見出し画像

テレビ局役員人事に見る、ダイバーシティの未熟度

Introduction
キー局の決算発表と同時に役員人事も発表された。今年はやはり女性登用がどれくらい進んだかが気になるところだ。男社会と言われるテレビ局だがダイバーシティも進めねばならない時代。実際どうなのか、テレビ局のガバナンスをウォッチする塚本幹夫氏に解説記事をお願いした。

塚本幹夫さん

書き手:株式会社ワイズ・メディア 取締役メディアストラテジスト・塚本幹夫氏

5月11日から14日にかけ、在京キー局ホールディングス(以下HD)の決算発表が相次いであり、併せて6月の株主総会にかける役員人事が公表されました(フジメディアHDの役員人事は24日発表)。主要子会社である地上波テレビ局の社長が2社で交代するなど、若干ショックな発表もありましたが、今回はそれとは別に、役員の女性登用という観点から各社の人事を紐解いてみたいと思います。

4月に金融庁と東証を含む日本取引所グループが、コーポレートガバナンス・コード(上場企業の企業統治ガイドライン)の改訂案を公表しました(自分はベンチャーの監査役もしているので、この辺はいつも気にしてウォッチしております)。

大きな変更点は①取締役会の機能発揮 ②企業の中核人材における多様性の確保 ③SDGs(持続可能性)への取り組みの3つ。①については、特にプライム市場の会社(来年4月に再編される、今の東証1部より厳しい条件の大企業)に対し、3分の1以上の独立社外取締役を登用せよと厳しい要件を課しています。このため在京5社HDは今回、監査等委員会設置会社に移行するなどそれぞれの対応で、何とか独立社外取締役を確保しました。

一方②について改訂案では“女性の活躍推進を含む”多様性の確保とだけあり、具体的に何割を女性取締役にせよとは書いていません。しかし経団連は、これに先立つ3月、役員に占める女性比率を「2030年までに30%以上」とする目標を会員企業に呼びかけました。日本の上場企業の役員比率は昨年7月時点で6%と、欧米の5分の1程度。海外企業との競争のためにも「ダイバーシティなくしてイノベーションなし」という観点から高い目標を掲げたそうです。

では東証1部上場企業であり経団連会員でもある在京5社の役員はどうなったのでしょうか。今回はあくまで上場企業であるHDの役員に絞ってみてみましょう。

ここから先は

1,260字

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?