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ガンダム完全講義34:第13話「再会、母よ…」解説Part1

 岡田斗司夫です。

 今日は、ニコ生「岡田斗司夫マンガ・アニメ夜話」2019/11/26配信分のテキスト全文をお届けします。

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「今週のガンダムマンチョコ」とメカの背景「水引き」解説

 こんばんは、『機動戦士ガンダム』完全講座です。今日から第13話「再会、母よ…」に入ります。

 もう34回になりますね。いやいや、早いと言えば早いし、ゆっくりといえばゆっくりでなかなか進まない(笑)。

 じゃあ、今週もガンダムマンチョコの開封をしてみようと思います。

 今日のガンダムマンシールはなんでしょうね? まだ東京のコンビニには、ジオン軍のバージョンは売ってないんだけど、何週間くらいで取り替えなのかな?

(袋を開ける)

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【画像】ガンダムマンシール ©創通・サンライズ ©LOTTE/ビックリマンプロジェクト

 ああ、ハヤト・コバヤシがダブってしまいましたね……。さあ困った。

 じゃあ、うーん。この背景のメカでも語るかな?

 このシールのハヤト・コバヤシの後ろに見えるメカの背景。ちょっとこれについて語ってみたいと思うんですけど。

 『機動戦士ガンダム』では、基本的にメカ背景というのはいわゆる水引きと言われる背景で、水彩絵の具でだいたいグレーに塗って、定規で黒とかちょっと濃いめのグレーとかで線を引いただけのものを、まあ背景として使っています。

 これはいわゆる『宇宙戦艦ヤマト』から始まったメカニックの背景なんですけど。『宇宙戦艦ヤマト』の時には、まだまだメカニックとして描こうとしてたんですね。つまり、メーターを描き込んだり、いろんな小物を描いたりしてたんですよ。

 『ヤマト』以外のそこまで作家性が強くない作品の場合は、もう、こういうメカもの、ロボットものの背景というのは、一色で塗ってしまうか、処理の仕方を誤魔化してるようなものが多かったんですよね。例えば、通路であったら「蛍光灯をところどころ描く」とか、そういうのが多かったんですけど。

 『機動戦士ガンダム』の頃くらいから、例えば、ジオンの側はまだ「緑色で、怪し気な光がついている」という、昔の『宇宙戦艦ヤマト』のガミラスっぽい背景が多かったんですけど。連邦軍の背景に関しては、いわゆるグレーとか、薄いブルーを基調とした、ちょっとしたハイテクっぽい工場みたいな背景になってきたんですね。

 このさっきのハヤト・コバヤシの背景は、まあそういう時代のホワイトベースの背景。連邦軍っぽい背景になっているんですけども。

 まあ、僕が放送当時に見て「ああ、これはなかなか良いな」と思ったのは、この処理の具合がすごく上手いというか、宇宙船の中なんだけれども、ちょっと生活感がギリギリあるというところなんですよ。

 例えば、居住空間の時の色合いとブリッジに近い時の色合いが微妙に変わっているところとか。あとは、さっきも話した、もう言っちゃえば「グレーに塗りつぶした上に、黒とか濃いめのグレーで線を引っ張ってるだけ」なんですけども、なんとなくその工業製品に見えるっぽい処理。本当にそれだけなんですよ。処理だけなんですよね。他に何も描いてないに等しい、情報量が少ない背景なんですけど。それでも、かろうじてメカだとわかる。

 時々、ホワイトベース内を修理するシーンとかで、このパネルの一部が外れて、そこからコードとかが出ている描写があるんですけど。これによって「彼らがいるのは、巨大なメカニック、機械の中の一部なんだ」というのがわかるという。この辺が『ガンダム』の背景の処理の上手さですね。

 あと、ハヤト・コバヤシに関しては……すみません、無料放送が終わるまでに、何か考えておきます。

 いやあ、初めて2枚目が出て来て、生だからパニックになっちゃった(笑)。

・・・

 今回は第13話「再会、母よ…」の1回目です。

 この「再会、母よ…」というエピソード、最近ではわりと隠れた名作というふうに言われるようになったんですけど。放送当時は、まあ「捨て回」と言われてたんですね。「わりと見てもしょうがない、どうでもいい、回数稼ぎの回だ」と。

 前回の「ジオンの脅威」は、新型モビルスーツが出て来るし、ギレンの大演説はあるし、大盛り上がりなわけです。それに比べて、もうほとんど盛り上がらない、ダメな回だと言われてたんですけど。

 今回の前半の解説では「では、昔のアニメにおける捨て回というのは何か?」というのを解説しようと思います。

 今のアニメではそういうのがないんですよ。というのも、1つのアニメが1シリーズ、12話とか11話くらいしかないから。最初から1年間の予定が組まれているアニメ作品自体がほとんどないので。

 なぜ、こういう「捨て回」と呼ばれるような呼び方が定着したのか? それには、昔のアニメ独特の放送事情というのがあったので、それについて、ちょっと説明してみました。

 いつもの通り、この無料講座の終わりで、追加の解説をしてみます。

 それでは、『機動戦士ガンダム』講座「再会、母よ…」第1回目の解説です。どうぞ。

アニメ放送の「捨て回」と『ガンダム』の「日常演技の魅力」

(本編開始)

 岡田斗司夫のガンダム講座、『機動戦士ガンダム』第13話の「再会、母よ…」という回をお送りします。

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【画像】タイトル画面 ©創通・サンライズ

 この「再会、母よ…」というのは『ガンダム』の13話目。

 『ガンダム』はシリーズ全体で43話あって。今考えると、最近の普通のアニメって、1シーズン11話から13話くらいで終わっちゃうので、すごく長く感じるんですけど。当時のロボットアニメというのは、だいたい52話か50話の1年間続くシリーズだったんですね。

 なので、1年分のシリーズとして、全体のストーリーを展開させて行っているんです。

 『ガンダム』も、もちろん最初は52話か50話くらいの予定だったんですけど、途中で打ち切りが決まってしまったので、やむなく最後の辺りがちょっとドタバタしたんです。だけど、このドタバタしたことが偶然、上手く作用して、名作と言われるちょっと締まったようなストーリー構成になったんですけど。

 この13話の「再会、母よ…」を、作っている最中は、もちろんスタッフ側も、まさか打ち切られるとは思わず、「視聴率が悪い」とは聞いているけれど、「どうかな?」と思いながらも作り続けていました。

 その前の番組の『ザンボット3』や『ダイターン3』のオモチャがよく売れてたので、まあ安心してたというとこもあるんでしょうけども、1年掛かりでのストーリー構成をやっていたんです。

 これは『ザンボット3』の時もそうだったんですけど、富野由悠季さんは人間ドラマというのを展開しようとしていたので、長い話数で徐々に徐々に、キャラクターのいろんな面に光を当てたいと思ってたんですね。

 そういう意味では、この第13話「再会、母よ…」というのは『機動戦士ガンダム』のテレビシリーズ全体を起承転結で並べると、ようやっと「起」、いわゆる「このお話はどんなお話なのか?」を紹介するための一番最後のパーツになっているんです。

 次の「時間よ、とまれ」とか「ククルス・ドアンの島」くらいからは展開期で、「他にもいろんな見方はあるんだよ。例えば、ジオンの兵隊の方に焦点を当ててみようか」というような回になります。

 この「再会、母よ…」はホワイトベース、特にアムロ・レイという個人がどのようにして出来ているのか、どんな人物なのかというのがよくわかるように作られた話なんですけど。

 まあ、その、地味な回なので、アニメファンの間でも「この回は、いわゆる箸休めだ」とか。あとは捨て回。いわゆる「メインエピソードではないので、捨てられる回だ」みたいに言われてるんですけど。

 それはとんでもなくて、まあ、最重要の回の1つでもあるんですね。

・・・

 では、なぜこれが捨て回扱いされているのかと言うと、当時のアニメの事情というのがあって。

 これ、この講座でも何度か言っているんですけど、「同じアニメ作品でも、地方ごとの放送局によって放送回数に差がある」と。

 『機動戦士ガンダム』は名古屋テレビの制作ですから、一応、地方局の番組なんですね。この地方局の番組が他所の地方のテレビ局に売られて、そこでローカル放送がされるわけです。

 日本のテレビの放送システムというのは、アメリカの放送システムの輸入ってことはないんですけど、それに近いものなんです。まあ、アメリカよりは、よっぽど中央統制が取れてるんですけど。一応、基本的には、アメリカのテレビ放送システムというのが基本になっているんです。

 アメリカのテレビ放送システムというのには、いくつかルールがあって。

 例えば「連続モノの場合は、話数の順番を変えて放送しても、成立するようにしなければならない」と。

 もちろん、そうじゃないものもあるんですけど。例えばそのアメリカのモノクロ時代の名作と言われるテレビシリーズに『逃亡者』というのがあったんです。

 1年間にわたって、リチャード・キンブルという人が、妻を殺した犯人だと誤解され、ジェラード警部というのに追いかけられ、アメリカ中を逃げる話なんですけど。

 これも、アメリカ中を逃げるわりに、どの場所と特定するようなものがあまり出てこないんです。

 今だったら、本当にご当地シリーズとして「今回はアリゾナに逃げました」「今回はネブラスカに逃げました」ってやりそうなもんだけど、そういうものを控えめにして作ってたんです。

 それはなぜかと言うと、「どの話数を入れ替えても放送できるようにするため」ですね。

 例えば、あるドラマをテレビ放送した時、「ロサンゼルスではすごく人気だけど、ニューヨークでは全く人気が出ない」という場合も考えられるんですね。

 日本の局の場合は、そういう場合でも、買い取ったら放送しちゃうんですけど。アメリカのテレビ局の場合はもっとシビアで。もう本当に、人気がなかったらすぐに打ち切っちゃうし、人気があるかどうかは3話か4話だけ放送してから決めるというのが、1950年代から60年代のテレビ立ち上がり期には当たり前だったんです。

 なので、『逃亡者』みたいな番組ですら、アメリカの地方の局に行くと「まず最初に真ん中辺のおいしい話数だけオンエアする」ということがよくあったんですよ。

 まあ、流石に第1話は入れてると思うんですけどね。ストーリーのきっかけですから。でも、第1話さえ入れれば、後は中盤とか後半は「ひたすらリチャード・キンブルが逃げて、ジェラード警部が追う」という話だから、放送話数がバラバラになっても大丈夫なようになっているんです。

 タツノコプロも、初期の頃からアニメを輸出産業の1つとして作ってきたので、こういうことをやっています。『新造人間キャシャーン』とか『科学忍者隊ガッチャマン』というのも、大河ドラマ風に見えて、実は、驚くほど話数の入れ替えが可能なように作ってあるんですね。どの話数を先に見ても、実はそんなに影響がないように作っている。

 まあこの辺が、『宇宙戦艦ヤマト』を作った時、西崎義展は色々と言われたことなんですけど。「地球の終わりまであと〇〇日」とか、毎回入れてたら、引き返しがつかないですよ。その順番でオンエアするしかない。だから、地方局のおじさんが「ああ、これ、面白そうだ」といって、頭と真ん中とお尻だけ放送して「ああ、人気が出たんだ。じゃあ、真ん中辺も流してみようか」みたいな方法が取れなくなっちゃうんですよね。そういうのは、普通、嫌われるんです。

 だから、『水戸黄門』とかのテレビシリーズも、実は入れ替え可能なように作ってありますよね?

・・・

 さて、捨て回というのは何なのかという話ですね。地方のテレビ局には、地方ごとの特番があるんですよ。

 例えば、青森とか東北の方に行くと、人気番組として「修学旅行報告」というのがあるそうなんです。つまり「我々の県の高校の子たちが東京に修学旅行に行った」と。で、「今日は何を見てきたか?」とか「全員無事に旅館に到着したか?」っていうのを、結構良い時間にテレビで放送するんですね。

 まあまあ、そんなふうな、その地方独特の放送とかがあるので、放送回の一部がすっ飛ばされちゃう可能性がある。そうすると、『機動戦士ガンダム』みたいなアニメシリーズを流すテレビ局としては、全43話の内、3話くらいが放送できなくなってしまうというのがよくあるんですね。

 こういうアニメ番組というのは、シーズン毎に新番組の開始の時期が決まっているんです。例えば、「この番組は4月に始まる。その次の番組は9月に始まる」みたいに決まっているし、次の番組の開始時期はズラせない。でも、特番は入る。そうなると、シリーズの内、1話か2話は放送されないことがあるんです。

 そのために、テレビシリーズを作る時は、あらかじめ制作者側から「この回はオンエアしなくても別に構わない」……ってことはないんですけど、「ストーリー的に辻褄が合わないことはないですよ」というようなエピソードを用意していたんです。

 これを、当時のファンは「捨て回」と呼んでいたんですけども。そういうエピソードが、当時のアニメには存在するんですね。

 僕がびっくりしたのは『新造人間キャシャーン』というタツノコプロのアニメ。この捨て回を再放送と割り切ってたんですよね。

 『新造人間キャシャーン』って、本放送の時から再放送をやってたんですよ。「来週からは3週連続で名作シリーズ! 『英雄キケロへの誓い』『戦火に響け協奏曲』『裏切りロボット五号』をお送りします!」ってナレーションが入った時、俺、本当に椅子からズッコケて、「これは何だ!?」と思ったんですけど(笑)。

 やっぱり『キャシャーン』も連続モノだから、捨て回を入れなきゃいけないんですけど。作り手側が「捨て回には再放送を入れる」と決めちゃってたんですね。

 でも、そうすることで「無駄な労力を省く」ということにもなるし。実は、再放送でも、過去の人気エピソードを流すだけで、案外、子供達は食いつくんです。

 なんせ、ビデオもなかった時代ですから。もう一度、見るためには再放送しかなかったんです。だから、ほとんどのアニメというのは、1回見たらそれっきりのものだったんですね。

 『ガンダム』の頃というのは、そろそろビデオテープというものが普及してきて、家庭用ビデオデッキが家にあっても驚かないくらいの高級機材にはなってたんですけど。まあ、冷蔵庫やクーラーというほどではないし、スマホほど普及しているものではなかった。今で言うと、うーん、40インチ以上の大型液晶テレビくらいですか? 当時のビデオデッキというのは、他人の家にあっても驚かないけど、「へぇー!」という感じのものだったんです。

 『機動戦士ガンダム』も、多くの人にとっては、まだまだ「再放送でしか見られない」というような時代でした。なので、捨て回というのがまだあったんですね。

 ということで「再会、母よ…」というのは、そういう「いざとなったら放送しなくてもいい回」と、まあ形ではなっているんですけども。アムロ・レイというキャラクターを理解する上では最重要な回だということを、一旦、覚えておいてください。

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 ナレーションは、またちょっとタッチが変わります。

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> ナレーション:人類の全てをみずからの手に収めようとするザビ家のジオン公国は、月の向こうに浮かぶ巨大な宇宙都市国家である。その独裁を撃破すべく、地球連邦軍は、地球で、宇宙で、執拗な抵抗を続けている。

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 この一文で「悪いヤツはザビ家のジオン公国で、正義は連邦軍」というふうに、正義と悪が定義されています。

 まあ、ずーっと見ている視聴者は「そんな単純な話ではない」とわかっているんですけど。一応、「悪いヤツはジオンのザビ家で、正義は連邦だ」と説明しているんですね。

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> ナレーション:一方、ジオンの宇宙巡洋艦の攻撃を免れたホワイトベースは、宇宙都市サイド7を脱出して地球に降り立った。

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 これは、ここまでのストーリーの、本当にザックリした説明ですね。

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> ナレーション:しかし、連邦軍と連絡の取れぬまま少年たちは戦い続けなければならなかった。それは恐怖の連続であった。

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 ここまでが冒頭のナレーションです。

 なんかね「それは恐怖の連続であった」というところにビックリしたんですけど。

(パネルを見せる)

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【画像】グフ ©創通・サンライズ

 これが、その時に映る絵なんですけど。前回から出てきた新型モビルスーツのグフ。これが映りながら、「それは恐怖の連続であった」というナレーションが流れます。

 つまり、「この物語は勇ましいヒーローものではなくて、子供達にとって、当事者にとっては、恐怖の連続なんだ」と言いたいわけですね。

 だから、ストーリーを紹介する時も、もちろん、作り手側としては「ザビ家が一番の悪というわけではない」のはわかってる。「必ずしもジオンが悪ではなくて、連邦が正義ではない」ということはわかりきっているんだけど。

 そこをあえて簡単に説明してでも何を言いたかったのかと言うと、「君達が毎週、楽しみにしている『機動戦士ガンダム』。先週も、すごくカッコいい戦いを見せたけど、それは主人公アムロ達にとっては毎日毎日が恐怖の連続なんだよ?」ということ。

 それを、もう一度、教えようとして、こんなナレーションにしています。

・・・

 さて、『機動戦士ガンダム』の魅力というのは……まあ、いくつもの魅力があるんですけど。その内の1つが日常演技。何気ない普通のシーンですね。

 戦闘シーンでもなければ、感情が高ぶって叫び合うシーンでもなければ、見せ場やカッコいいセリフでもなく、僕は日常演技が魅力の1つだと考えてます。

 それはもう、当時から多くのアニメファンが言っていたことでした。

 これはもう、そういう噂をよく聞いたことで、富野さん本人がそう言ったかどうかは僕は知らないんですけど、「ロボットアニメでありながらカルピス名作劇場を目指す!」と言っていたと聞きました。

 カルピス名作劇場というのは、まあ『ムーミン』『アルプスの少女ハイジ』あたりからの、日本アニメーションが作っていた『あらいぐまラスカル』とか『ペリーヌ物語』とか、あの辺のアニメのことを言うんですけど。

 『ムーミン』の頃から、カルピスが一社提供でやるようになって、その後、カルピスの一社提供枠がなくなって、ハウス名作劇場に変わって……という、いろんな時代があるんですけど。

 基本的に「大事件とかは起きないんだけど、日常を丁寧に丁寧に描くことによって、すごいドラマツルギーを出して、感動に持って行く」という作品です。

 『アルプスの少女ハイジ』『フランダースの犬』『母をたずねて三千里』『赤毛のアン』辺りなんでしょうかね。この辺りが、名作劇場と言われる枠の作品。

 で、「ロボットアニメでありながら、それを目指す」と言われてたんですね。

 なので、日常演技がなかなかすごい、と。

 例えば、この第13話では、一番最初、ホワイトベースが、今回なぜか和んでて。岩場だらけの海岸線に停泊して、ミライさんとセイラさんが日光浴しているシーンから始まります。

(パネルを見せる)

画像4

【画像】ミライとセイラ ©創通・サンライズ

 ここで、やっぱり僕が面白いなと思ったのが「ミライさんはビキニを着てて、セイラさんがワンピース」っていうことなんですよね。

 セイラさんの「サングラス! ワンピース! 金髪!」というセレブ感もなかなか大したものだと思いますし、ミライさんの「見せる時は私は見せるのよっ!」という、いいとこのお嬢さん特有の考え方というのも面白いですね(笑)。

 上手いなと思うのは、ここにフラウ・ボウとかが入ってこないことなんですよ。

 僕が平成の萌えアニメというのがあんまり好きじゃないというのは、もう、皆さんご存知だと思うんですけども。

 なぜ好きじゃないのかと言うと、平成の萌えアニメ、深夜アニメでこんなシーンを描くことになったら、無理にでもいろんな理由をつけて女性メインキャラの水着姿を全部出してたはずなんですね。

 例えば、フラウ・ボウを出したり、ちょっと出てきたキャラを出したりして、いわゆるサービスカットという……もうすでに誰へのサービスになっているんだかわからないようなものを延々と出して。で、その度に、主人公級のキャラとか男性キャラが「おおっ!」とか「むふっ!」とか言う。そんなシーンを無理やり入れちゃうんですけども。

 『ガンダム』はそういうことをしない、と。なんかね、それをやっちゃうと、たぶんサービス感が出てしまって、まあ、作品の格が落ちるわけですね。

 やらなくてもいいサービスはお店の格や作品の格を落とすだけ。なので、女性キャラが水着で大集合みたいなことはやらずに、この2人だけ、出す時はわりとバーンと出すというのが『ガンダム』の面白さだと思います。

(本編中断)

『ナディア』の「捨て回」について解説

 はい、無料はここまでです。

 「再会、母よ…」の解説は全部で6回あると言ったんですけども。皆さんの大半の予想通り、本編の解説は、ミライさんとセイラさんの水着を出しただけで終わってしまいました。

 まあまあ、今回、自分の昔の解説を改めて見て思ったのは「俺、オールバックだな」と。「いわゆるヘアディップでオールバックにしてるのは珍しいな」と。

 たぶんね、あの日は寝癖があったと思うんですね。寝癖がどうしようもなかったから、オールバックにして、髪の毛を固めてたんだと思います。

 あとは、まあ、再放送の話。「当時のアニメに捨て回というものが存在したのはなぜなのか?」という話の中で、『新造人間キャシャーン』が出てきたんですけど。

 『新造人間キャシャーン』がやった、本放送の時に名作劇場と銘打って、いきなり3連発で再放送を流したというのは、今、大人になって、アニメ業界も経験した後で考えてみると「なかなか上手い手だな」と思うんですよ。

 どうせ地方では放送されない回だし。あとは、たぶん、タツノコプロというのは、早くから海外でのオンエアというのを前提にしていたんですよね。

 アメリカのテレビ放送では、ネットワーク系とシンジケート系という2大系統があるんですけど、それ毎に放送回数が違うんですよ。なので、例えば無理に52話納品する必要はなくて、「1クール13話を3クール分、全39話を納品すればいい」とか「1クール11話しかないから、それを4クールで全44話を納品すればいい」とか、色々と事情がある。

 それがわかっていたので、必要最低限の本数にするために、日本での放送をあえてメインに考えずに、海外での放送を考えて、最初から3話分を再放送枠として考えてたんだろうな、とか。

 こう、当時のいろんなこととかを思いながら、自分の解説を見たりしていました。

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 コメントで「『ふしぎの海のナディア』の途中の島編も捨て回」というのがあったんですけど。そういう、心無いコメントもあったんですけども(笑)。

 でも、『ナディア』の場合は、似ているようでちょっと違うんですよね。

 NHKから、一番最初の企画段階の時に「1年で52話あるんだけど、52話ではなく39話で作ってくれ。なぜかと言うと、NHKの金曜の7時半というのは特番が入りやすい場所だからだ」と言われたんですね。

 つまり、何かあった時、必ず特番がその辺りに入る。他にも、年間で決められた行事みたいなのもあるから、それで9話分は確実に潰れる。残り4話は特番でだいたい潰れることが今からわかっていたんです。

 それも、一気に入るのではなく、ランダムに入ってくるんです。例えば『ナディア』をやったと思ったら、その後の2週間は特番をやって、また次の3週くらいは『ナディア』に戻って、ということになるんですね。

 なので、全39話の内の真ん中の13話。つまり、前・中・後と、13話・13話・13話に分けた時、この真ん中の13話はあんまり連続性というのを持たせないようにしてくれ、と。

 「前の週を見てないと、次の週の話がわからないというような展開にせずに、出来れば1話完結みたいな感じで、真ん中の13話を組んでくれ。そうすれば、最後の6話くらいは、特番とか一切なく、毎週毎週、放送できるのは間違いないから」と言われたので、まあ、それを前提にシリーズを組んだんです。

 そして『ナディア』の島編というのは、もともとNHKのプロデューサーさんの思惑だったんです。

 NHKのプロデューサーさんとしては『ふしぎの海のナディア』という企画は、実は島編がメインだったんですよ、意外なことに。

 「南の島に流されたことによって、それまでヨーロッパにいた動物と話せるサーカスの女の子だったナディアが自分を取り戻して活き活きする」という企画だったんです。

 それを、まさか下請けの下請けの下請けみたいな、若造しかいないアニメ制作会社が「このアニメをSFにしてやれ!」と虎視眈々と狙っているとは全く知らずに。

 NHKの人は「この真ん中に島編というのがあって、これがね、少女が活き活きとして~」とか「流された子供達が~」というふうに言っていたんですけど。まあ、その頃から僕らの悪巧みというのが始まったんですけど(笑)。

 なので、あそこは決して捨て回ではなく、実は、あそここそが思った通りの回だったんです。

 ただ、そこまでに……作画資源が尽きたと言うんですかね? スタッフ資源ですか。社内の人間が疲弊してしまって。外部にも頭を下げまくり過ぎてて、もうどうしても作画が立ち行かない、スケジュールが立ち行かないようになったんです。

 なので、結果的に再編集などが入るようになって、まあまあ、申し訳ない回になったんですけど、そういう事情です。

・・・

 じゃあ、後半に入るんですけど。

 すみません、最初に言ってた、ハヤト・コバヤシについての話、マジで何も思いつかなかったので、限定の終わりまでにもう一度なんか考えます。

 さっきWikiまで見たんですけど、「何もねえや」と思っちゃったので。まあ、限定の終わりまでになんとか絞り出してみようと思います。

 後半は、日光浴をするミライとセイラ、そして、そこにやってきたもう1人の水着姿のカイ・シデン。そこで展開する日常演技の話をします。

 あと、「彼らがいるこの砂浜はどこなのか?」というのを語ろうと思います。

 それでは、後半をよろしくお願いします。

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・ガンダム完全講義17:第8話「戦場は荒野」解説Part2

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・ガンダム完全講義18:第9話「翔べ!ガンダム」解説Part1

https://www.amazon.co.jp/dp/B07W4324WF

・ガンダム完全講義19:第9話「翔べ!ガンダム」解説Part2

https://www.amazon.co.jp/dp/B07WDBZXPB

・ガンダム完全講義20:第10話「ガルマ散る」解説Part1

(https://www.amazon.co.jp/dp/B07WVPWQSC

・ガンダム完全講義21:第10話「ガルマ散る」解説Part2

https://www.amazon.co.jp/dp/B07WZSYS3C

・ガンダム完全講義22:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part1

https://www.amazon.co.jp/dp/B07XRHR39N

・ガンダム完全講義23:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part2

https://www.amazon.co.jp/dp/B07Y1YCMMB

・ガンダム完全講義24:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part3

https://www.amazon.co.jp/dp/B07YCDY3ZG

・ガンダム完全講義25:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part4

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・ガンダム完全講義26:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part5

https://www.amazon.co.jp/dp/B07YWXKT1C

・ガンダム完全講義27:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part6

https://www.amazon.co.jp/dp/B07Z4ZF4L3

・ガンダム完全講義28:第12話「ジオンの脅威」解説Part1

https://www.amazon.co.jp/dp/B07ZFDPMF7

・ガンダム完全講義29:第12話「ジオンの脅威」解説Part2

https://www.amazon.co.jp/dp/B07ZRH57HW

・ガンダム完全講義30:第12話「ジオンの脅威」解説Part3

https://www.amazon.co.jp/dp/B0812ZXH4K

・ガンダム完全講義31:第12話「ジオンの脅威」解説Part4

https://www.amazon.co.jp/dp/B081CMCTMV

・ガンダム完全講義32:第12話「ジオンの脅威」解説Part5

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・ガンダム完全講義33:第12話「ジオンの脅威」解説Part6

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・ガンダム完全講義34:第13話「再会、母よ…」解説Part1

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