ARMS――キース・シルバーは無駄死にじゃなかった!

ネタバレだけどまあ仕方がないよね。

もう10年以上も「あの無駄死にっぷりがいいんだ!」と言い続けて来たキース・シルバーですが、

物語の構造上彼は無駄死にではなかったことが昨日わかってしまった。

勿論純粋な物語の上ではまったくの無駄死にであったわけですが、ハンプティ・ダンプティの能力が決まった時点で、キース・シルバーの最後も連動してああいう形で決まった、そこに必然があったと言えます。

扱いに困って「階段を登ったらアトラスが出てきた」みたいな展開になったとばかり思っていましたが、違いました。

キース・シルバーの死があるからこそ、無敵のハンプティ・ダンプティを攻略できるのです!!

ハンプティ・ダンプティはその身体を無敵の黒いバリアーが包み込んでいて、あらゆる攻撃を吸収し、自らの技として打ち返す事ができます。

攻撃無効+ラーニングという点であの魔人ブウに近い能力があるわけです。

当初の適合者はキース・ブラックでしたが、アリスの声のままに研究所を破壊しその怨念の対象たる父キース・ホワイトを殺害したことで、最終的に人格をホワイトに乗っ取られてしまいます。

ホワイトをARMSから生成した神剣フラガッハで殺害したために、意図せず発動した吸収能力でホワイトの人格を取り込んでしまった、という設定。

まあこれだけでも筋は通るんですが、そこにダメ押しをする、もう少し丁寧に説明を加えるという意味で、キースシルバー戦がいきてきます。

主人格のブラックからしたら、自分の人格を乗っ取るような相手の精神を吸収することは本意ではありません。

更に、ハンプティ・ダンプティの無敵の能力を垣間見、弟から父への人格交代劇から全てを悟ったキース・ブルーは、自ら神剣に貫かれることで精神を吸収させます。

そしてホワイトの中にいたブラックとブルーの2人が内側からバリアーを解除し、ハンプティ・ダンプティにダメージが通るようになる。

いささか御都合主義にも思える展開ですが、この説明となるのがキース・シルバーに対するアルのコメント

蛇は毒牙で自分を刺さない…

蜘蛛は自分の巣にはかかりはしない…

どんな生物だって、自分を自分で殺すような能力を持ちはしない!!

なんです。

これはパワーを無尽蔵に高めたキース・シルバーのマッドハッターが、自らの高熱により再生能力が持たなくなって溶け落ちてしまったシーンでのもの。

ARMSの驚異的な能力はバランスを欠き、時に自らを滅ぼしかねないという要素が示されます。

そう、それは無敵のハンプティ・ダンプティの能力についても同じ。

自らの害になるものでさえ、勝手に吸収してしまうのです。

普通に進化したのならそういう不利な要素は淘汰されるはずですが、人類の人工的な進化を目的としたARMS計画ではそれが起こらなかった。

その結果として無敵の能力が破られるにあたり、自滅可能性についての要素はあらかじめ作中で提示しておく必要があったんですね。

その役割を担ったのがキース・シルバーだと。

そのことにようやく気がつけました。

とにかく人に語りたくなるのに、大学を卒業した今となっては語る機会がないので、ここに書くことになるわけです。

流石に久しぶりにあった相手に突然ARMSの込み入った話を始めるほど社会性がバグってはいませんので……。

作中における位置付けがわかったとしても、やはり物語的には無駄死にでしたから、相変わらず好きですけどねキース・シルバー。

コミュニケーションと普通の人間について知りたい。それはそうと温帯低気圧は海上に逸れました。よかったですね。