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第4回定期開催スペース「喫茶AKSK OTサークル」(ゲストスピーカー:JUNさん)テーマ「作業療法のリスク管理」のまとめ記事


はじめに

急性期で作業に焦点を当てた実践を行い・・・
近年では急性期でも上記のような「作業」中心の実践を行っている事例報告などが散見されるようになってきました.しかし,急性期や超急性期と呼ばれる現場で,作業療法士が自身の学問に起因する専門性で活躍するのは容易なことではないとも考えています.今回はそんな急性期や超急性期で作業療法士として働き続けているJUNさんhttps://twitter.com/@JuN_geek9に「作業療法のリスク管理」というテーマでスペースにてお話をしたので,その内容をまとめた記事になります.

今回もJUNさんに記事内容を一部執筆・追記などしていただき完成する運びとなりました.JUNさんにはこの場を借りて,お礼を申し上げます.本当にありがとうございました.
(スペースのまとめ記事の順番が前後してしまい申し訳ありません.)

JUNさんがリスク管理を学ぶきっかけ

今回スペースでお話してくださったJUNさんがリスク管理について強く学ぶ必要性を感じたのは,JUNさんが最初に就職した職場の施設形態が回復期中心のケアミックスだったということが影響しているようでした.

JUNさんは,元々は回復期を中心に働いていており、就業後や土日は他施設にいき、神経発達学的治療(neurodevelopmental treatment:NDT)を中心にハンドリングの練習などの集中的に取り組んでいたそうです.当時は「リハビリとは良いもの」という感覚を持っていて,とにかくリハビリ介入における技術を磨く日々だったことがスペースでも語られていました.

しかし次第に,重症度が高く,介助量の多い方を担当することが増えてくると、入院中にお亡くなりになる方を担当することが増えていきました.その中で,「リハビリとは本当に介入したら,しただけ良いものなのか?リハビリをすると余計に悪くなる人もいるのではないか?」という感覚を覚えるようになったそうです.

そしてある時,超急性期・周術期に1年間出向で行くことになりました.
超急性期の現場でJUNさんが学んだのは,医者や看護師の仕事は「不安定な状態を安定させること」だが、リハビリというのはある意味、「安定した状態から不安定な状態にさせる仕事である」ということでした.
超急性期の現場は時間が勝負であり,数十分の治療の遅れが生死を分かつこともあるでしょう.そこでJUNさんが感じたのは,超急性期というのは「リハビリが主役ではない」ということ.そして,リハビリは「不確実な薬剤」に近いということでした.さらに言えば,超急性期において作業療法は処方として出してもらえないこともあるようで,チームの一員として必要としてもらうことがそもそもの課題であることも多いようです.

そして現在の,高度治療室(High Care Unit:HCU)と脳卒中集中治療室(Stroke Care Unit:SCU)に配属されたことで,作業療法を行う前の前提として,医者や看護師と共通言語でまずは会話ができること、同じ会話や議論のテーブルにつけることを目指すために,超急性期現場で通用するリスク管理について学習を深めていく必要があったようです.

医師のカルテを読み解く

時間の限られた現場で医師がどのように病態を掴み,どう治療方針がたてられているのかを読み取ることは大変重要になります.例えば,疾患に対して,医師が行う標準治療を理解することで,病態をどのように捉えているかという視点を作業療法士も並列にみれるようになると,薬剤リスク、初期フローからどういう流れやタイミングで今後リハビリが関わっていくことができるかというのが理解できるようになります.特に急性期の医師は忙しく,脳外科、整形外科はどちらも手術で長時間拘束されていますので,なかなか直接対話をする機会は少なく、カルテから読み解く力は大変重要になるということが言えます.

リスク管理をどう解釈するか?

血圧、脈拍、酸素飽和度など,セラピストがリハ開始・続行の判断の基準とする代表的なフィジカルアセスメントがありますが,測定した数値のそれが(または測定したものの繋がりが)何を意味するのかまで理解・解釈できていないセラピストが多く,超急性期で作業療法を実践していく障壁になっているようでした.フィジカルアセスメントとは,測定し,「施設(医師)が決めた基準に逸脱したからリハビリをしない,基準を守れているからリハビリをする」ということだけでは不十分であり,数値が示している意味は何か?例えば,SBP90mmHgであることの理由をどう捉えるのか?測定した数値以外に病態、薬剤なども鑑みて、その数字はどこまで何をしていいサインであるのか?までを捉えることがリスク管理の側面としては重要ということでした.

おわりに:「生活に根差したリスク管理」

JUNさんは元々、学生の頃は、「作業」に関するテーマで卒論を書いており,養成校時代は「作業」に関することに少なからず興味・関心がある学生だったようです.しかし,臨床に出てから経験を積む中で,次第に重症度の高いクライエントの支援をすることに関心が強くなっていったそうです.最初に述べた通り,超急性期や急性期の重症例のクライエントは亡くなる方が珍しくありません.スペースでも語られていましたが,JUNさんの一番の想いは「知らない天井で死なせたくない」ということでした.

超急性期,急性期というのは「明日命があるか分からない人」にも関わりますが,明日すぐにでも転院する人もいたりします.この方々はそれぞれ,「時間間隔が違う」という話がありました.状態が安定した人に対して,2年後に「何をしたいか」と尋ねる文脈と、明日どうなるか分からない人に「何をしたいか」と尋ねる文脈はベクトルが全く違います.また,急性期は変化が大きく,「明日命があるか分からない人」から「生活を(再構築)する人」に変わることもあるようです.この目まぐるしく変化する現場の中で,どう関わるか,どのように送り出すか,それを日々哲学するのがJUNさんの作業療法なのかなと思います.

ここまで読んでいただきありがとうございました.



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