見出し画像

「会社は学校じゃねえんだよ」は本当?実践的な職場学習の比較

こんにちは、秋山です。
昨日は中身のないお鍋のnoteを書いて、ここ最近で一番反応がよかったので、どうしたもんかな、という気持ちです。みんな鍋がすきなのかな。

今日は、論文YONDEMITA#2です。
テーマはPBLです。プロブレムベースドラーニング(問題基盤型学習)、プロジェクトベースドラーニングの2つの意味を持つPBLですが、それぞれの源流や効果を比較した論文のサマリーをしていきます。

いってみよう、やってみよう!

PBL デザインの特徴とその効果の検討
湯浅且敏(学術研究員)  大島 純(教授)  大島律子(准教授)
静岡大学情報学部

3行サマリー

  • もともと学校教育で主流とされてきた系統学習(サブジェクトラーニング)に対して、学習者が主体となって自ら知識を構築していく、構成主義の学習観を持つのがPBLである。問題解決や仮説立案、リーダーシップ教育に有効とされる学習方法である。

  • 問題解決型学習の起源は、ジョンデューイの経験主義教育論に基づいている。一方プロジェクトベースドラーニングは、デューイの弟子であるキルパトリックのプロジェクトメソッドが基盤となっている。

  • 2つに類似点はたくさんあるが異なる点を挙げてみると、プロジェクトベースとラーニングは成果物を重要視するのに対して、問題解決型学習はプロセスに重点を置く傾向にある。

ドライビングクエスチョンありき

問題解決型もプロジェクトベースド型も、受講者にとって、真正性が高く能動的に取組めるよう配慮された課題が何よりも大事になる。PBLは受講者の主体的な知的探究の中で獲得・構築される知識こそが、本当の知識だとする。そのためには、受講者が「おのしろい」「ついつい解きたくなっちゃう」と思えるテーマである必要がある。

教師や講師はファシリテーター

トークとチョークで行われる講義とは違い、教師や講師は授業はしない。その代わりに、問題やプロジェクトを進めるためのファシリテーターを行う。ファシリテーターは、内省を促したり、コーチングの役割も担う。


問題解決型学習の特徴

問題解決型学習は、デューイが提唱した学習サイクルに基づき進む。

学習者は少人数のグループを組み,グ ループ活動の共有,評価,計画をサポートする 専用のホワイトボード(問題基盤型学習で一般 的に使われる PBL ホワイトボードと呼ばれる 道具,図 2 参照)を用いて,協調的に問題に取 り組む.まずグループで問題の状況から把握で きる事実を洗い出し,そこから導かれる問題解 決のアイデアや,アイデア実現の為に何を学べ ば良いのか,具体的に何を行う必要があるのか をグループで話し合う.


・学習経験としてのカリキュラムは能動的な学 習を促進し,知識構築をサポートし,関連す る対象の領域を統合する. ・問題解決者としての学習者は,解法のために 問題や条件を定義し,学びの状況を自ら確立 し,意味や理解を追求し,自己主導型の学習 者になる. ・認知的コーチとしての教師は,学びに対する 興味や熱中をモデル化し,学生の思考をコー チし,効果的な学習方略に向けさせて,問い の追求をサポートする環境を育てる. ・中心に設定された問題状況は,問いの必要性 を強調し,学習者の興味を引きつけ,維持し, 実社会と学校での学びを関係づけ,意味のあ る学習を可能にする. ・学習の焦点としての不良構造の問題は,乱雑 さや複雑さを示し,実社会を反映し,問いと 情報の収集と内省を要求し,変化と不確かさ として表れ,複数の解法の選択を作り出す.


プロジェクト型学習の特徴

プロジェクト型学習は幅広く、統一された定義がない。その一部を論文から引用してみる。

・プロジェクト型学習とは,学習者が複雑な課 題を元に自らの活動をデザインする中で,問 題解決,意思決定,調査活動を行う問題に基 づく活動であり,学習者は授業時間の枠を超 えて自発的に活動に従事し,本物に近い活動 成果やその報告を行う学習である (2)(17).

・プロジェクト型学習とは,複雑で真正性の高 い問いや注意深くデザインされた課題により 構築された深い探求のプロセスを通して,学 習者が知識やスキルを学ぶ活動のための系統 だった教授方略である (18).
・プロジェクト型学習とは,学習環境デザイン の全体的なアプローチであり,
1. 学生にとっ て真正性が高く能動的に取組めるよう配慮さ れた課題(ドライビングクエスチョン)が設 定される.
2. 学生は現実に近い探究活動への 参加を通じてドライビングクエスチョンを検 討していく.
3. 学生,教師,コミュニティ・ メンバーは,ドライビングクエスチョンの解 法を見出すために協調的な活動に参加する.
4. 学生は探究の過程において,テクノロジー の支援を受ける.
5. 学生はドライビングクエ スチョンを解決するための具体的な成果を作 りあげるという特徴を持つ⒆ .


個人的まとめ

2つのPBLは、真正性の高い問題をグループで取り組む自己主導学習であるという共通点がある。真正性の高い問題といえば、仕事である。重要度と緊急度で決められた優先順位で、喫緊ものから取り組むビジネスマンたちこそ、毎日PBLしているはずである。

なのになぜ、リーダーシップが育たない。問題解決能力が上がらない。という声が現場から出続けるのだろうか。理由はいくつか考えられる。

  • リーダーやファシリテーター不在で、プロジェクトが離散する

  • 振り返りが行われず、経験しっぱなし

  • 解くべき問題が間違っていて、ドツボにハマる

  • 社内に問題解決できる知見をもった人がいない

  • オペレーション問題ばかりを解いていて、仕組みを作る・変える問題に対処していない

  • 今できる人にアサインされるので、できない人ができるようになる機会がない

  • 失敗したくないので、成功の蓋然性が低いプロジェクトに手を上げたがらない

  • プロジェクトや業務が止まると、上司がサポートするのではなく仕事を取り上げて自分でやってしまう(部下の成長機会を奪っている)

  • 問題解決思考が強すぎて、解くことに熱中してしまい、自分のリーダーシップを見直す機会にはなっていない

こういった問題を解決するためには、社内のリアルな課題解決と育成という、2つの目的をもったプロジェクトを根付かせるのが良いと思う。

例えば、前職のfreeeであれば新卒2,3年目が入社式を企画したり、社内のリーダーになりそうな人に声をかけてカルチャー浸透を手伝ってもらう機会が多くあった。日頃の公式なチームではなく、アンオフィシャルなチームでのリーダーシップは、多様性への遭遇機会が多く、変容学習を引き起こす可能性も高い。


以上!


この記事が参加している募集

#仕事について話そう

109,886件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?