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NHK料金問題の解決策?見たい番組だけ選ぶ、部分的サブスク方式を検討する

※トップ画像は「堀潤モーニングFLAG」WEBサイトより

NHKについて激論しにMXテレビに行った

5月20日朝の東京MXテレビ「堀潤モーニングFLAG」にゲストとして呼んでもらった。後半の「激論サミット」で「公共放送のあり方」と題して、先週可決された放送法改正での「ネット業務必須化」を激論するというので声がかかったのだ。実は去年の4月に熊田安伸氏が出てやはりNHKを論じた回で、私はZoomの事前収録で間接出演していた。なんで熊田さんがスタジオで私が事前取材なんだよ、と思いつつ放送を見たが、私には「激論」は無理だなと思ったのだった。あんな激しい議論をする気力が出そうにない。

「激論サミット」画面より。なんでこんな怖いビジュアルにするの?

そもそもテレビ局の人はなぜいちいち「激論」させたがるのか。みんな「朝生」の影響を受けすぎだ。しかもこの日のコメンテーターは、大空幸星さん、小島慶子さん、そして辛坊治郎さん。それぞれ説明や肩書き不要なほど有名な方々で、辛坊治郎さんといえば「そこまで言って委員会」など関西の「激論」番組でズバズバものを言う方だ。私なんか切り刻まれはしないかと気後れしながらスタジオに入った。

「激論サミット」画面より

辛坊さんには「読売テレビさんにはお世話になっていてあの方やこの方も存じ上げて」などと、親近感アピールをした。大空さんは「前にお会いしてまして」と言ったらきょとんとするので「あのInter BEEで」と言ったら「あぁ」と思い出してくれた。いや私ではなくInter BEEに登壇したことを思い出したのだと思う。
小島さんは「よく記事を読んでいます」と言ってくださって、なんとなくこれは本当だなと感じた。「私も小島さんの記事はよく拝読してます」と、これも本当なのでそう言った。
MCは豊崎由理絵さんで、MBSからフリーになられ大活躍のアナウンサー。MBSも誰さんや誰さんを知ってましてと、とにかくその場に溶け込もうと必死。でもそんな話を皆さんとするうち、自分的にもリラックスしてきた。ホッ。

なんだかんだ言って偉そうに質問に答えるさすがのおじさんぶり

ちなみに堀潤さんとはNHK在籍中、ジョブズが亡くなった日に銀座Apple Storeでマイクを向けられた関係。以来、いくつかの機会で顔を合わせることがあり、去年の熊田さん出演後には「新メディア酔談」に出ていただいた。

そして5月20日の「激論サミット」の様子は↓エムキャスで27日まで見逃し配信で見られるのでどうぞ。

NHKは部分スクランブル化でいいんじゃね?

さて議論は「ネット業務必須化」から入り、私は例によって「放送と同じに限定され、これでは後退ですといつもの主張を展開。これにはある程度共感してもらえた。
最後は「ではNHKはどうすべきか」をそれぞれボードに書いてみせた。
その前に、NHKはスクランブル化しないのか、というお題もあったせいか、お三方の回答は近い内容になった。
大空幸星さん
「機能別に役割を定義」
小島慶子さん
「情報インフラとしての使命と娯楽との線引き」
辛坊治郎さん
「部分スクランブルでいいんじゃね?」
私はこれまで、スクランブル化は公共メディアの理念上無理、としか考えてこなかった。だがネットでNHKプラスを使う人から受信料を取る、という今回の法改正は事実上ネットでのスクランブル化だ。料金については、今のところNHKは地上波のみの受信料と同額を想定しているという。月1100円だ。
月1100円をNHKプラスに払うかと想像すると、到底払う人がいるとは思えない。NHKプラスは私のようにNHKをよく見る人間には便利だが、うちの子どもたちはまったくNHKを見ない。そもそも放送を見ない。
そんな若い世代が一人暮らしを始めてもテレビを買わない可能性が高い。でもNetflixやAmazon Prime Video、そしてTVerはスマホで見るだろう。ではNHKプラスに1100円払うか?そもそもその質問が無意味だ。なんで見もしない「配信サービス」にお金を払うのか?ありえない。
これに対し、お三方の言う「NHKの機能を分けて考える」ことが有効に思えてくる。辛坊さんの言う「部分スクランブル化」はわかりやすい。
そこでこの「部分スクランブル化」をもう少し具体的に考えてみよう。NHKの番組を役割別に値段をつける試算だ。

部分スクランブルの料金を試算してみる

NHKの2022年度決算概要(23年度はまだ出ていない)の中に、制作費のジャンル別内訳がある。( https://www.nhk.or.jp/info/pr/kessan/assets/pdf/2022/gaiyou_r04.pdf のP12)
各ジャンルごとの制作費の比率を簡易に示したのがこの表だ。

「2022年度NHK決算概要」より筆者作成

いくつか、比率が小さすぎたので別の分類とくっつけたものもある。やはりニュースが29.9%といちばん比率が高い。次はライフ・教養で意外に私も見ている番組が多い。次はスポーツ、ドラマと続く。
この制作比率をもとに1100円を割り振ったのがこの表だ。

1100円に上の表の比率をかけて計算したもの

ニュースが329円、ライフ・教養が309円。ドラマはアニメや映画も含めて132円。スポーツは162円だ。
この中にはBS放送の制作費も含まれているので本当はこのままは使えないが、大まかな考え方として捉えてほしい。
するとNHKのニュースが329円で見られるなら価値があるなと感じるのではないか。朝ドラや大河に夜10時台のドラマ、アニメもNHKでしか見られないものが132円で見られるとしたら、加入したくなるのでは?教育番組を66円で見られるならこぞって加入するかもしれない。
もちろん、ニュースとドラマを組み合わせて461円、ライフ・教養に教育・次世代を組み合わせて375円、といった使い方も悪くない。こうしてみると、辛坊さんの言うとおり「部分スクランブルでいいんじゃね?」と思えてくる。
番組では、ネットか放送かを問わずに、とにかく今後の公共放送をどうするか、と聞いたのだが、とりあえずネット業務の有料化にはいい案ではないだろうか。
もちろん、同時配信+見逃し配信が前提だ。まあ多くの人は同時配信は使わずに見逃し配信を、1週間限定のオンデマンドサービスの感覚で使うだろう。
そうするといまのNHKプラスのUIとは大きく変わるだろう。より配信サービスに近づくはずだ。そしてネットではその方がいい。
また、このやり方を通じて「公共メディアとは何か」という命題の答えが見えてくる気がする。ニュースがその最も重要な役割であるのは誰も賛同するところだろう。だがそれ以外は議論が分かれそうだ。朝ドラや大河ドラマはNHKとして欠かせないと言う人もいるかもしれない。いや、NHKがドラマを作る意義はあるのかと言う人もいるだろう。
ただ小島慶子さんも言っていたようにそろそろ「社会的使命がある情報インフラと娯楽の線引き」を考える時ではないか。NHKはだからこそいま、社会的使命があるドラマとして朝ドラ「虎に翼」や大河ドラマ「光る君へ」を世に問うているのかもしれない。ドラマ10では民放では扱いにくいテーマのドラマに挑んでいる。
だがこうして分割して比べると、ニュースの次には教育や教養が「公共メディア」として必然に思えてくる。何が公共メディアであり、何が公共メディアではないか、議論すべき時ではないか。専門家のふりをしてゲスト出演した私だが、逆にお三方に学んだように受け止めている。
というのは、NHKは近いうちに財務的に大変厳しくなるのが目に見えているからだ。

財務状況が一層厳しくなるNHKはジャンルを絞るべき

NHKは24年度〜26年度の経営計画で3年間赤字になると言っている。その中にこんなグラフがあるのだ。

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