディション動画がほぼもちひよこさんのやつ見たんでしょうねっていうのばかりだった」と言っていたからです。
私は、この動画で言われていることをそのままに動画を作るのってなんか違うんじゃない?と思い、一旦自分に何ができるのかを考えました。
私のできること
・絵を描くこと
・アクションゲームを他人が見てストレスのない範囲内でプレイすること
・aviutlでの動画編集
なんかありふれた感じです。
しかもその上配信などで他人に話を聞かせるなんてことをしたことがないわけです。絶望です。
とりあえず、自己紹介で動画を撮ってその有名どころの新規箱に応募しました。
普通に落ちました。
私はいちいち違う箱に応募するときに毎回動画を作っていたのでまた新しい動画を作ることになります。
そして2月になりました。
今度の箱は機材貸与・モデル提供ありの(言い方は悪いですが)優良物件でした。
応募用動画には「声の分かるもの・サンプルボイス等」と書いてあったように記憶しています。
「声の分かるものだったらそんな中身なくてもよくね?じゃあ朗読でもしよう」
こういった思考から青空文庫から私がすごく好きな小説から一節抜き出して朗読した動画を送りました。
この時の私には録音機材や設備、知識がなく、スマホの録音アプリで録音した音声をノートパソコンに移して、ノイズを目立たなくなるように加工して聞きやすく心がけました。応募期間ギリギリだったように思います。(応募期間ギリギリより早い方が印象は良いと思いますが、ギリギリの方が印象に残りやすいんでしょうか?)
この箱は応募者全員にDiscordによる面談を行っており、なんとなく浮足立った気持ちで面接に臨みました。
Vtuberになりたいと考える人には参考になるかなと思い、面接で聞かれたことを覚えている範囲で少しぼかして記します。
・予定している配信頻度
・どういった配信をしたいか(他と違った企画ができるか、等)
→他と被った時の差別化について
・どういう設定でやりたいか、ロールプレイは可能か
・どういったキャラ付けで活動するか
・機材について(PCスペックなどの話)
・配信環境の話
・目標にしているVtuber
この辺りだったと思います。
面接の数日後、応募期間ギリギリだったこともあり、すぐに結果のメールが届きました。
2.合格してから
「選考の結果、○○(筆者)様を採用させていただきたいと考えております。」
合格してしまいました。
運の良かったことに、2つ目のオーディションでVtuberデビューをさせていただくことができました。「Vtuberオーディションスレ」をちょくちょく覗いていたこともあって、こんなにすんなりと受かるとは思っておらず、めちゃくちゃ嬉しかったのを覚えています。
後に運営さんに合格の要因を聞いた際、このような回答をいただきました。
・声が特徴的(大人数コラボでも分かりやすい声であった)
・他の応募者はやりたい配信を聞いた際に口を揃えて「Apex」と言っていたが、筆者はApexの名を挙げなかった
・朗読を送ってきたのは筆者1人だった
周りと差別化ができるというのはオーディションにおいて大きな強みになると思います。
そして、グループチャットへの招待リンクが送信されたのですが、驚きの一言が飛んできます。
明日収録があるんですけど来れますか?
当時右も左もわかっていなかった私はスタジオが近かったこともあり、OKしました。(この時点でヤバいと気付くべきでした。)
翌日、近隣駅で待ち合わせをして、同期となるVtuberさんと収録に使う物の買い出しに行った後、スタジオへ行きました。
同期の子の歌撮りをひたすら眺めるだけの時間で、私は一体何のために……と思っていたのを覚えています。
あと記憶が定かではないのですが、この辺りで名前を決めたような気がします。苗字は渋谷ハルさんのnoteより三文字、名前は二字で考えて、他と被らないオリジナルな苗字と昔からずっと響きが可愛いと思っていた名前にしました。
▼渋谷ハルさんのnote
また、キャラデザも絵が描けるので自分で担当しました。インパクトのある、良いキャラデザだったと思います。友人達にも未だに褒められますし、コラボしたVtuberさん達にも「すごく目立つデザインだからサムネで真ん中に配置しちゃう」と言っていただいていました。
でも、正直に言って無名の個人勢Vtuberは「ママガチャ」だと思います。デザインを担当したイラストレーターが有名な方だったり、兄弟の方が企業勢やものすごく有名な方だったVtuberと無名のイラストレーターが担当したVtuberだったら同じデザインでも拡散力が違います。
Vtuberを本気で始めたいと思うのであれば、絶対にモデルに一番お金をかけた方が良いと思います。
また、私は配信経験がほぼ無に等しかった(本当の無ではない)ので、配信アプリで雑談の練習をしました。(運営さんと配信経験のある同期の子に配信を聞いてもらってフィードバックされるのがしんどくてあまりしませんでしたが...)
撮影に行ったり、歌を撮ってみたり、モデルが完成したり、ロゴを作ったり、事務所の名前を決めたり、事務所のロゴデザインをしてみたりで4か月が経ちました。
3.デビュー
6月に入って急に、Youtubeでのゲストを呼んでの練習の企画配信を次週行うと運営さんに告げられました。
とりあえずぱっと思いついた企画の準備として、台本を作って、配信レイアウトを決めて、配信用の素材を作って……でその一週間はろくに眠れませんでした。ひたすら、作業、作業、作業………
生まれて初めてYoutubeで企画配信を行うのと、企画なんてやったことがないのとで勝手がわからず、本当に大変でした。
結果として、運営さんには大絶賛でした。協力してくれた友人に感想を聞いても良かったと言ってくれたので成功だったのでしょう。
そして、本当に急にTwitterアカウントを作れと言ってきました。6月は中頃でした。更に、Twitterデビューと同時に自己紹介動画をアップしろと言われたので、寝る間を惜しんで収録と編集を行いました。
本垢(絵描き垢)のフォロワーには声でバレました。本当につらい。
言われた通り、Twitterアカウントを作成し、本当に急遽デビューが決まったのです。また、初配信はTwitterデビューの2週間後と言われました。
私が思うに、無名のVtuberはTwitterデビュー直後に自己紹介動画を上げても絶対伸びないと思います。Twitterでフォロワーの多いVtuberに取り入り、TLの#おはようVtuberの投稿をアップしているVtuberに挨拶をし、自らも#おはようVtuber・#おやすみVtuberの投稿を毎日行うなどを1~6か月ほど行い、その過程で声公開とかしないとまず見てもらえないと思います。Twitterのフォロー数とフォロワー数が釣り合ってなくても自分が興味のあるVtuberを沢山フォローしましょう。名刺代わりです。とりあえずTwitterのフォロワーを増やして初配信を沢山の人に見てもらえるようにしましょう。
そんな風に自らが考えるマーケティングとは違うマーケティングをしたのですが、結局のところ、初配信の同時視聴者数は30人もいなかったと思います。
そんな感じで初配信を迎え、家にあるSwitchで好きなゲームの実況配信を行ったり、お絵描き配信を主にしていました。
FANBOXも開設しました。活動開始から1か月ぐらいのことでした。
その頃には、私にも「ファン」と呼べる毎回配信に来てくれる人達がいました。大手企業のVtuberさんしかフォローしてないアカウントの人にフォローされた時はびっくりしました。(しかも毎回リプライやいいね、リツイートをしてくれるのです!励みになりました。)
少し話が脱線しますが、FANBOXを開設した際、開設した当日にFANBOX開設しましたと発表するのではなく、翌日の人に見てもらえる時間にTwitterで告知する予定だったのですが、情報公開前に1000円のプランに入ってくれている人がいました。いつも配信を見に来てくれている人だったのですが、あれはどうやって見つけたんですか……?私の名前をGoogle検索でもしたのかな………(本当にありがとうございます。)
私のFANBOXは3か月しか開設していませんでしたが、計6000円ほどご支援いただいてました。(未だに運営さんから私の取り分が未払いです。)
こんな感じで配信やFANBOXの活動をしていたのですが、どうしても配信外で描かなければならない絵が増えてきてしまい、配信の時間も取れず、配信自体もストレスに感じてしまっていました。
リスナーさん達からコメントをいただくのはすごくうれしかったし楽しかったし、チャンネル登録者数に対して同時視聴者数の割合が高かったので、配信の質としては良かったと思いたいのですが、運営さんからの少しパワハラじみた発言や作業量の多さから、モチベーションが下がってきました。
4.引退する決心
8月頃だったと思います。私が毎年恒例行事のように観劇している舞台があるのですが、その公演が始まりました。
推しを見れてめちゃくちゃモチベが上がりました。もちろん配信でもその話をします。有名な舞台なのでご存じのリスナーさんもいらっしゃって、布教をしたり。
月末にまた同じ舞台のチケットを取っていたのですが、回数を増やしました。そして急遽、友人宅に泊まることになりました。
友人のためにアヒージョを作って、買ってきたつまみを食べ、一緒にニッカのシードルスイートを飲みながら映画を見る……そうして映画を見ている時に、ふと頭の中にある考えがよぎります。
あっ、Vtuberやめよう。
言い方は悪いですが、配信で見ず知らずの人と会話するより、こうやって友人と美味しいものを食べながら舞台で輝く推しを眺める方が私には幸せなんだな、ということに気付きました。
そう思ってしまってからの行動は早く、僅か一週間もしないうちに引退する旨の文書を出し、引退しました。ファンでいてくれた人達には本当に急なことだったし、ファンの人達と同期の子、仲良くしてくれたVtuberさん達を置いて行ってしまったことが本当に心残りです。でも、私はあのまま続けていたら壊れていたと思うし、引退する選択があの時出来て良かったと思っています。
引退後、運営さんから色々詰められたりしましたが、色々と法律について調べた結果、法律的には何も問題はないと考え、振り切って引退しました。その後、特に連絡もないです。
5.最後に
ここまで5000字超長々と私がVtuberになって引退するまでの備忘録を書いてきましたが、これからVtuberになりたいと思っている人に私が言いたいことは、これです。
・Vtuberとしてやっていくにはどこかの事務所に合格できるぐらいの実力は必要だが、個人事務所はよっぽど信頼ができるところではない限りやめておいた方がよい。
・運営がヤバいと気付いたら早めに行動した方がよいが、きちんと法律上は問題がないか確認する。
・自分はこれが出来るからといって安請け合いしない。
・Vtuberは楽しい活動ではあるが、大変なことの方が多い。
・結局は顔と声。
以上5点です。
これは持論ですが、オーディションに応募するより自分でお金を貯めて機材を買ったり、有名な絵師さんにキャラデザを依頼して完全個人勢としてデビューした方が利益も全て自分に返ってきますし、真剣みが変わると思います。
でも、どんなVtuberさんでもデビューしたら絶対見てくれる人が1人はいます。どこかの誰かは絶対あなたのことを応援してくれます。
それだけは忘れないでください。
3か月弱しか活動していなかった私にだって、ファンはいたのだから。
これからVtuberになりたいと考えている人達のことを応援しています。
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