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第1回定期開催スペース「喫茶AKSK OTサークル」(ゲストスピーカー:シラタキさん)テーマ「作業療法士に送るおススメ書籍」のまとめ記事

はじめに

この記事は2023年4月23日に実施した第1回定期開催スペース「喫茶AKSK OTサークル」(ゲストスピーカー:シラタキさん)テーマ「作業療法士に送るおススメ書籍」に関する内容をまとめたものになります.


ゲストスピーカーの紹介

第1回目は,作業療法理論や哲学に詳しく、学生への作業療法参加型実習を積極的に実践している読書好きの作業療法士のシラタキさんhttps://twitter.com/@shirataki_ot をゲストスピーカーにお招きしました.作業療法だけに留まらず,多彩なジャンルの書籍に関するお話をしていただき,たくさんの方が聞きにきてくださりました.

また,今回の記事の一部の内容はシラタキさんに書いていただきました.この場を借りて感謝申し上げます.本当にありがとうございました.

スペースの概要・書籍紹介

①シラタキさんとの共通点

図書館に通い続ける読書好き作業療法士であるシラタキさんの読書のはじまりは,中学生の担任の先生からおススメされた芥川龍之介の短編小説だったそうです.芥川作品は短いお話の中に,分かりやすい表現で世界の不条理さを詰め込んだ人間描写が魅力的です.しかし,子供向けのものも多いとはいえ,作業療法士になるずっと前から活字を読むのが好きだったのには素直に尊敬してしまいました...

また,シラタキさんは現代国語がやたら得意だったそうで,言葉や考え方を丁寧に扱う作業療法士という仕事に繋がる点がありそうですね.

ちなみに僕も中学・高校の時,物理や数学は苦手でしたが現代国語は点数が取れる方でした.また中学の時,クラス全体に作文を公開して読み合う授業がありましたが,僕は人気投票でいつも割と上位が取れていたので,当時は文章が書くのが得意なのだと勘違いし,調子に乗っていました(笑).
とはいえ,このくらいの年齢の時から文章や言葉・物語(小説や作文)などに関する関心が高かったのかもしれません.意外な共通点ですね.

②きっかけの1冊

作業療法に関する書籍も当然たくさん読んでいるシラタキさんですが、そのきっかけとなった1冊はこちらです.

著者の葉山先生は脳内出血を発症した当事者の方で,ご自身が受けた作業療法に関する経験から,作業療法の魅力が語られている本です.
作業療法士は「クライエントの作業を大事にしたい」という気持ちをモチベーションにしている方も多いと思います.こういった当事者性という視点に惹かれて作業療法の面白さに気付き,その本質を学びたくなるというのが,作業療法士という仕事を好きになっていく上でのひとつのポイントかなと感じました.

ちなみに僕のきっかけの1冊はこちらです.

作業療法士が取り扱う観察評価や数値化されない評価は,主観的であるがゆえに臨床的にはあまり議論する意義が少ないものなのか,という悩みを抱えていた頃,僕はこの本に出会って考え方が変わりました.作業療法士は主観や客観というものをどちらも大事にする仕事です.自分がみている視点を相互理解が得られる形に言語化したい方におススメです.

③新人・若手の方におススメの書籍(最初の1冊に)

よくある悩みですが,「何を学べばいいか分からない」,「何が問題なのかが分からない」といった方が新人や若手の方には多い印象です.また,最初の就職先に病院を選ばれる方が最も多いと思います.今回,リスナーの中からスピーカーになってくださった若手作業療法士のsereさんhttps://twitter.com/@07_ot338 も新人時代の1年間はリスク管理を学ぶことが多かったとお話してくださりました.それらを考慮した最初の1冊におススメなのはこちらです.

これらはクライアントを一緒に支援する他職種とうまくやりとりができることや、目の前のクライアントが抱える疾病に対するリスク管理の基本を押さえて学ぶことができる書籍です.まずは医学の領域を知るというところからスタートするためには良い選択肢かなと思います.

ちなみにスペースでは書籍名を思い出せませんでしたが,僕が若手時代に常にロッカーに入れて読んでいたのはこちらの第1版でした.


また,こちらもスペース内で紹介できませんでしたが,疾病毎の予後予測とアウトカムについてまとめられた通称「予後予測本」もタイトル通り新人や若手の方におススメです.


④新人・若手の方におススメの書籍(ビジネス書から)

臨床に出て皆さんが直面する1つの大きな壁は,クライエントや家族・他職種と「ちゃんと対話できる」ことだったりします.それを学ぶのに,実はビジネス書に書かれているスキルは割とそのまま使えることも多いので,一度手に取ってみて読んでみるのも良いと思います.

まず,クライエントのリハビリへの動機づけが上手くいかずに悩んでいる方におススメの1冊はこちらです.

相手の行動は操作できませんが相手が行動したくなるような影響力を与えることは可能です.僕たちリハビリの仕事では,クライエントへのエンパワメントや,クライエントが自ら健康や幸福に向かっていくことを援助します. この書籍の内容を上手に使えるとクライエントが自ら動き出したくなるような仕掛けが沢山思いつきます.

次に,クライエントや家族との会話が苦手な方や,書類を書くのが苦手という方におススメするのがこちらです.

クライエントやご家族への説明,計画書,申し送り,僕たちの仕事はあらゆる場面で考えを言葉や文章にすることが求められます.自分の考えをうまく言葉に出来なかったことで歯がゆい思いをした方も多いはずです.だからこそ,考えを言葉にできるようになることは社会人として非常に有益な武器になると思います.「言葉にできなかったり,うまく言えないのは,言葉にできるほど考えていないからである」という一文に撃ち抜かれました.

⑤新人・若手の方におススメの書籍(作業療法について)

次に作業療法に世界観を知りたいという方には,OT肩幅さんhttps://twitter.com/@mttk_ot がリプライで紹介してくれていました,こちらもおススメです.

作業療法士という仕事はクライエント中心で行うべきものだと思っています.しかし,そんな風に気を引き締めているつもりでも,つい惰性で慢心した介入をしてしまっていることはないでしょうか.僕はそんな時に斎藤先生の圧倒的な作業療法の世界に触れることで,目を覚ますようにしています.まさに僕にとってのお薬です.
また,これから作業療法士になりたいと思っている学生にもおススメしたい1冊です.

もちろん続編もおススメです.


また,シラタキさんのおススメはこちらです.

現代精神科作業療法の礎を築いた山根先生の著書です.論文や理論などには昇華出来なかったけど忘れられない臨床の一場面を短くも分かりやすい言葉でまとめてくれています.精神科領域での作業療法について学びたいという方に初めの1冊としておススメします.暖かく寂しく愛らしい臨床の一場面が垣間見えます.

さらに,作業療法が取り扱う「作業」がよく分からない…と,疑問を抱いている方には作業科学に関する内容がとてもシンプルに書かれたこちらもおススメです.

本書は読み進めながら「練習」と書かかれた箇所で,それまで読んだ知識を一度整理していくのがおススメです.もしも可能なら,複数人でグループワークを行って意見交換をすると,より多くの作業の知識に対する解釈を得ることができます.

そして,作業療法の世界の言葉に慣れてきた方は,その考えを実践に繋げていくための1冊としてこちらをおススメします.

作業療法に関する理論は百を超える数があると言われていますが,その中でも有名なものを非常に分かりやすく紹介している書籍です.また,作業療法理論をなぜ学ぶ必要があるのかや,作業療法理論の発展の歴史についても学ぶことができるので,後輩に作業療法理論について教えたいという方にもおススメです.

⑥高次脳機能障害を抱える方への悩みについて

スピーカー参戦してくださった若手作業療法士のsereさんhttps://twitter.com/@07_ot338 が今一番悩んでいたのは,高次脳機能障害を抱える方の支援についてでした.高次脳機能障害について事例を通して分かりやすく理解するためにおススメなのはこちらです.

高次脳機能障害を持つクライエントへの問題点をリーズニングから導くのは,なかなか難しい技術が必要になります.クライエントがどういった認識や思考をしているのか,どうしてこのような反応になってしまうのか,などの生活する上で障壁になりそうな行動について観察や会話・質問から判断し,そして必要に応じて検査を実施することで問題を特定していくことになります.こちらの書籍は,よくある事例を通して,そのリーズニングやアプローチにについてイラストを交えて分かりやすく紹介しています.

次に,こちらはスペース内ではお話できませんでしたが,高次脳機能障害などの複雑なリーズニングを捉えることをある意味得意とした作業療法理論があります.それはこちらです.

人間作業モデルはクライエントがどのような価値観や習慣・役割を持っているのか,どういった状況に自己効力感を感じるのか,どのような技能を持つのか,環境はどうなっているのか,といったような大きな枠組みで捉えることを可能にする考え方です.翻訳本である「人間作業モデル 第5版」は初学者には難解な書籍になりますので,「人間作業モデルで読み解く作業療法」辺りから触れてみるのがおススメです.ちなみに人間作業モデルはもうすぐ第6版(原書)が出るという話もあるようです.


また,こちらは書籍ではありませんが,高次脳機能障害に対する行動観察と生活動作の介入を考える評価法としてThe ADL-focused Occupation-based Neurobehavioral Evaluation(以下,A-ONE)があります.

A-ONEは神経行動学理論と作業療法の原理を融合した評価とされ,僕なりに要約すると,脳画像所見や疾患特性,生活動作の観察などの情報からリーズニングを統合し評価を行うものです.その評価結果は数値化することができ,介入の経過を比較することも可能になっています.A-ONEは5日間の講習を受けることで作業療法士だけが認定評価者となることができます.


最後に

1時間のスペースは思った以上にあっという間でした.なので,今回紹介した書籍以外にも用意していた「おススメの書籍」を紹介しきれませんでした.シラタキさんも消化不良だったかと思います.申し訳ありません.
ただ,今後のスペース企画の中でや,またどこかで質問をいただいた際に少しずつ紹介していければと思っています.

また次回以降のスペース企画やTwitter上でも皆さんと意見交換やお話できたら嬉しいです.ここまで読んでいただきありがとうございました.



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