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【洋書多読】So B. it(再読)

サラ・ウィークスの名作児童書『So B. It』を再読・読了しました。

主人公は12歳の少女ハイディ・イット(Heidi It)。ハイディは知的障害を持つ母親と共にニューヨークで暮らしています。母親の過去や家族について何も知らない彼女は、その謎を解き明かすために旅に出ることを決心します。

母親の持ち物の中から古い写真を見つけたハイディは、その写真に写っている場所がネバダ州のホームであることを知ります。ハイディはその場所に行けば、母親の過去についての手がかりが得られるかもしれないと考えたのです。

旅の途中で出会う様々な人々との交流を通じて、ハイディは自分自身や母親の過去について多くのことを学びます。この旅を通して、彼女は自身の強さと成長を実感し、家族の絆や自己発見の重要性を学びます。

「So B. It」は、友情、家族、そして自己発見のテーマを中心に描かれた感動的な物語で、とても強い印象を与えてくれるものでした。

名作には名作なりの価値がある

久しぶりに読んだ『So B.it』。実は初めて読んだ時、あまり魅力を感じませんでした。

お母さんが知的障害という設定は面白いと感じたものの、物語自体はそこまで深みがあると思いませんでしたし、英語もちょっと読みにくかったからです。

それ以降、本書を読む機会はありませんでした。というか遠ざけていました。

でもここまで評価の高い、多くの人が推薦する多読洋書です。そこには何かあるんだろうと思って再読しましたが、今回はなぜだかすごく心に染み入ってきました。

というのも、以前の僕が「読みにくさ」として感じていた部分にこの作家の、物語のエッセンスというかスパイスというか…が結構詰まっているように感じたからです。

こういう細かなニュアンスは、英語圏で生活したり外国人のパートナーがいた経験のない日本人英語学習者には非常に汲み取りづらい類のものです。

それでも諦めずにこうしてコツコツと洋書を読んでいけば、少しずつ見えてくるものがあります。ちょっと抽象的な話ではありますけれど。

本書を読了した後『Matilda』というロアルド・ダールの名作を読んでいます。ダールの英語は独特でついていくのが若干難しいですが、今の僕はこの人の独特の節回しや持って回った表現をとても楽しんでいます。

まさにその「読みにくさ」が、そのまま登場人物の個性を描いていたり、物語にカラフルな色彩を与えてくれていたりするからです。

その英語がクエンティン・ブレイクの挿絵ととてもマッチしている感じがするとか、イギリス英語のPoshな雰囲気とペテン師のお父さんのキャラが…とか、そういうのを込みで楽しめるようになってくると、もう「児童書だから云々」みたいな物言いってできなくなってきます。

むしろいつまででも読んでいたいと思う。子供に戻った気になって、ハイディの冒険や揺れる心に寄り添っているような気になる。英語力の向上と相まって多読によってもたらされる、読み手としてのスキルそのものの向上が、洋書の多読にまた新しい喜びをもたらしてくれている。そんなふうに感じる今日この頃です。

洋書は一度味わえなくてもしばらくしてから再チャレンジしてみよう!

そんなわけで、洋書を多読することの楽しさを再発見させてくれた『So B. it』。本書は物語の持つ力もさることながら、読書が持つインタラクティブな側面を再認識させてくれる一冊でもありました。

本を読む行為って、一方的に作者からのメッセージを受け取るだけではありません。読むという行為を通じて、自分自身もまた変性していくからです。その変性していく自分自身が同じテクストから別の新たな愉悦や新しいメッセージを受け取ってさらに変性していく。

そんな読書の双方向性、生成的な読みこそが「読む」ということの愉悦なのであり、そこには「児童書だから」「哲学書だから」みたいな垣根はありません。

単なる書籍の「消費者」であることをやめて、「読む」を通じて変わっていく自分自身を見つめること。そういうダイナミックな読みの可能性を第二言語習得という観点と併せてもたらしてくれた今回の『So B. it』。

非常に示唆に富む、豊かな読書体験になりました。

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