小説 友情

武者小路実篤著

簡単にいえば友情をとるか恋愛を取るかと言った話。
客観的に見れば主人公の野島は今で言うモテない男の典型みたいなもので、勝手に相手を神格化したり、構ってくれないとすねたり、かなり自分本位な恋愛をしている。

しかし、若い時の恋愛などそんなものではないか。好きな人のことしか考えられなくなり、その人とどうにか話したい、その人がどうか自分のことを好きになってくれないかと祈るものだ。
ただ実際は大宮のような男の方がモテる。

杉子も杉子で、杉子からしたら大宮を好きになること自体には全く罪はない。自分を好いてくれる男の親友を好きになろうと関係ない。しかし、その好きになった男に対して、自分を好きでいてくれた男(好きになった男の親友)のことをそこまで言う?くらいにその親友に伝えるのはどうなのか。
結果、親友も好きな人もなくしてしまったかのような最後となったが、その孤独を仕事に昇華しようとする意志が見えたのがよかった。
野島のことをモテない男だなんだと書いたが、つい野島に感情移入してしまい、これほど辛いことはないなと苦しくなった。

古典?にあたるものだが、非常に読みやすくあっという間に読めた作品だった。

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