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2035年に半減しそうなエンジン車の市場シェアを見て、それでも楽観的にやるべきことをやって道を拓きたい

この記事を書こうと思った背景

 EUで2035年からガソリン車とディーゼル車の販売が禁止されることが決まりました。欧州理事会の発表からポイントになるところ抜粋すると下記の通りです。

・乗用車(car)と小型商用車(van)が対象。
・e-fuelに関する言及も含まれており、2035年以降にCO2-neutral燃料のみで走る車の登録について、欧州委員会が今後提案を行う。
・この目標の達成に向けた進捗と、見直しの必要性の評価が2026年に欧州委員会によって行われる。
・この評価にあたっては、充電可能なエンジン車であるplug-in hybrid車も考慮される。

欧州理事会Press release

 e-fuelのみで走る車が認められることと、進捗次第ではplug-in hybridの扱いが見直されるかもしれないという点には注意したいですが、基本的にはEUでは2035年以降にエンジン車を販売することはできなくなり、EV(=電気自動車)のみの販売が認められることになります。
 この決定を受け、将来のエンジン車の市場はどれだけ減るのか、その産業の中で仕事をする自分はどのように生きるかを考えたいと思ったのがこの記事を書いているきっかけです。

現状分析

 まずは、2021年のエンジン車の市場規模を把握します。OICA(国際自動車工業会)によると、全世界での自動車の販売台数は82.7百万台。そのうち、EVの販売台数は6.6百万台でした(Global EV Outlook 2022)。つまり、全世界の自動車販売台数の1割弱がEVで、残りの9割ほどある76百万台がエンジン車の市場規模です。
 このうち、規模が大きくかつ今後EV化が急速に進む中国・アメリカ・EU(UKを含む)についても見ておきます。自動車販売台数は順に、26百万台、15百万台、14百万台です。この3地域で全世界の自動車販売台数のうち約6-7割を占めることになります。

将来予測

 2035年におけるエンジン車の市場規模の大まかな把握を考えます。EV化の目標について、中国は2035年までに50%以上、アメリカは2030年までに50%以上、EUでは2035年に100%という目標を掲げています。ここではPHEVやe-fuelの厳密な扱い目をつむり、大局的に把握することにします。これらの目標を2021年の自動車の市場規模に当てはめて2035年のEVのシェアを概算してみると、この3地域だけで約4割がEVになるという計算になります。その他の地域もEV化に向かうことを考慮すると、自動車販売の半分くらいはEVになりそうです。

2021年の販売台数から2035年のEVのシェアを概算した結果

 他の予測も見てみます。国際エネルギー機関のIEA Energy Outlook 2022によると、想定するシナリオによって差は出るものの、2030年に25-60%の自動車がEVになるという予測となっています。NZEが 2050年にNet Zero Emissionを実現するシナリオであり、APS, STEPSはそこまで到達しない場合のシナリオです。それぞれ、 Announced Pledges ScenarioStated Policies Scenarioの略です。BCGが2022年6月に行った予測によると、2035年には乗用車の約6割がEVになるとされています。
 これらをまとめてグラフにプロットしてみると、以下のようになります。

EVのシェア。実績と予測を合わせてプロットしたもの。

2035年には自動車販売のシェアのうち、50%前後がEVになるというのは、十分にありうるシナリオに見えます。2021年時点のエンジン車のシェアは約9割でした。よって、2035年にはエンジン車の市場シェアは半減しそうと考えるのは妥当だと思います。

考えたこと

 では、2035年にエンジン車の市場シェアが半減しそうという前提の下で、エンジン車関連の事業への影響を考えてみます。 
 自動車全体の台数が現在から2035年に向かって増えるのか減るのかというのが規模を考える上では重要ですが、ここでは全体の数は同じくらいとして考えてみようと思います。
 市場シェアが半減した場合に売り上げを維持しようと思うと、シェアを倍にする必要があります。シェアを倍にするというのは生半可なことでは実現できません。さらに、既に半分以上のシェアを持っていた場合にはシェアを倍にすることはできません。仮にシェアを100%にしても売り上げが減ってしまいます。利益はどうでしょうか。このように縮小していく市場でシェアを伸ばしながら利益も増やしていくのはやはり難しそうに見えます。
 こうなると、いまエンジン車に関わる仕事をしている自分の将来は大丈夫なのかと不安になりました。しかし、エンジン車の市場シェアが縮小するからと言って、エンジン車に関わる仕事をしてきた自分の価値が小さくなるわけではないと信じることにしました。エンジン車の市場が縮小する一方で、EVを起点にした新たなモビリティの市場が広がっていきます。そこでは、未来を創る楽しい仕事があるはずです。
 EVが普及するまでにエンジン車が果たす役割、その産業の中で自分が生み出せる価値を考えて行動しながら、機を見て新しいモビリティを作る世界に移住する、そんな気持ちで楽しく生きたいと思います。

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