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喉越しのよいビールに、飲み込みにくさを添えて

去年、人生で初めてビールの美味しさを知った。

きっかけは大したことじゃない。
仕事でへたこいて、シラフではいられないくらい落ち込んでしまって。「いつものお酒じゃ、酔えない」と思い、閉店間際のスーパーに駆け込んだのが最初。

気温が高い夜に飲む、ぬるいビールの喉越したるや。うまい。なんてうまいんだ。

20歳で初めてビールを飲んだ時、独特の苦みと胃に炭酸が溜まる感覚が苦手だったのが嘘みたい。あの当時、「ビールは喉で味わうものだから」と言った先輩の言葉が、身にしみてわかるようになった。

「大人になったってことかな」と、言ってみた。隣に座っている夫が、テレビを見ながら「……またなんかあったの?」と聞いてくる。あえてこっちを見ないあたり、面倒くさいなって思っているのだろうなぁ。

まあ、いい。今宵はいい気分だから。
喉越しのよい相棒(ビール)がいてくれるから、夫婦生活11年目のマンネリも、飲み込もうではないか。飲み込みにくいことがあるほうが、ビールの喉越しを、感じられるってものさ。

今日もおつかれさま、わたし。
うまいビールで、乾杯しよう。


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